第12回『コマツナギ』
強くて、丈夫で、誰の手も煩わせることなく、
地味ではあるけれど、
しっかりと芯があり、
いつもひっそりと、
いつも僕のすぐそばにいてくれて、
これまで、離れることはなかった。
あまりに身近だったから、
あまりに当たり前だったから、
僕は君の美しさに、今日まで気付く事ができなかった。
読まれることのないラブレターを、
いったい君は何枚、書き続けてきたことだろう。
そして君がその全てを反故にし続けてきたことを知ったいま、
人に知られてはいけない胸の高鳴りを
僕は抑えることができない。
ああ、僕はまた一つ、
決して実ることのない恋を、
心に宿してしまったかもしれない。
2019年8月28日 第12回
撮影場所:崖崩れハウス前畑付近