10月9日(木)「いい版画をつくりたい! 刷りを重ねて、重ねて……藤井先生の木版画教室 & 永禮さんとのモチ米脱穀作業 & 段々畑のニンニクたち」

10月9日のなのはな

 版画教室、今期の最終回! 今回で作品ができるように、刷りを重ねていきました。
 今日で本当に完成させることができるのだろうか、という若干の不安を感じていましたが、良いものを作りたい、と気持ちを目の前の版画に集中させました。

 

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 前回刷った時は、水分量が難しくて、にじんだような刷りになってしまったり、色が薄すぎたり、と良いものを刷ることができませんでした。
 そんな前回、板に含ませる水分量や絵の具の溶き具合が大切になること。また、板だけでなく刷毛にも水分が持っていかれるため、しっかりと湿らせないといけないことを藤井先生が教えてくださいました。
 湿らせようと思うと、水をかけすぎてしまって程よい加減が難しかったです。時間が経って板が乾き、水が少なすぎるとパサついた、濃すぎる刷りになってしまいます。
 藤井先生が刷ってくださった時に、板を触らせてもらったり、目で水分量を見たりして、少しずつ掴んでいきました。

 

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 そして今回、水が多くなりすぎないことを意識して最初の色を刷ってみると、1枚目、2枚目、と自分の納得のいくものが刷れました! 今まではゴマ刷りになって、刷った後につぶつぶがあってしまったけれど、今回は今までの中で一番なめらかな刷りができました。今までの作品と全然違って、刷り上がったものを見た時は、嬉しかったです。
 灰色だけでも6枚くらい刷ったのですが、結局納得がいったものは最初の1,2枚目のみでした。同じように刷ろうと思っても、できないのが難しいけれど、面白いところだなと思います。

 

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 次に青色を刷っていきました。灰色が上手く刷れたものの上に新たに色を重ねるのがとても怖かったです。自分の納得のいっている作品が上手く刷れるかどきどきしました。刷り終わって、板からはがしてみると……上手く刷れました! 綺麗に色が乗っていて、完成が近づいてきていました。

 

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 先生が各色の最後の刷りの時に、刷ってくださっていたのですが、その青色が濃くて、薄い灰色と青のコントラストがとても綺麗でした。
 濃い青の方が綺麗で、二度刷りをするか否か、とても迷いました。今上手くいっているものが、二度刷りでどうなってしまうか分からない。でも、理想は濃い青。二度刷りが上手くできて、よりよい作品になるかもしれない。悩みに悩んで、二度刷りすることにしました。
 刷ってみると……、がーん。汚れがついてしまっていました。しかも、黒で隠れるところならまだ修正が効くものの、白い顔が来る部分でした。ショックでショックで、せっかくいいものができていたのにと悔しくて、心が折れました。時間を見ると、20時。版画教室が終わるまで残り1時間しかありませんでした。もう、完成させることができない、と思ったけれど、ここでやめたら作品すらできないし、とりあえず最後の黒まで刷ってみようと思いました。

 黒を刷ってみても、やっぱり汚れはカバーできなくて、気持ちがズドーンとなっていました。泣いていた私に、藤井先生が泣くな泣くなと言ってくださって、刷りが一番難しいことや、藤井先生が作品を刷られる時も、全部の色が自分の納得のいった作品はなかなかないと話してくださいました。
 この色の刷りはダメだけど、他の色の刷りは上手くできた、というものがそれぞれであって、全部同じような刷りというものはないことを教えてくださいました。

 

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 先生が励ましてくださって、灰色の段階で、納得がいかずはじいていたものも刷ってみることにしました。
 失敗してぶれたりしたものもありましたが、黒の刷りが上手くいった! など、刷りを重ねていくうちにだんだん刷り方が分かっていったのが楽しかったです。
 先生が刷る時の力の入れ方を教えてくださって、その通りに刷ってみると、今までとは違った密度が濃い、荒くなくて、なめらかな刷りができました。先生が教えてくださったことがありがたくて嬉しかったです。

 

