6月7日のなのはな

日に日に桃の実が大きくなり、ついに収穫の時期が近づいてきました。
桃の手入れも一つが終わるとまたすぐに次の段階への作業と流れていき、段階が進むごとに期待と緊張が増していきます。
○袋掛け
5月初めごろから、桃チームのみんなと一日中桃畑に出て摘果を進め、無事硬核期に入る前に予備摘果から本摘果まで3巡することができました。
摘果が終わると、次はすぐに袋掛けが始まります。
硬核期に入ると、桃の木はかなりデリケートになるので過度な刺激はNG。
摘果なんてもってのほか。ですが、袋掛けはあまり刺激を与えずに行うことができるので、硬核期の間でも精力的に進められます。
とは言っても、桃を前にするとかなり気は使います。
硬核期に入った桃の実は毛が立っていて、「繊細です」というオーラが放たれているのを感じます。
桃の木に触れるのを最小限にして、移動中も脚立や身体が枝や実に当たらないように気を付けながらの作業となります。
緊張もするしドキドキしますが、実が成熟して美味しい桃になるための大切な時期を間近で見ることができる喜びも感じられました。

袋掛けは桃作業の経験がある子からは、特に好きな作業だと話してくれる子が多くて人気の作業。
もちろん私もその一人で、大好きな桃の袋掛けが始まったことにわくわくした気持ちが募ります。
桃の実を袋で包んで、きゅっと口を縛る作業が、大切なプレゼントをラピングしているような気持ちになるのです。
今袋をかけた桃が、大きくなって、沢山の笑顔につながってくれたらいいな。そんな想いを抱きながら袋をかけていきました。

袋掛けの目的は主に病害虫の予防と、美しい外観を維持すること。
特に、なのはなでは白桃も育てているので、真っ白で綺麗な桃にするために日焼けは避けたい。
袋をかけることで強い日光から身を守り、なめらかな表面の美しい桃に仕上げることができます。
ポイントはしっかりと袋の口を閉じること。
閉じが甘いと風で飛ばされてしまったり、雨水が入ってきたりして逆に病気の原因となってしまいます。
綺麗で高品質の桃になるよう、ひとつひとつの実に丁寧に袋をかけています。
桃にかける袋の種類もいろいろ。
早生品種や晩成品種、肌が特にデリケートな品種など、なのはなでもそれぞれの桃の特徴によっていくつかの袋の種類を使い分けています。
袋によって、手触りや固さ、袋のかけ方が若干違ったりもするので、その変化によってお気に入りを見つけられるのも、ちょっとした面白く感じられるポイントのひとつです。

一本の木にかける袋の枚数は、木の大きさや樹勢によって変わってくるので一概には言えませんが、成木であれば大抵500~800枚ほどの袋をかけています。
袋の枚数は、木によって適切な枚数があり、昨年の袋掛け枚数を基準に調節をしながらかけています。
袋が多すぎると、栄養が分散して質が落ちたり桃同士でアタリが出たりしてしまう危険性があるし、逆に少なすぎると、実が肥大化してしまったりして核割れなどの恐れがあります。
多すぎても少なすぎても、桃の木にとってはよくありません。
前年の資料を基に、今年の木の状態を観察して、ベストな枚数を見極めているのです。
大きいものは1200枚以上かける木もあります。
今年は冬剪定をかなり大々的に行い、バッサリと大枝を切った気も多くあるので、袋掛けを始める前の計画立ての時点では、昨年よりも袋の枚数が減るかもしれないと話していました。
けれど実際に袋をかけてみると。桃の木も生きていて一年でも木全体が大きくなっているので、昨年と同じか昨年より多く袋をかける木がほとんどでした。

桃の木の生命力や伸び伸びと育つ力を感じられて、その木の元で作業をすると桃からパワーをもらっているように思えます。
なのはなで育てている桃の木は100本以上。
その桃の木全てに袋をかけるとしたら、推定枚数は今のところ54000枚。
無事に全てかけきるために、一日4000枚を目標として、桃メンバーのみんな集中して袋掛けに向かっています。
数字を聞けば途方もない枚数に感じますが、それぞれが集中して取り組み、桃の木に癒されメンバーに支えられながら進めていると、作業に夢中になっていて、いつの間にかたくさんの袋をかけることができています。
目標以上に袋をかけられる日が続き、順調にいけば良いペースで終わりそう。
そう思っていたところで、作業が停滞する、桃にとってはあまりうれしくない時期に突入してしまいました。

