「大好きなトロンボーンを通して」 えつこ

8月29日

 誰かの居場所を作る人になりたいと、ずっと、思っています。その居場所を、大好きなトロンボーンを通して作ることができたらどんなに良いだろうと、密かに思っていました。

 中学校の吹奏楽部の子たちが来てくれるという話を聞いたとき、私は最初、楽しみよりも、不安が大きかったです。私は、トロンボーンのパートリーダーを、なのはなだから、仲間にたくさんフォローしてもらいながらできています。けれどやはり、なのはなでパートリーダーをしていても、練習していても、もっとこうしたかった、という思いを毎回していて、こんな私が、中学生にちゃんと教えることができるのだろうか。せっかく来てくれた子に対して、ちゃんとプラスの何かを与えることができるだろうか、という不安がありました。

 あゆちゃんが、楽器練習のときに、「来てくれる子の居場所を作る人になるんだよ」と話してくれたとき、それこそ私がまさにやりたかったことじゃないか! と、思いました。なのはなの仲間になりたい、なのはなの居心地が良い、と思ってもらえるような場所を作ること、それこそが私の役割なんだと、思いました。教えるのが上手か下手か、トロンボーンが上手か下手か、じゃない。
 確かに、私はパートリーダーとしてちゃんと、お互いにトロンボーンが上達するように、自分でも勉強して、プラスの学びを持って帰ってもらえるように努力します。でも、それだけだったら、他にも、もっとトロンボーンを専門的にやってる人の教室など、教えてもらう場所は探せばたくさんあるかもしれない。私は、なのはなでやるから意味があると、思ってもらえるような居場所を作るんだと、あゆちゃんの言葉を聞いたときに、思いました。

 今日の朝は、楽しみな気持ちと緊張とでそわそわして、気になるところを掃除してまわったりしていたら、あっという間に時間になって、大急ぎで準備をして、楽器を持って立ち位置につき、足が小刻みにふるえるくらいにドキドキしていました。

 そして、『ガラスの香り』を演奏しました。誇らしい気持ちで、吹きました。さとみちゃんのソプラノサックスの、繊細で潤った一音目が体育館に響いた瞬間、とても誇らしい気持ちに、なりました。

 さとみちゃんの音を聴いて! さやねちゃんのこの濃密な音を聴いて! ここはさとえちゃんが格好良いところだよ! さとえちゃんのソロをより引き立たせるために、私の音がある。さあ、ここは私がブリブリと吹かせて次のシーンに繋げるんだ!

 やっぱり、アンサンブルは、聴く人がいるからこそ楽しいと、思いました。縁日が終わってから今日まで、お父さんが毎日、アンサンブルを見てくださいました。私は、そのとき、楽器を吹く気持ちになれなくて困っていたけれど、毎日アンサンブルをしながら、やっぱり、私はアンサンブルなしには生きていけないと、思いました。

 フラダンスのときも、私は、主に楽器のみだったので、裏で、ひかえていましたが、中学生のみんなが、みんなのダンスやバンドに引き込まれているのを感じ、誇らしい気持ちになりました。

 
 そして、ドキドキの、パート練習の時間です! トロンボーンパートには、中学2年生の、ほのかちゃんが、来てくれました。ふにっと柔らかい笑顔がすごく可愛くて、気持ちがほぐれました。まずは私たちで、他己紹介をしてお互いを紹介し合った後、ほのかちゃんが、自己紹介をしてくれました。もし話が詰まったときのためにと色々と話を準備していたのですが、ほのかちゃんが、「人見知りなんです」と言いながらもたくさんお話をしてくれて、私たちも次々に質問をしてしまって、それにほのかちゃんが答えてくれて、話がはずんでしまって、予定していた時間よりも長く話してしまいました。ほのかちゃんは、トロンボーンが好きで、トロンボーンをやっているんだと、嬉しくなりました。新しい仲間と、トロンボーンを通して繋がれることに、希望を感じました。

