
今日から練習がないということが信じられなくて、朝起きた時に、本当に終わってしまったんだなと思いました。
数か月前の私はまさかステージに立っているだなんて想像もしていませんでした。なのはなに来た時にはすでに練習が始まっていて、遅れてキャッチアップしてもらったこともあれば、みんなと一緒に練習し始めたこともたくさんありました。初めてコーラスをあゆちゃんに指導してもらった時のことをとてもよく覚えています。その曲は『Bohemian Rhapsody』でした。音楽室にみんなが集まって、何時間もずっと立ちっぱなしでした。私は次第に足の感覚がなくなっていくのを感じて、平気な振りをしながら心では「早く終わらないかな」と思っていました。それでもみんなが真剣にアドバイスを聞いて、どんどんよくなっていくことが音楽のことを何も知らない私でもよく分かりました。そもそも洋楽なんて全く興味がなかった私がいつの日かQueenの曲を歌う日が来るなんて思ってもみませんでした(笑)。
それからも日中は、畑と練習で忙しい中、ついに脚本が完成したというお知らせがありました。1週間くらいだったと思います。ずっと楽しみにしていた脚本がついに。早速みんなで読み合わせがありました。読み終わった後の感想は、「思ったより長いな」とか「こういう感じなのか~」という感じで、正直あまりシーンが想像できていなかったのでよく分かっていませんでした。でも1からストーリーを作り上げることのすごさはとても感じました。それからどんどん配役も決まっていって、私は初めてだし、役は当然ないものだと思っていました。ある日、黒板に貼ってあった配役を見てみると「飴妖怪 ここの」の文字が。「私!!」とびっくりしました。すぐに台本をみてセリフを確認して緊張しながら言ったことを覚えています。候補にはもう1人、ゆうはちゃんもいて、2人が言い終わった後お母さんが、ゆうはちゃんはすでに学生の役が決まっていたのもあって、「ここのがいいんじゃないか」と言ってくださいました。どんな役でももらえたことが本当にうれしかったです。これからの練習がどんなに大変なものになるか知ることもなく…… 。
セリフは少なかったのでこれくらいならいけると思っていたものの、よく見てみると、登場するシーンはたくさんありました。そもそも飴妖怪を初めて聞いて、鳥取出身なこともあって妖怪とは少し近しいものを感じていながらも、どんな妖怪なのか知ることからスタートしました。調べてみるとすごくひょろひょろで、よくみる白い浴衣に三角の布巾を頭にかぶっている幽霊みたいな妖怪で、お腹に赤ちゃんを授かったまま死んでしまい、水あめを買って赤ちゃんにあげていたそうです。知れたことはよかったものの、これからどんな役作りをしたらいいのかは良くわかりませんでした。そんな中、他の妖怪の宴会シーンの練習も始まって、そこにはとても心強い先輩がたくさんいました。まだみんな役作りができていない中、練習の中でそれぞれの妖怪についてみんなで意見を共有して、私は意見をなかなか言えなくて申し訳なかったけれど、私の飴妖怪についてもたくさん意見を言ってもらえて、自分では考えていなかったこともたくさんあって、勉強になることばかりでうれしかったです。それからというものの、夜も毎日のように集まって、日中いなかったひろちゃんと共有したり、みんなとそろえて練習する時間がとても楽しくて、妖怪メンバーはとても個性豊かで、たくさんの意見が飛び交うなかたくさん笑い合って、気が付けばどんどん役になりきっていました。
ダンスも初めは、見ているだけだった『Bohemian Rhapsody』や『The Show Must Go On』もフォーメーションに入れてもらえて、『The Show Must Go On』のサビはみんなと一緒に振り入れをしました。初めてさやねちゃんが前で踊ってくれたのを見た時、とてもかっこよくて、自分は踊れる自信がなかったけれど、やりたい! と思いました。私はダンスは全く経験がなくて、見ることは好きだったけれどやるのは逆に苦手意識をもっていました。それでも教えてくれるさやねちゃんやあけみちゃんはポーズを一つひとつ丁寧に教えてくれて、振りもだけどどんなイメージをもったらいいということも言ってくれる表現力の豊かさに驚きつつも、すごく分かりやすくて楽しかったです。初めは激しい振りやきつい体勢に、最近全く運動していなっかたこともあって激しい筋肉痛に襲われましたが、徐々に筋肉痛になることもなくなっていき、身体も筋力がついていることを感じてうれしかったです。