今は6月。そう、梅雨入りです。
袋掛けは雨で実が濡れてしまうとできなくなってしまいます。
雨で実が濡れた状態で袋をかけてしまうと、内部に湿気がこもり、皮が腐敗したり病気のリスクが高まったりするのです。
雨が上がった後も、実が完全に乾くまでは袋をかけられません。
雨がしとしと降ったり、上がっても雲が空を覆っていると、なかなか実が乾かず袋をかけられない日が続いたりしてもどかしくなったりもします。
ですが、その間に進められることをしっかりと進めて、晴れた日には全力で袋掛けを進めています。
特にふみちゃんやりなちゃん、さくらちゃんたち桃の主力メンバーでいてくれる子たちの袋をかける手つきが素早くて、袋が減るスピードが全然違うことに改めてすごさを感じます。

私も、良い実に良いスピードで、質もスピードも高く意識して、全体がテンポよく進んでいくことに貢献していける 一人でありたいなと思いました。
一度袋をかけたら、次のその桃の実を見ることができるのは収穫の時。
次に見た時は、もう立派な木熟し白桃に成長しているはず。
それを想うと、宝物をそっと包むような愛おしさや、未来の姿へのわくわくした気持ちでいっぱいになります。
確実に適切な位置の適切な実に、適切な枚数をかけていけるように、ここしかないという桃に袋をかけていきたいです。
○硬核期明け
ある日の作業始まりの時間に桃チームで集まると、さくらちゃんが笑顔で桃の実をもってきてくれていました。
なんだろうと不思議に思っていたのですが、わくわくするニュースが。
なのはなで一番早く収穫できる桃「はなよめ」の硬核期が空けているかもしれないとのこと。
本当に硬核期が空けているかどうかをみんなで確認しようといってくれていました。
少し先述しましたが、硬核期は桃の核(種)が固まる、桃にとってとても大切な時期。
胚の核が固まる、人間でいうと妊婦さんのようなデリケートで繊細な期間で、硬核期中に過度な水分変動や刺激があると変形果ができやすくなってしまいます。
木になるべく負担をかけないように、きれいで美味しい桃を育てるために、硬核期中は特に慎重に手入れをしていました。

硬核期が明けたかどうかの判断は、核の中にある子葉胚が縦径5㎜以上になっているかどうか。
それを確かめるためにさくらちゃんがとってきてくれた実を剪定ばさみで割って、種の中の子葉胚を取り出します。
パキッ! 鋏を入れた瞬間に音がして、胚が固くなってきているのを傍から見ても感じられました。
胚が固くなるのも硬核期が明けた特徴の一つ。
これは、硬核期あけていそう。そんな期待が膨らんでいきます。
透明で小さな子葉胚。ともすると見落としてしまいそうなものなのですが、桃の成長度合いを判断する大事な指標となるものです。
さくらちゃんが取り出して見せてくれた子葉胚は、見るからに大きかったです。


