『摂食障害 と わたし 質問集』 

新しい本のご紹介

摂食障害 わたし
 質問集

著者:小野瀬 健人
定価:1,800円(+税)
発行:なのはなファミリー企画株式会社

 
――絶望から希望へ向かうための
案内図として


「どうして私は拒食症になってしまったんだろう」とか「どうして過食嘔吐を治せないんだろう」と悩む女性が、どんどん増えています。家族や親しい知人が摂食障害になってしまい、どうしても治すことができずに悩んでいる人が数多くいます。

 それだけ患者数が増えていながらこの病気は理解されることが少なく、解決の糸口を求めていろいろと調べても、納得できる答えにはめぐりあえないのが現実ではないでしょうか……。

 摂食障害の症状から回復まで、その全容を質問に答える形で解説したのが本書です。
 

目次
  • 第1章「なぜ、いつから、わたしは病気になったの?」
     ――摂食障害の原因と依存症について――
  • 第2章「摂食障害の本当のこと、教えてください」
     ――もっと摂食障害を知りたい――
    ▶第1章、第2章に収録されている質問の全文はこちら
  • 第3章「これも摂食障害の症状なの? 心が自由にならない」
     ――食欲の他にも併せ持つ依存症の症状――
  • 第4章「心が壊れ、人間らしさも、モラルも、堕ちていく」
     ――わたしがわたしじゃなくなっていく――
  • 第5章「心が壊れると、身体が生きることを拒否する」
     ――辛さが身体を蝕んでいく――
  • 第6章「わたしの心が、見えない」
     ――自分の意識と、自分の心がバラバラで……――
  • 第7章「食べられない」「食べ過ぎる」「痩せていたい」
     ――食べることにまつわる症状――
  • 第8章「私が悪いわけじゃなかったの?」
     ――社会的背景とアスペルガー――
  • 第9章「私は治るのですか? それとも……」
     ――摂食障害から治るということ――
  • 第10章「わたしの治しかた、教えてください」
     ――治る方法は、あります――
  • 第11章「精神科に入院病棟がない国があるって本当ですか?」
     ――精神科に入院病棟を作らないイタリアの場合――
質問例(第1章と第2章に収録されている質問)

「どうして私は拒食症になってしまったんだろう」とか「どうして過食嘔吐を治せないんだろう」と悩む女性が、どんどん増えています。家族や親しい知人が摂食障害になってしまい、どうしても治すことができずに悩んでいる人が数多くいます。

 それだけ患者数が増えていながらこの病気は理解されることが少なく、解決の糸口を求めていろいろと調べても、納得できる答えにはめぐりあえないのが現実ではないでしょうか……。

 摂食障害の症状から回復まで、その全容を質問に答える形で解説したのが本書です。

「わたしのここまでの18年間、生まれてきて良かったことは何もない、辛く苦しい時間ばかりだった、生きるに値しない人生だ、と痛いほど感じています。このことをどう思いますか?」

 これは今回、摂食障害の女性たちから集めた中に入っていた質問の1つです。

 あなたにとって、それは事実だと思います。
 たくさん苦しんできたと思います。その苦しさを乗り越えるための努力も、どれほどしたか、それを精一杯してきた上での、今の気持ちだということもわかります。

 では、1つ、こんなことをあなたに問いかけてみたいです。
 その生きるに値しない人生を、当分のあいだ、私たちにいただけませんか。そんな苦しさをまだまだ味わい続けている多くの摂食障害の女性の人たちを、その苦しみから解放するための活動を、一緒にしていただけませんか。
 そして、それがうまくいって、遠い遠い将来に、もうこの世界に摂食障害の辛さで苦しむ女性はいなくなったね、という時代が来るまで、もしよかったらあなたの人生を共に使ってもらえませんか。私たちの願いを受けて、実現に向かおうとするプロセスのなかで、きっとあなたは次のように感じるはずです。

(摂食障害は一生付き合う病気ではなかったのだ、摂食障害の症状から抜け出し、生きるつらさから解放されただけでなく、わたしは初めて生きる意味を知り、生きる歓びを感じることができた)
 そして、あなたは思います。私は生きる価値のある人生を生きている、と――。