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 刷っていると、最初の作品と比べて上達したのが分かって、より楽しさが増しました。全色刷ってみると、色の配分が上手くいっているもの、刷りが甘かったもの、色々ありましたが、全体としてまとまっているものもあり、作品を選んでいきました。2枚ずつ照らし合わせて、どちらの方が良いか選んでいく時間が、凄く暖かかったです。 

 

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 版画教室が始まって、1か月してから私は題材を変えゼロからになりましたが、やっと完成の段階まで来ることができたんだと思いました。題材を変えて、凄く時間がかかってしまったのに、藤井先生が、やりたいという気持ちを受け入れてくださって、最後まで丁寧に教えてくださったことが本当にありがたかったです。先生が作ってくださる暖かい空気の版画教室がとても楽しくて、心が温まる癒しの時間でした。

 最後に、先生が作ってくださった名前のハンコを見せていただきました。
 私の漢字は画数が多くて、細かいのですが、先生が彫ってくださいました。繊細な細い線が凄く綺麗で、彫っていただけたことが本当にありがたかったです。私の宝ものだなぁと思います。

 

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〈藤井先生が篆刻で作ってくださった印です〉

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 今回厳選した何枚かから、日を置いてもう一度作品を決めます。サインを書いて、先生が彫ってくださったハンコを捺して、作品が完成する時が待ち遠しいです!

(あや)

 

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〈藤井先生が、みんなの作った木版画を入れる額も選んでくださいました!!〉

 

***

 

 ――「今から、みんなで手刈りをしたモチ米の脱穀をします! 今シーズン、最後の稲作に関わる作業です!」
 待ちに待ったモチ米の脱穀、本日、光田んぼ下で開催です!

 天候は晴れ、晴れ、晴れ!
 真っ青な空に、木々や草木の茂る緑。その下に煌々と光る、はぜ干しされた黄金色の稲穂の島々。
 上から見下ろす光田んぼ下の景色は、まさに秋ぴったり。何度眺めても圧巻で、うっとりしてしまう。
 なのはなで見られるはぜ干しの光景が、わたしは大好きです。

 

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 そしてそれと同じくらい好きなのが、脱穀作業。
 実はモチ米の脱穀は先日の金曜日に行われる予定だったのですが、雨であいにくの延期。
 わたしはその日仕事があって、「脱穀したかったなぁ」と思っていたのですが、なんとその願いが届いたかのように、お休みの今日、脱穀のリベンジが行われることになり、作業メンバーに呼ばれたときは、跳び上がるくらい嬉しかったです。

 脱穀といえば、永禮さん! 本日も永禮さんが来てくださり、コンバインを操作してくださいました。
 回送車にコンバインを乗せて、光田んぼへ出発。光田んぼまでの細い小径も、永禮さんの見事な運転さばきで、安全に辿り着きました。

 

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 はぜ干しされたモチ米は、なる足が立つスパンで見ると、全10スパン。
 わたしがなる足から稲束を1束ずつ取り、永禮さんへ手渡して、永禮さんがコンバインへ流し込む……。

 早速スタートしたと思われた脱穀ですが、開始3分でハプニングが……!
 コンバインの後ろから排出されるはずの藁が詰まってしまった。
 慌ててエンジンを止めて、詰まった藁を取り除きましたが、がっちがちに挟まってしまった藁は、なかなか取れません……。
「今年の稲刈りは大苦戦したけれど、最後の最後までこんなことになってしまうの……」と半泣きのちあきちゃんと、「いきなりかぁ」とこちらも残念そうな永禮さん。
 3人で腰を据えて、しばらく詰まった藁と戦って、ようやく詰まりが解消されました。

 再びエンジンをかけると、今度こそ慎重に。
 ちあきちゃんが排出口の後ろに立ってくれて、一回一回藁が砕かれて排出されているかの確認と、細かく砕かれた藁の山がコンバインの足元に溜まらないように熊手で取り除いてくれることで、そこからは機械が一度も止まることなく、最後の最後まで順調に動き続けてくれました。

 