一応ものさしで測ってみると、5㎜は優に超えていました。
「硬核期、明けています!」そう宣言してくれたさくらちゃんの声と笑顔は鮮明に記憶に残っています。
愛おしい桃がまた一歩、収穫に近づいてきました。
繊細な硬核期が明けたからと言って、まだまだ油断はできません。
これからやらなければいけない手入れも残っているし、収穫直前には水を切るので一滴の水分も許されず、雨などの天候にもより一層気を付けなければいけなくなります。
みんなで手をかけてここまで大きく成長した桃を、最高の状態で多くの人に届けたいと改めて気が引き締まりました。
○修正摘果
硬核期が明けると、袋掛け以外にもやるべき作業が増えていきます。
その一つが修正摘果。
本摘果までにかなり着果数を絞っているのですが、実際に袋をかけるときにあまり良い実にはならないと判断したところや、実の数が多かったところは、ここですべて落として、木に残すのは袋をかけた本当に収穫する実だけにしていきます。
摘果は濡れていても問題なく行うことができるので、小雨や雨後の実が乾かない日が続く梅雨の時期でも進めることができます。
袋掛けを終えることができた木から順々に、硬核期が明けていることを確かめて修正摘果をしていきます。
この頃には、品種による成育差もかなりはっきりと分かるようになってきました。
早生品種、最初に収穫する「はなよめ」は特に、実が大きくなっています。
中にはテニスボールくらいになっているものも。
そして、実が纏うオーラが全く違うものになっていました。
つややかで、絹のようななめらかさが見て取れます。
これまでの桃の実は緑色をしていて小さくて、正直実を見ても実際に収穫される桃とあまりイメージが一致しなかったのですが、今でははっきりと桃だということが感じ取れるものに成長していました。
緑色が抜けてクリーム色になりかけていて、お尻の部分はピンクが差していて、何とも愛おしい姿です。
立派な樹熟し桃になる気配を漂わせている姿に、触れてはいけないような高貴さと愛おしさと、様々な感情が押し寄せてきます。
実が大きくなったので一つ摘果するだけでも、枝がふわっと持ち上がって、木の負担がかなり減っているのが伝わりました。
残った実に栄養を集中させて、より良い桃へと成長してくれたらいいなと思います。
そして摘果した桃も一部は、しなこちゃんを中心に加工をしてくれているみんなが若桃のコンポートにしてくれます。
そのため、今まではそのまま地面に落としていましたが、収穫かごをもって、大切に摘んでいきます。
大きくなるにつれ、摘果するのが心苦しいような気もしてしまっていたのですが、この実も無駄にはならないと思うと、とたんに晴れやかな気持ちになりました。
修正摘果で落としてしまうけれど、ここまで桃チームのみんなと手をかけて大きく育った摘果桃。
それを美味しく変身させられることが本当に嬉しくて有難いことだなと感じました。
○ユスラウメ
桃畑で、とある果樹を桃に先駆けて収穫しました。
奥桃畑で可愛らしく実っていたユスラウメです。
漢字では「梅桃」と表記するそうで、桃の台木にも使われる、桃と同じバラ科サクラ属の落葉低木。
奥桃畑には赤色のユスラウメと白色のユスラウメがあって、可愛らしい小さな実をつけていました。
赤いユスラウメはまるでサクランボのよう。

一応桃チームで気にかけていて、ユスラウメが日に日に真紅色に染まっていく姿や艶やかさが増す姿を見て、(ユスラウメがもう収穫してって言ってる! 取らなきゃ!)という思いに駆られていました。
そんな思いを度々話していると、先日袋掛けをしているときに急遽さくらちゃんから、「何人かでユスラウメを収穫してきてほしい」との連絡が。
ドライバーのつきちゃんとあと誰が行くかという話の流れになったとき、私が収穫したいと話したことを覚えてくれていて、つきちゃんが真っ先に「ゆうはちゃん行く?!」と声をかけてくれました。
返事はもちろん「行きます!」。
つきちゃんが声をかけてくれたこと、念願のユスラウメを収穫しに行けることがすごく嬉しかったです。
他に行きたい人で声をかけると、つばめちゃんやみゆちゃんと、続々と声を上げてくれて、結果的には多人数で収穫へ。

小さな低木なのでそんなにたくさん人手がいるわけではないのですが、行きたい人みんなで収穫に行けることに、よりはずんだ心になりました。
奥桃畑に着くと、沢山の実をつけたユスラウメが。
実の赤と白、そして葉の緑の彩がすごく綺麗でした。
どれもよく熟れていて、全収穫できそうです。
手で簡単に摘むことができて、ポロポロと取れていくのがすごく楽しい。
夢中になって収穫しているとあっという間に木から実がなくなって、すべての実をとりきることができました。
キラキラと輝く赤と白の宝石をたくさん収穫することができて嬉しかったです。

台所に届けるとまことちゃんが喜んで受け取ってくれて、早速その日の夕食につけてくれました。
暑くなってきたこの頃に身体が欲していたような甘酸っぱさが染み渡ります。
みんながコメントで「可愛い」「美味しい」と言ってくれて、みんなでユスラウメをいただけたことが嬉しかったです。

ユスラウメは収穫を終えましたが、桃はこれから。
桃畑に足を運ぶたびに桃の実の成長を感じて、収穫できる日も目前に迫ってきています。
今年は全体的に生育が早く、桃の収穫も昨年よりかなり早くなりそうだと教えてもらいました。
よしえちゃんの結婚式に「はなよめ」をプレゼントできるかもしれないと思うとすごく嬉しいですが、いよいよ桃の シーズンが本格的に始まると思うと緊張も大きくなります。
まだまだやるべき手入れも残っているので、最後までしっかりと心を込めて手入れをして、最高の桃を収穫できたらいいなと思います。
(ゆうは)
