

自分は親離れはできていると思いますが、自我ができていないと感じます。社会性がなかったり、普通の人からすると欠けているものが多いし、自分に対して自信もないです。その対策を考えることが必要だと思っています。自我を作るための対策としては、どうしていったらいいと思いますか?
【お父さんの答え】

これは、摂食症の女性から受けることの多い質問です。
「自我が脆弱」というのは、摂食症の人にはよくあることです。
どうしてかというと、5、6歳で傷ついたときから、「人を怒らせるのが嫌だな」「人を怒らせたくない」「みんなと、いい関係、和やかな関係を作りたい」という気持ちが強くなってしまうためです。喧嘩とか、対立が怖くなるのです。
そして、いつも目の前の人に対して、「怒らないで欲しい」と思うあまり、相手に合わせてユアペースで生きていくようになってしまうのです。
その気持ち自体は悪いことではないのですが、全てがユアペースになってしまいます。相手を怒らせないことだけがテーマの人間関係、ということになるのです。
ですから、母親にとっても育てやすい子と感じたり、学校の先生にも受けが良かったりするのですけれども、いつか自分のペースというものを見失ってしまいます。つまり、自我がなくなってしまうわけです。
全てがユアペースなので、自分のペースというものがつくれなくなる。つまり、自我が脆弱になってしまうのです。それが行き過ぎると、社会性もなくなるし、自分の好き嫌いもよくわからない、というように、心の中が空っぽになっていきます。
そこで、こういう人が社会性をつけるにはどうしたらいいだろうか。
これはね、やはり「真似」をしたらいいんですね。人格も人の真似をする。身近な人で、この人は素晴らしいな、人間的にすごく深いものを持っていて素晴らしい、そういう人――なるべく近くの人で、しょっちゅう見ることのできる人がいいですけど――その人の人格を真似していくのです。その人の話し方、態度、行動、考え方を真似していく。真似をしながら、その人を土台にして自分の人格を作っていく、そういうふうに考えて実践してみてください。
「真似」と言うと、おかしいですけれど、その人がいない時でも、
「こういう場面で、その人だったらどうするだろうか、どう考えるだろうか」
というふうに、理想の人を頭の中にいつも置くのです。目の前にいなくても、いつもその人だったらどう話すか、どう行動するか、どう判断するか、それを基準に考えていくと、考えやすいと思います。
それをずっと続けて、自分が理想にしている人に近づいてきたな、と思える頃には、少しずつ自信が生まれているはずです。ずっと真似だけしているはずの自分に、いつか、「自分だったらこう思う」という、自分なりの自我というものが芽生えてくると思います。
だから、自分の好き嫌いも、すべて理想の人の好き嫌いの真似でいいのです。全部を真似しているうちに、やがて自分なりの好き嫌いが出てきます。
多少、時間はかかるかもしれませんけれども、真似をすることで迷いが消せますし、いずれ真似だけではない固有の自我が作られていくと思います。ぜひ頑張って欲しいです。
――モデルにする人は、母親とか父親とか、そういう近くにいる血縁者でもいいんでしょうか。
ああ、それは残念ながらダメなんですね、基本的に血縁者は、理想の人にできません。なぜなら確実に親離れしなければならないからです。摂食症は、親離れの失敗なのです。それなのに親を見本にしたらいつまでも親離れできません。親を見本にするのは12歳くらいまでのことなのです。
子供の頃に傷ついた人というのは、自分が育った家庭を、「壊れそうな家庭だから、それを守らなければならない」と本能的に思っているので、親は守る対象、あるいは怒らせてはいけない対象になっているのです。人格を真似する対象にはならないのです。
できれば、血縁関係のない人から選んだほうがいいです。
――でも私、友達がすごく少なくて、人付き合いの範囲もすごく狭いんですが、どう考えたらいいでしょう。
そういう場合には、小説の中の人物を見本にするという手があります。
小説の登場人物は架空の存在ですが、自分が人格を真似すべきモデルの人、としてしまってもいいのです。
あるいは、小説の中の登場人物じゃなくて、その小説を書いた作家でもいいですね。ある小説に感動した、こんな感動する物語を書ける人の人間の見方、考え方を真似したい、それで十分です。その作者の書いた本を次から次に読んで、その作者が書く人間像や、生き方を自分の中に入れようとするだけで、真似できるところがたくさんあります。
小説は誰でも手に入りやすいので、ぜひ、そういう方法で、自分が真似をしたい人格者を見つけてもらいたいですね。
蛇足かもしれませんが、私は京セラ創業者の稲盛和夫さんの利他的な考え方を尊敬しています。小説ではありませんが、生き方に関しての本を何冊も書かれているので、その本をじっくり読んで、稲盛さんの考え方を真似するのもいいと思います。
(2026年8月9日 掲載)





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