 こんな呼びかけを私たちはもう20年近くも続けてきました。私たちが摂食障害の回復支援を本格的に始めてから、受け入れた女性は450名に及び、今も精力的に運営を続けています。

 「摂食障害の症状は完全に消すことはできません」と決めつけてしまう類書が多い中で、本書は決してそうではなく、症状から完全に抜けることはできるという事実を踏まえて、その考え方を質問に答える形で述べています。症状が始まって間もない若い女性にこそ、遠回りする前に、ぜひそのことを知っていただきたいです。

 岡山県の北部の森の中にある山小屋が、私たちの初めの建物でした。  
 その時に集まった女性たちは、拙著の「『食べない心』と『吐く心』」を読んで、「回復のためには薬剤よりも、心の苦しさをどこまでも深く理解してくれる人がいてくれることが必要なんだ」と共感して来てくれた人たちばかりでした。

 毎日、いろいろな小事件が起きて、大変なことの連続でしたが、同時に楽しいことの連続でもありました。立ち上げ時から、みんな喜んで食べて、飲んで、活動して、元気いっぱいでした。
 当初に掲げた活動の柱は、今も変わっていません。農業、音楽・ダンス公演、スポーツの3本柱と、心の傷を癒したり、自分の心を知るための種々のミーティングです。

開設から2か月がたったとき、1人の子がこう言いました。
「お父さん、わたし、何年もずっと1日も休まずに、過食嘔吐を続けてきました。それが、ここに来てから1度もしていません。そのことを、口に出した途端に崩れてしまいそうな気がして今まで言えませんでした。2か月がたって、ようやく自分を信じられるようになって、いま初めて言えました。本当に嬉しいです」
 なのはなファミリーを立ち上げて、本当によかったと思えた時でした。

 いまでは拠点を勝央町の元小学校だった建物に移して、収容人数を増やし、活動の厚みも増してきました。すっかり地域の一員として定着し、耕作を引き受けている田畑も十町歩ほどになりました。農業法人も併設して、摂食障害の回復を支援すると同時に、自立支援までを視野にいれての活動に発展させてきています。

 私たちが勝央文化ホールで開催するウィンター・コンサートは、定員660名の会場がいつも一杯になるほど地元の方々が楽しみにしてくれています。
 そして今後はこれらの取組みをさらに発展させて、回復支援・自立支援と地域貢献とを結びつけた仕組みとして、完成形を目指していけたらと願っています。そんな私たちの取り組みを、一つひとつの質問とその答えの中から汲み取っていただけたなら幸いです。

 摂食障害を発症した女性が、希望を持って回復への道を歩き出してほしい、本書によってその願いが少しでも叶ったならば本望です。

摂食障害の本当のこと、
答えます

いくら食べても過食を止められないのはどうして?
摂食障害はただのわがまま病?
病気の自覚が持てないのは?
生きる意欲が持てない
治りたいけど治りたくない
そもそも、摂食障害から本当に治るってどういうこと?

摂食障害から回復する道筋は

 
質問例(第1章と第2章に収録されている質問)

 第1章 「なぜ、いつから、わたしは病気になったの?」
  ―― 摂食障害の原因と依存症について――

【判断基準】
 わたしは、摂食障害にあてはまるかどうか、何を基準に考えて判断したらいいですか?

【病識の欠如】
 周りからは摂食障害だと言われるのに、自分では病気だという自覚が持てません。どうしてですか?

【摂食障害の原因 1】
 食べられない、食べ過ぎる、吐きたくなる、それが毎日、続いてしまう、これは何が原因で、頭のなかで脳がどう働いているのですか?

【摂食障害の原因 2】
 一般的にダイエットが原因と言われていますが、それは本当ですか。また、摂食障害の原因は人によって違いますか? 

【摂食障害の原因 3】
 子供のときに受けた心の傷が摂食障害の原因となるなら、それは一回の傷でも原因になりますか、それとも積み重なった傷が原因になりますか?

【治療法は公的には未確立】
 病院に行っても誰にも分かってもらえる気がしないのはどうしてですか?

【わがまま病?】
 摂食障害は「わがまま病」なのですか?

【親子関係】
 親子で関係がとれないこととは、摂食障害と関係がありますか?

【過保護】
 わたしは親に甘やかされて、過保護に育てられました。そのことと、摂食障害になったことは関係がありますか。普通の生活ができないのは私の甘えのせいですか?