 そして、基礎練習に入ります! 昨日の夜からずっとシミュレーションしていましたが、やはり、緊張しました。しかし、緊張以上に、楽しかったです! 私の伝え方が未熟なところは、ゆりかちゃんが、たくさんフォローしてくれました。パートのみんなが、明るい空気を作っていました。ほのかちゃんも、すごく素直で真面目で、一緒に練習しながら、気持ちを正されました。ほのかちゃんと練習しながら、純粋にトロンボーンを楽しいと思う気持ちを、思い出しました。
 みんなの居場所をみんなで作るんだと、パート練習をしながら、思いました。ひとりひとりがお互いの良いところを出し合いながら、居場所を作るんだと、思いました。そう思うと、不安はなくなり、安心した気持ちになりました。

 そうこうしていたら、なんと、曲の練習時間が、15分になってしまいました! もう、私ったら! でも、ほのかちゃんの飲み込みがすごくはやくて、曲の最後までは練習はできなかったのですが、合奏のときには、最後まで吹いていて、本当にすごいと思いました。

 

 そして、ドキドキの、全員での合奏です!! 音楽室がぎゅうぎゅう。曲が始まった瞬間から、体も心も、頭のてっぺんから足の先までが、音でいっぱいになりました。なのはなにはなかった楽器の、ホルン、ユーフォニウム、チューバも入り、もの凄い重厚感と迫力。低音好きの私は、チューバの音に、心が踊りました。
 私も中学校は吹奏楽部でしたが、少人数だったので、こんなに大人数での演奏ははじめて。上も下も、右も左も、ななめも、360度、音楽室が音でいっぱい。私の中も、音しかない。この感覚が大好きです。そうだよ、これが私が求めているものだよと、思いました。
 そして、お父さんやあゆちゃんが、アドバイスをくださり、それからまた演奏したら、どんどん、音楽になってきて、なのはならしいパイレーツが作られていきました。これからもっともっと、なのはなの演奏になっていく、この時間がとても大好きです。なのはなの音楽を、中学生のみんなとも作れて、なのはなの気持ちが広がっていくことに、希望を感じました。

 楽しい時間はあっという間で、中学生のみんなが帰る時間になってしまいました。もっと一緒にいたいと、心から思いました。ほのかちゃんが、「学ぶことがたくさんあって嬉しかったです」と、話してくれました。その言葉がとても嬉しくて、心がぱあっと明るくなりました。
 自分が教える側になることで、逆に、私のほうが、勉強になりました。なのはな内でパート練習をするときは、私が言葉足らずでも、普段一緒に生活しているみんなだから、私の足りないところをくみ取ってくれて、許してもらっているところがたくさんあります。私は、つい、そこに甘えてしまいがちになります。
 今回、なのはなにはじめて来る中学生と一緒に練習することになって、どうしたら、なのはなで楽器練習をしたことがない人にもわかりやすく伝えることができるか、かつ、なのはなで楽器をすることを楽しいと思うような練習ができるか、ということを、よく考えました。こうしたらより良い音が吹ける、ということを、外の人にもわかりやすい言葉にすることで、自分にとってもわかりやすくなり、自分自身も、流してしまっていた基本を、より大切にすることができました。
 そしてなにより、中学生の子に対して、魅力的ななのはなのお姉さんを演じることで、自分が鍛えられました。自分の思う、理想的な、なのはなのお姉さんを演じて、理想的なトロンボーンの音を、みんなのお手本として私が吹く、という気持ちで、トロンボーンを吹きました。
 これは、中学生の子たちが来たときだけでなく、普段から、そのときそのときの理想的な役を演じることは、とても大切なことなんだ、そうすることが大人として普通のことなんだ、ということを感じました。

 次、また、中学校のみんなに会えることがとても楽しみだし、そのときまでにもっと良い演奏や練習ができるように成長しようという気持ちが、今の私の頑張る力です。