コーラスもまた大変でした。次から次へと新しい曲の音入れがあって、まだあやふやなまま、前のコンサートで歌って今年も歌う曲を復習しようとなった時、一気に4、5曲くらい楽譜を渡されて、思わず戸惑ってしまいました。それでもみんなが「一緒に頑張ろう」と声をかけてくれたり、まなかちゃんが夕食後に1曲ずつキャッチアップもしてくれたのがうれしかったです。歌うこと自体はもともと好きなほうではあったものの、ここまで真剣に練習したことはなかったです。あゆちゃんが和訳してくれた歌詞を見たり、曲ができたストーリーやどんな意味が込められているのか練習のたびに教えてくれることが、歌うにあたってすごくモチベーションになって、それを聞いてからでは気持ちの入れようが全くちがうことをいつも実感していました。特にQueenの曲は、本気で音楽を愛していて、一人でも多くの人に自分たちの曲を届けたいという思いがどの曲にも込められていて、とても素敵な曲ばかりで、全世界に今もなお愛されている理由がよく分かりました。
歌えるようになってくると、今度は表情をつけるということが課題になりました。摂食障害になってから、気が付けば感情も出さなくなっていました。たまに面白いことがあって笑うと、同級生からも、
「ここのちゃんがそんなに笑っていることろを初めて見た」
と言われて、自分では今まで気にしていなかったのに、そんな風に周りからは見えていたことを知って、とても驚いて傷ついたことがありました。そのあとも何度か同じようなことを言われたことがあります。いつしかどうでもよくなっていました。練習している中で表情が薄いと言われて、鏡であとから見てみると確かに思っていたより笑えていなかったし、いかにも作り笑顔という感じで怖い表情になっているように思いました。ある日に夕食後のバディー練習でまなかちゃんが見てくれて、表情レッスンをした時がありました。曲ごとに表情をみんなで見合いました。自分も見てもらって、「もっともっと表情を出して」とか「目に光を入れる」ということを言ってもらえてイメージが付きやすくなりました。最後にみんなで、何の曲でしょうクイズを出し合いました。笑顔の表情だけでも違いが出せて、「これかな」と分かるのが面白かったです。
練習が進む中で、もらえる時間が少なかったのが楽器練習でした。私が来た時には、すでにみんなは自分の楽器で『オペラ座の怪人』の練習が始まっていて、私は楽器を決めることからスタートしました。最初にみんなの練習時間にお邪魔させてもらい、実際に持って吹かせてもらいました。私は楽器も初心者で楽譜も読めないので、不安でいっぱいでした。
その中で自分の好きなアーティストさんがサックスを吹けて、かっこいいなと思っていたこともあり少しサックスに興味があって、吹いてみると、音も何とか出すことができたので、希望としてサックスをやってみたいと伝えました。数日たってテナーサックスをやることが決まって、とてもうれしかったです。テナーサックスには、あけみちゃんやなるちゃんもいてくれて、とても心強いなと思いました。それでも練習は自分にとってはなかなかハードで、音階はリコーダーのように指で押さえれば変わっていくのでわかりやすかったものの、タンギングという言葉を初めて聞いて、なかなか初めはうまくできませんでした。あと息が全然もたなかったり、タイミングがよく分からなくて全く続けて吹けませんでした。ロングトーンをするのは今でもギリギリです(笑)。
それからあゆちゃんに見てもらって音楽室でみんなで練習したとき、あゆちゃんが『オペラ座の怪人』の物語を教えてくれて、私は初めて知って、すごく衝撃でした。純粋に愛する気持ちの中に行き過ぎてしまった欲が切なくて、行き過ぎてしまった感情に少し怖さを感じました。その話を聞いて、より曲のイメージがつきました。あと、ありがたいことに日中の昼食前1時間、さとみちゃんとキャッチアップの時間をもらえることになりました。さとみちゃんは本当に上手で、けれど吹奏楽部も1年しかやっていなかったと聞いて本当に才能だな思いました。詳しくタンギングを教えてもらったり、苦手な音も分かってきたり、たった1時間だったのに次に吹いた時の吹きやすさの違いにとても驚きました。その週は毎日の1時間、個人でたくさん練習出来て、日に日に吹けるようになっていく感覚がとてもうれしかったです。またサックスクリニックにも行かせてもらいました。初心者の自分が行くことが申し訳なかったけれど、プロの奏者の方に直接教えてもらえて、一番の発見は、上の歯がしっかりマウスピースにあたっていないということでした。咥え方からできていなかったことにとても驚きました。あと教えてもらった先生があけみちゃんのサックスを見て、とても興奮していたことに、それほど貴重な楽器が揃っていて、使わせてもらえることがすごいことなんだなと実感しました。すごく貴重な時間を過ごせてありがたかったです。パート練習では自分たちの主旋律を、トロンボーンや大正琴の人と一緒に、主にえつこちゃんが指揮を執ってくれて、どんなイメージで吹こうということを言ってくれながら練習したり、隣ではあけみちゃんがいつもアドバイスをくれて上達することができたと思います。
