第27回『溝蕎麦(ミゾソバ)』
白にピンクの縁取り、
しばらく蕾で寄り添っている姿は、
遠い日の縁日の屋台に、
たくさんぶら下げられたお面に似て、
ひとときの、かりそめの宴を、
無邪気に彩っては、やがて忘れられていく。
……いや、そんなことはないよ、
と蕾のひとつがおどけて、開いてみせた。
そうか、そうか、
白にピンクの縁取り、
しばらく蕾で寄り添っている姿は、
村祭りの日に、
頬におしろい、
唇に紅を差してはしゃぐ、
幼子たちにも見える。
何がそんなに嬉しいのか、
幼子たちは、くっくっと笑うばかりで
答えてはくれない。
〈第27回 2019年11月5日〉
撮影場所:梅林周辺