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 永禮さんとわたしのコンビもだんだんと磨きがかかってきました。
 なる足にまたがる稲束を右手で掴み、くっと力を込めて一瞬で握るタイミングと同時に、左手を置き台のようにして軽く添え、そのまま永禮さんの両腕のなかへふわっと投げ入れる。
 永禮さんは軽くキャッチすると、その向きのままコンバインへ投入。
 コツは、「ふわっと」。稲束がなる足から浮かび上がる反動を上手に利用すると、軽い力で掴み取ることができて、個人的にやりやすいポイントでした。
 テンポが良いと、1秒間に1束くらいのペースで、「はいっ」「はいっ」と最高のリズム感。リズムができてくると、身体が自然と動いて、永禮さんとの阿吽の呼吸はぴったり。「だんだん要領が掴めてきたね」と、永禮さんからも笑顔が溢れます。
 10スパンもあると思っていたのに、見る見る1スパン、2スパン、3スパン……と進んでいき、もう勢いが止まらない! という楽しさでした。

 4スパン目に突入したところで、コンバインからブザー音。こちらは異常を知らせる音ではなく、「籾がいっぱいになりましたよ」の嬉しい合図。
 ハーベスタの袋を持ってきて、コンバインのタンクから移し替えました。
 タンクから伸びる筒から溢れ出すように出てくる、モチ米の籾はぷっくりしていて、見るからに大粒! ハーベスタの袋に7~8割ほど入った籾はずっしりとしていて、その重たさからも満たされた幸福な気持ちになりました。
 新米になる前の、まだ籾に包まれた状態のお米の香ばしい甘い香りが胸いっぱいに広がって、(なんて良い香りなんだ!)と思いました。

 再び脱穀が再開し、その後も3スパンが終わるタイミングでブザー音が鳴り、籾を移し替えました。
 永禮さん、ちあきちゃん、わたしの各ポジションの動きもさらに磨きがかかり、少しでも速くするコツが見えてきました。
 台風の影響か、時折、風が吹きつけました。太陽の照りつけは厳しいけれど、冷たい風が心地よく感じました。

 最後の10スパン目に入りました。確実にコンバインは前進し、コンバインが前進するのと同時に、当然ですが稲束の数は減っていきます。
 残りのメートル数が見えてきて、稲束の数も数えられるくらいになってくると、「脱穀完了!」という喜びと、それ以上に、(あぁ、もうちょっとで終わってしまう……!)という寂しい気持ちになりました。
 5束、4束、3束、2束………1束。
「最後です」と、永禮さんに手渡して、最後の1束がコンバインに流れていくのを見送りました。
 そしてとうとう、「脱穀、完了!!!」

 機械も最初のハプニングを除いて、最後まで順調に動き続けてくれました。
 ずっと後ろについて排出口の藁を取り除いてくれていた、ちあきちゃんも大変だったと思うけれど、「終わったね」と一緒に喜んでくれたことが嬉しかったです。

 

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 最後にタンクに溜まった籾を袋へ移し替えました。
 わたしたちの想像以上に溜まった籾。なんと、用意した袋がぴったり……!
 その数、ハーベスタの袋数で35袋!
 なのはなの籾摺り機倉庫にある乾燥機の前に大きな山ができあがりました。

 昼食を挟んで、午後からは光田んぼ下のなる足の解体と回収をしました。
 地面に深く差し込まれたなる足。両端3本、中2本を支点に、地面に踏ん張るように立つ様は一見心細く見えるけれど、なる足は1本1本が見た目以上に重たく頑丈で、これだからあの大量の稲が干されても折れずに、何日間も支えていることができるのだなと思いました。
 運びやすいように、2本足は10セットで1束に、3本足は6セットで1束にしてPPロープでくくり、トラックまで運び込みました。
 わたしとちあきちゃん2人がかりで持ってもかなり重たい束を、永禮さんは1人で肩にかついで楽々持ち上げて運んでいる姿がとても力強くて、ちあきちゃんと口をあんぐり開けて、「すごい」と驚きっぱなしでした。

 何でもそうですが、解体は一瞬。
 朝の美しかった風景から、はぜ干しされたモチ米がなくなり、さらになる足まで回収された光田んぼが、(あれ、こんなに広かったっけ)と感じるほど、がらんとして見えて、何だか冬が来るような寂しい感情を覚えました。
 でもきっと、またすぐに田んぼの季節は巡ってくるのだろうな。

 永禮さんの運転するダンプに乗って、永禮さんとちあきちゃんと3人で田んぼを後にしました。
 今年の稲刈りは、実入りが良かったために稲が倒伏したり、雨天にも影響されて、長期間に渡る大変な稲刈りになってしまいましたが、本日のモチ米の脱穀を終えて、ようやく完了です。
 最後の最後まで永禮さんが快くコンバインを出し、笑顔で助けてくださったことで無事に乗り越えることができたと思います。
 永禮さん、ありがとうございました!