【前駆的な症状】
 摂食障害になる前の小学生時代、夢を見て夜中に泣き叫んでいました。これは摂食障害と関係がありますか?

【服を噛む癖】
 摂食障害になる前の小学生時代、服の袖をかむ癖、人形をかむ癖が治りませんでした。これは摂食障害と関係がありますか?

【口内炎】
 摂食障害になる前の小学生時代、口の中に口内炎が常に2つできていて、治りませんでした。これも摂食障害と関係がありますか?

【イジメはきっかけ】
 わたしはイジメにあったことが摂食障害になった原因だと思っています。あっていますか?

【症状の違い 1】
 食べられない拒食、食べすぎる過食、食べて吐く過食嘔吐との違いは、受けた痛みの違いからくるものですか、それともその人の生まれ持った性格と関係がありますか?

【症状の違い 2】
 同じ摂食障害でも、人によって症状の種類や激しさが違うのはどうしてですか?

【過食に転じる人、転じない人】
 拒食の症状をずっと続けている人と、過食嘔吐に転じる人の違いは何かありますか?

【摂食障害に共通のこと】
 摂食障害になる人に共通することはありますか?

【常に全力】
 自分が常に、頑張っている、全力を出し尽くしている感じがしないと、自分を許せないのは、摂食障害になったことと関係がありますか?

【食欲だけ?】
 色々な本能のうち、食欲だけに異常をきたしてしまった理由は何ですか?

【女性に多い理由】
 どうして摂食障害の人は若い女性が多く、男性は少ないのですか?

【精神病】
 摂食障害の人が、他の精神病もわずらっていることが多いのはどうしてですか?

第2章 「摂食障害の本当のこと、教えてください」
  ―― もっと摂食障害を知りたい ――

【痩せは共通認識?】
 痩せているほうがいい、というのは若い女性の共通認識ではないですか?

【こだわり】
 拒食が進んでから、決まった服装、髪形をしていないといられなくなりました。制服の下にストッキングをはいて、締め付けの感覚が常に必要だったりと、小さなこだわりが山のようにありました。なぜそのようになってしまったのですか?

【付き合っていく病気?】
 病院で「摂食障害は治す病気ではなく、付き合っていく病気」と言われました。本当に症状から抜け出す方法はないのでしょうか?

【思春期だけの病気?】
 摂食障害は思春期だけの病気と聞きましたが、年齢がすすむに連れて自然に治るのですか?

【どこまで治す?】
 私は週末の2日間だけ過食嘔吐をして、平日は仕事ができています。これ以上は治す必要はありませんか?

【病識の欠如 1】
 わたしは食べるのが好きなだけだと思うのですが、過食症との違いはなんですか?

【病識の欠如 2】
 症状が過食しかありません。自分が病気と思えないのはどうしてですか?

【病識の欠如 3】
 私は拒食と過食の症状がありますが、もしも一週間に限るとすれば、普通の食事量で過ごすこともできます。こんな私も摂食障害なのでしょうか?

【恋人は】
 摂食障害の人は、恋人が作れますか?

【結婚は】
 摂食障害の人って、結婚できますか?

【子育ては】
 摂食障害の人って、子育てできますか?

【結婚、子育ての忌避】
 子供を育てたいと思いません。それも症状ですか?

【人間不信】
 家族、友達、通院している医者、先生、誰も信用することができないのはどうしてですか?

【仲間はずれ】
 本当は仲間を見つけて、信頼関係を築きたいのに、どこに行っても仲間はずれだと感じます。どうしてですか?

【家出】
 家族関係に問題はないはずなのに、度々、家出をしたくなってしまいます。これは摂食障害と関係がありますか?

【姉妹での違いは?】
 同じ両親から育てられたのに、どうして姉妹のうち病気になる子とならない子がいるのですか。

【理由のない恐怖】
 食事をしているときに、ドアの方に背中を向けるのが怖くて、背中を向けて食べられないのはなぜですか?

【世界の終わりと殺される恐怖】
 いつか世界は終る、自分はいつか殺される、という怖さがあります。道を歩いているときに、本気で殺人鬼と出会うのではないかと信じてしまうのはどうしてでしょうか?