通しが始まってからはさらに忙しくなって、練習したいことがたくさんあるのにどんどん時間が過ぎていくのが早く感じました。脚本も新しくなったり、みんなの完成度も上がって、自分も気が引き締まっていきました。特に劇は、脚本が新しくなるたびに分かりやすさや、好きなシーンがどんどん増えていったし、みんなすごいけれどやっぱり主要役者の3人が毎日練習を重ねていく中で気持ちが伝わる表現になっているということが一番すごいことだと思ったし、そこにいつでも安定しているなおちゃんがいることでより面白さが増すんだろうなと思いました。
本番が近づくにつれて、今度は舞台背景の制作が始まりました。お母さんが考えてくださった考案は想像よりはるかにすごくて、どうやって作るのか不思議でしかありませんでした。そんななか私は、舞台背景係につかせてもらって一緒に作業できたのがとてもうれしかったです。さくらちゃんやまえちゃんが須原さんと考えて作っていくお手伝いは、初めてすること、知ることがたくさんあって毎日が冒険でした。
ついにホール入りして1日目。実際にホールで組み立てると、体育館で見ていたよりも何倍も大きく見えて迫力が増すのを実感しました。それから照明もついたり、バンドも音を出してやってみると、これが本当のステージなんだなと思って、初めての経験に胸がいっぱいになりました。それと同時に改めて照明や、音響すべてを自分たちの手や手伝ってくれる関係者の方だけで完成させていることがすごいことだなと思いました。それでも始めたばかりの時は、舞台背景もベニヤ板にイラストを描いただけのものだったと聞いて、今までの卒業生の先輩方がお父さん、お母さんと一緒に作り上げてきたからこそ今があることに感謝したいです。
本番は、緞帳が上がった瞬間にたくさんのお客さんが見えて胸がいっぱいになりました。『Bohemian Rhapsody』の演技中、涙を必死にこらえながら、こみ上げてくる感情を抑えていました。大きな拍手や歓声、笑い声をもらえることがとてもうれしくて、しっかり伝わっていることを感じました。私は自分のセリフが一番ドキドキしていて、近づくにつれて気が動転してしまいそうでした。ライトが自分だけに当たってお客さんの視線が集まった瞬間、転ばずに前に出れて、声もしっかり出て、セリフを言い終われて、とにかく安心しました。自分の役割を果たしてもう終わったくらいの気分になりました。本番前に妖怪のみんなで確認した変更点もみんなで揃った感覚を感じて、本当に楽しかったです。最後『The Show Must Go On』が終わった瞬間、ほんとに生きていてよかったなと思いました。最後、舞台挨拶でのお母さんのコメントで、こらえていたものがすべてあふれ出してしまいました。
お父さんが、
「脚本は自分が書いたのではなくて、神様が書かせているだけなんだ」
と教えてくれた時、お父さんがみんなと同じ立場になって、メッセージを一緒にたくさんの人に伝えようとしてくれていることを改めて実感しました。数か月前まで、真っ暗で先が見えない人生を歩んでいて、ステージに立つなんて全く想像もしていなかったのに、なのはなに来て1日で光が差してきました。みんなの温かさに触れて、同じ悩みを抱えてきたみんなだからこそ分かり合える気持ち。理解し理解される関係がすでに成り立っているからこそ自分もすぐになじむことができました。伝えてもらう側から伝える側になれた喜び。正直まだ自信をもって伝えるには、自分は早いようにも思います。でもこの脚本を通して、今の人生を選んだのは自分自身で、摂食障害になることもなのはなに来てステージに立つことも決まっていたことを知りました。悩んでいた時間は魂磨きの一部だったこと。誰かの役に立たなくてはと思っていたけれど、ただ見ているだけでも十分だったこと。幸せをずっと追い求めて、今が台無しになっていたこと。まさにこの脚本は自分自身の物語そのもので、イモムシで引きこもりだった自分はみんなと練習した日々や、脚本を通してコンサートを終えた今さなぎに成長できたと思います。まだ蝶になって飛び立つまでには時間がかかると思いますが、今ならみんなと一緒に絶対飛び立つことができるという自信があります。華をもってみんなの一部としてステージに立てたことが本当に楽しかったし、初めてこんなにも光を浴びて輝くことができました。今年のコンサートは終わってしまったけれど、この先一生心には残り続けるし、KIN NHFの未来作りもまだずっと続くので、わたしもみんなと一緒に成長し続けたいです。
【ウィンターコンサート2025 感想文集】
❖「“ゆめの”を演じて」 ゆうな
❖「初めての舞台、伝える側になれた喜び」 ここの
❖「良い生き方を求めることに誇りをもって」 ゆうは
❖「永遠になる一瞬をみんなと積み重ねながら」ほのか
❖「閻魔大王として舞台に立って」みゆ
❖「人間にはネコ的な要素が必要だということ」ななほ
❖「生きていく道標」まなか
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