2025年ウィンターコンサート
感想文集

 

「閻魔大王として舞台に立って」 みゆ

 

 

 ホール入りしてからの5日間はあっという間でした。毎日毎日、一番よいカタチにするために、皆で何度も何度もステージに上がりました。立ち位置や出るタイミング。ダンスの目線や姿勢、角度、劇とのつながりから、そのときの気持ち、伝えたいメッセージ、表情、声の出し方や、照明とのタイミング。やればやるほど、よくなる。もっともっと、出来るはず。お父さん、お母さん、あゆちゃんが、毎回どうしたらいいかを伝えてくれました。自分では気づいていなかったり、出来ていると思っていたことを、ひとつずつ確認していくことができました。もちろん、それはコンサートで、お客さんに「魅せる」ということのためでもあるけど、自分自身に今たりていないもの、成長のために必要なこと、自分の心の弱さや、生きていくことへの不安とどう向き合っていくか、どんな姿勢でたたかっていくかを考えさせてくれる場でもありました。本当に、その一瞬がすべてで、ほんの少しもとりこぼすことができない。擦り切れて、すさみ切ってしまった自分を奮い立たせるための場所。後ろを振り返れば、崖から落ちていくだけ。今を全力でやるしかない。
 
 20日、公開ゲネプロ当日。朝から緊張していました。お客さんが来てくれるということは、「魅せる」ということ。表現すること。最大限に伝えること。生きていることが本当に意味あることで、素晴らしいことだというメッセージを届けたい。「明日からまた頑張ろう」という気持ちに少しでもなってくれたら……。
 5分前のブザーの音。あゆちゃんのアナウンス。1分前。幕を通して、まっすぐに視線を定める。幕のそとにいるお客さんに届けたい。
「始まる。物語はここから始まるんだ」
 幕が開く音。暗いステージの上が少しずつ明るくなっていく。一音目。「イズ、ディス、……」この音に気持ちをこめて。始まりから終わりまでがあっという間でした。最後に温かな拍手をもらい、ほっとしました。客席をみると、地域の数組のご家族がいらしていました。お子さんと一緒に笑顔をむけてくれて、小さな子がステージにむかって、歩いてきて、手を振ってくれました。私は、「来てくれてありがとうございます。」と心の中で何度も繰り返しました。
 
 21日、当日。急に不安やこわさが自分に襲ってきました。自分が失敗してしまうんじゃないか、乱してしまうのではないか。皆のレベルについていけてない、本当は自分がいてはけないのではないか。そんな思いがずっと心の中にありました。押し込めていたその思いが急に強く湧き上がってきました。「やっぱり私はだめなんだ……」そんな気持ちのまま、朝食後、食堂をでるときに、ふと、あゆちゃんが、
「閻魔様、今日も髪の毛くくらせてね」
 と笑顔で声をかけてくれました。その笑顔をみたとたん、なんだか泣きそうになってしまいました。「大丈夫。ひとりじゃないんだ」と心がふと軽くなりました。ホールにつくと、みつきちゃんが、
「今日もメイクさせてね、閻魔様のシーン好きなんだ」
 と声をかけてくれました。皆の優しさが今の自分を支えてくれているんだと、本当に感謝の気持ちでいっぱいになりました。ダンスのキャッチアップをあけみちゃんが続けてくれて、まりのちゃんが、いつも側にいてくれて、知らぬまに小道具を作ってくれていたり、トロンボーンの練習では、えっちゃんが、「みゆちゃんがいてくれるとうれしいっ」と声をかけてくれて、コーラスでは、まなかちゃんが、「わからないことがあったら声かけてね、一緒にやろう」と言ってくれて。他にも数えきれないほどの優しさをいっぱいもらいました。なんで、自分なんかに……。皆と一緒なら、出来ないことが、出来る、に変わるような気がしました。
 
 あゆちゃんが、髪を高く、お団子でくくってくれました。鏡をみると、自分じゃないような気がして、気持ちがひきしまりました。お父さんが、
「今日までの練習や努力してきた9割が意味あるもので、今日のコンサートは1割のおまけみたいなものだよ」
 と言っていました。本番ももちろん大切だけど、これまで積み重ねてきたことが何よりも価値のあることなんだと。「楽しんだらいい」お父さんがそういってくれて安心しました。お母さんが、「自分から離れてステージに立つ」ことを教えてくれました。
 舞台裏のモニターにお客さんが映っていました。控室、舞台裏、皆の緊張感が伝わります。自分も緊張のピークでした。落ち着くために、プログラムの歌詞を読み返しました。
『ボヘミアン・ラプソディ』から始まる今回の物語。
 幕を通してでも、お客さんの熱気が伝わってきました。どんな物語がはじまるか、きっと期待してくれている。期待に応えなきゃと思うと、不安で動けなくなりそう。自分が思いっきり楽しんだら、それがお客さんにも伝染して、何かを伝えることができるはず。
「よし、全力で楽しもう。思いっきり自分から離れよう」
 緞帳が開きました。歓声が聞こえました。
「もしかしたら、今この瞬間だけは、自分のこと好きでいられるかも……神様お願いします!!!」
 記憶が無くなるぐらい、あっという間の時間でした。
 
 その後もあっという間に過ぎていきました。
「今この瞬間をのがしたくないっ」
 自分が閻魔大王という役をもらったとき、自分にできるかどうか不安でした。誰かを裁くことなど自分にはできないと。自分の人生そのものが後悔だらけの残念な人生だから。裁かれるべきなのは自分。
 後半、『オペラ座の怪人』で幕開け。そして、ステージ上の机に向かってまっすぐ歩く。
 椅子に座ると、たくさんのお客さんが目にはいりました。途中でセリフがとびました。その後は頭が真っ白になってしまいました。自分がどう演じたかも覚えてないぐらい。本番で、失敗するのは、やっぱり心が弱いんだ。お父さんが書いてくださった、大事なセリフを自分は飛ばしてしまった……。皆はうまく演じているのに。やっぱり、私は、残念な人間なんだ。
「ごめんなさい」
 その後のコンサート中も、考えてしまいました。楽しむことができませんでした。
 お父さんが夕飯の席で、そのことを笑いに変えてくれたとき、私は、本当に救われました。優しいなと思いました。「なにやってんだっ」としかられるかと思っていました。
 お父さん、お母さん今回、閻魔大王という役をやらせていただき、本当にありがとうございます。私は、この脚本の閻魔大王が大好きです。そして、この役を演じているときの自分のことは、ちょっと好きになれました。
 コンサートに向かう機会を与えてくださりありがとうございます。何かに向かって、頑張ることが、今まで自分にはなかったきがします。
 コンサートが終わり、自分を離れることを日常生活から始めていかなければいけません。

 

 

【ウィンターコンサート2025 感想文集】

❖「“ゆめの”を演じて」 ゆうな
❖「初めての舞台、伝える側になれた喜び」 ここの
❖「良い生き方を求めることに誇りをもって」 ゆうは
❖「永遠になる一瞬をみんなと積み重ねながら」ほのか
❖「閻魔大王として舞台に立って」みゆ
❖「人間にはネコ的な要素が必要だということ」ななほ
❖「生きていく道標」まなか

 

 

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