 早速、今年収穫できたミルキークイーンの新米をいただいていますが、モチ米が美味しい料理に変化して、またみんなといただける日が楽しみだなと思います。

(るりこ)

 

***

 

 この一片、一片が大きく育ち、たくさん増えますように。
 今日はニンニクの植え付けをしました。

 畝立てをするところからのスタート。
 コム2、コム2奥、コム3、第2鉄塔。
 次々とニンニクが来る畑の畝を立てていきます。
 みんなでするとあっという間。
 畑にもよりますが土がふかふかなところが多くて、さくさくと土を上げられるのが気持ちよかったです。

 

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 ニンニクはベッド畝。
 綺麗な平らにできると嬉しくて、ついついやめ時が分からなくなってしまうのですが、スピードと質を考えてテンポよく進めていきます。
 畑には、5歳のゆりちゃん、2歳のおとちゃんもいてくれて、土に触れながら小さな身体でお手伝いをしてくれる姿がほほえましくてあたたかい気持ちになりました。
 段々畑のうち、下の畑から畝を立てていったので、畝立ての最後にはすべての畑を見渡すことができました。
 青空の下に綺麗な畝が整然と並んでいる絶景。
 ニンニクが大好きな私は、ここの全面にニンニクが植わるのかと思うと、わくわくした気持ちがあふれてきました。

 

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 畝が完成するといよいよ植え付け。
 植え付けというと苗を植えるイメージがあったのですが、ニンニクは鱗茎と呼ばれる可食部分の一片を植えていきます。
 ニンニク置き部隊と植え付け部隊に分かれて進めたのですが畝の上にちょこんと置かれたニンニクが並んでいてすごくかわいい。
「かわいい! きのこみたい!」そんな声が飛び交いました。

 

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 30センチ間隔、2条植え。
 最初だけ物差しを使い、あとは各々の感覚でニンニクにとって最適な位置に置いていきます。
 その後ろから手スコで少し掘って5センチくらい土をかぶせていきます。
 浅すぎて日の光が当たってしまってもだめだし、深すぎても芽が出ない。
 丁度いい塩梅を探るのが難しい。
 置き部隊と植え付け部隊それぞれが連携を取りつつ、一番いい形で植えられるよう感覚を研ぎ澄まして進めていきました。
 そして無事、4枚弱の畑に植えきることができました。
 一片ずつ植えたニンニクが大きくなって、たくさん数を増やしてくれるのだと思うと夢が広がるような気持ちになりました。
 広い畑。このすべてにニンニクが育つなんて幸せの畑。
 大好きなみんなと大好きな野菜の植え付けをできたことがすごく嬉しかったです。

 

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 予定よりニンニクが少しだけ足りなくなってしまい、名残惜しくて、
「もっとたくさん植えたかったなぁ。」
 とつぶやくと、
「もうたくさん植わっているよ」
 と突っ込まれてしまいました。
 なのはなにいると「たくさん」の基準が変わります。
 いままでの「たくさん」は少しに感じ、もっとスケールの大きな数を「たくさん」と感じるようになりました。
 それがいいことかはわかりませんが、基準が変わるほどの農作物を育てられる技術を確立させている先輩方や今のなのはなのみんなとお父さんが本当にすごいなと思います。
 そしてその中で一緒に畑を耕し心を耕す機会をいただけていることがすごく有難いなと感じています。

 

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 大きく育ってくれますように。
 祈るような願いをかなえられるように、これからの手入れもしっかり頑張りたいです。
 そして今、記事を書いている手からは、ほのかにニンニクのいい香りが。
 今夜は大好きな香りを感じながらぐっすりいい夢が見られそうです。

(ゆうは)