【集中力の欠如】
 摂食障害になってから、集中力がなくなり、勉強ができなくなってしまったのはどうしてですか?

【可愛いという感情の欠落】
 子猫や子犬、花を見ても可愛い、と思えません。これも症状ですか?

【紙おむつ】
 下剤乱用でトイレが間に合わないので、紙おむつを使っています。どうすれば下剤を飲むのをやめることができますか?

【依存症】
 アルコール依存のような依存症は治りにくい病気と聞いています。摂食障害も依存症ですか?

【依存症の定義】
 摂食障害が依存症だとすると、依存症の定義はどんなものですか?

 わたしは、摂食障害にあてはまるかどうか、何を基準に考えて判断したらいいですか?

 幼稚園、小学生の頃から、なんとなくクラスの中で浮いていたとか、中学生、高校生になると生きにくさを感じるようになった、ということは大きな判断材料です。
 端的に言えば、自分は違う惑星で生まれたのではないか、というくらい今の生活を続けることに違和感を感じる場合もあります。
 そして、拒食の場合には、食べなくてはいけないとわかっていても食べることができないとか、過食の場合には、食べ始めたら食べるのをやめるのが難しいことがあるとか、食に関してあなた自身で制御できないときがある場合は摂食障害になっているといっていいでしょう。
 また、どれくらい食べるのが適切か、自分が食べるべき量がわからなくなり、お腹が空いたという感覚や、お腹がいっぱいという感覚がよくわからない、となれば明らかに摂食障害になっているといえます。

 ダイエットと拒食、どこからが摂食障害だという線引きはありますか?

 自分がしているのはダイエットである、というときは、自分が決めた食べ方、食べる量を守ってやっているときで、体重を何キロまで落とすという目標値があるものです。
 しかし、拒食になると、痩せていれば痩せているほどいい、となってしまい、目標値までいってももっと、もっと、と生命が危険なゾーンに入ってもまだ痩せたいという気持ちが消せません。実際に栄養失調で命を落とす人も多いです。
 自分より痩せている人が羨ましい、という感情が出てきたら摂食障害ですし、果てしなく痩せたいという願いがあったなら、摂食障害で間違いありません。

 過食に気持ちを逃がしたいという気持ちがあって、治そうという気持ちを持てません。どうしたら治そうと思えるようになりますか?

 これはいい質問ですね。多くの摂食障害の女性は、治りたいけど、治りたくない、という気持ちを持っている、というのが実際のところです。

 なぜならば、「今までの人生の中で、過食(過食嘔吐)ほど自分が救われた気持ちになることはなかった」と思っているからです。
 日々、苦しく生きていて、過食している時間だけが、唯一、幸せを感じられる時間だというわけです。だから、その唯一の幸せな時間が、治ることでなくなってしまったら、自分は辛い気持ちをどこに逃がしたらいいのだ? ということになってしまうのです。

 過食はおカネがかかる。時間も無駄になる。衝動が起きたら何も手につかなくなる。そういう面では困るから、治りたい。だけど、唯一の楽しみも失いたくない、という気持ちです。
 摂食障害の女性は、かなり苦しい人生を生きています。それは普通の人の想像を絶するような苦しさです。繰り返しますが、摂食障害の女性の自殺率は精神病の中でも一番高いのです。
 だから、その苦しさから逃げるための過食なり、過食嘔吐なのです。

 治りたいと思えるようになるためには次の二つが満たされることが必要でしょうね。
「生きる苦しさがとれる日がくる、と信じさせてもらえること」
「自分が信じる人(血縁関係のない人に限る)ができて、心を許して何でも話すことができ、自立するまで見守ってもらえると確信できること」
 これができたら、症状を捨ててもいいかな、と思えるはずです。

この本は一問一答で
全部で186の質問について解説しています。
是非ご購入いただけると嬉しいです。


著者
小野瀬 健人 ◆ おのせ たけひと

永くジャーナリズムの世界でアルコール依存症や摂食障害の取材、執筆を続け、著書「『食べない心』と『吐く心』」を上梓後、摂食障害に悩む女性の強い要望を受け、回復を支援するための施設「なのはなファミリー」を開設。日本では例のないソーシャル・ファーム型の施設で、自立を前提とした回復支援を志向して運営を続け現在に至る。

 

 

▲ページトップへ戻る