10月2日(木)「『レストラン・パトゥ』の山口さんとご友人をお迎えして」

10月2日のなのはな

 私たちは、回復へ繋がるプログラムの1つとして、農業を活動の1つの柱としています。

 その中でも、夏に本番を迎える「桃」、私たちの「樹熟し白桃」は、他のものには替えられない、なのはなファミリーの大切な作物です。

 桃の栽培を通して、私たちは桃からたくさんの力をもらっていることを感じます。静かに堂々と立つ桃の樹の佇まい。桃の実の気品溢れる美しさ。人の手と気持ちをかけなければ、自然には育たない難しさ。大きな自然を相手に、謙虚な姿勢を忘れずに、前を向くこと。何よりも繊細で、大規模で、みんなで一丸となって初めて、桃を守ることのできる大きな力が生まれること。人は、1人ではなく、仲間が必要で、仲間と共に生きていくのだということ。

 生き辛さに苦しんで来た中で、抜け落ちてしまった大切な心を、桃の樹が教えてくれます。

 そして桃は、私たちの気持ちに応えてくれます。どこまでも甘く、優しく、美しく、その姿で応えてくれます。

 

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 今日は、そんな私たちの桃を、長年ずっとご贔屓にして下さり、お取引をいただいている、東京のレストラン『レストラン パトゥ』のシェフの山口さんとご友人の方が、なのはなファミリーに来て下さいました。そして、お店のメニューと同じ桃のスープを、私たち全員のために作って下さるという信じられないことを、実現していただいたのです!

 パトゥさんとご縁をいただいたのは、随分と前のことになります。まだ、桃畑の規模が今の半分もなく、桃をお届けする農業法人としても、実績も経験もなく生まれ立ての小さな頃から、しかし、桃は他にどこにもない最高の樹熟し白桃であるという確信と、この桃を、美味しい桃を求めている人にお届けしたい、という想いだけでした。それでも最初から、山口さんは私たちの桃を好きになってくださり、評価してくださり、信頼してくださいました。それから毎年、メールやお電話で桃のご注文をいただき、ずっとご贔屓にしていただいて来ました。

 今年の桃が終わる9月の末に、なのはなファミリーにお越しいただけることをご連絡いただいた時から、とてもドキドキして、楽しみな気持ちでいっぱいでした。なのはなファミリーのこと、私たちのことを知っていただきたい。これもあれも見ていただきたい。次から次へとその気持ちが溢れてきました。

 農業法人なのはなファミリー企画株式会社としての、桃のお取引ということでご縁をいただいた山口さんは、勿論、私たちが桃を作っているということしかご存じありません。お電話だけで、お会いしたこともありません。しかし私は、山口さんには、桃だけでなく、きっとなのはなファミリーの気持ちが伝わる、自分たちの生きる気持ちを受け取っていただけると信じていました。

 

 山口さんは、いつも私たちと同じように、同じ気持ちで、桃のことを大切に思って下さっていることを感じてきました。1玉の桃が、その桃が本来持っている美味しさ、美しさに辿り着けるまでの長い道のり、人間の力では及ばない自然の力を前に、時にはどうすることもできない状況の中で、それでも、自分たちが桃のためにできることを精一杯やろう、桃の力を信じて、祈るような気持ちで、前へ進もう、全力で桃を守ろうとする、背景にある見えない気持ちの部分まで、見てもらい、理解していただいていることを、いつも感じてきました。

 そのことが、とてもありがたく、嬉しく、いつか山口さんにお会いしたいとずっと思っていました。

 そして、今日、その願いが突然叶ったのです!

 

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 初めに、桃畑をご覧いただきました。開墾26アール、17アールと名付けている2枚の桃畑をご案内したときに、ちょうどお取引をいただいた頃には、この2枚の畑を桃畑にするために、みんなで開墾して、畑全面に苗木を植えたばかりだったと思いました。その苗木だった桃が、今は立派な成木として大きく育ち、たくさんの良い実をつけていることに、桃の樹の力を感じました。

 道中、桃だけでなく、なのはなで作っている他の野菜や果物のご紹介や、稲がはぜ干しされている景色もご覧いただき、あっという間に時間が過ぎていきました。

 まだまだご紹介したいところはあるものの、昼食の時間が近づいており、古吉野なのはなへ戻りました。

 今から、シェフの山口さんが、ご厚意でなのはなのみんなに桃のスープを作ってくださいます!!

 私たちも、桃の皮むきやカットを一緒にさせていただきました。

 

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 山口さんが毎年お使いになられる桃は、果肉が白い桃をお好みで、いくつかの品種に限定しております。

 今季最後の桃である白皇は、糖度がとても高く、基本的に果肉も白い品種でお使いいただける品種なのですが、種周りの中央部分が赤く色づく品種であるため、その部分を、丁寧に切り分けていきました。

 

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 味だけでなく、料理は見た目の色も大事であること、温度もとても大事にされていて、温度でも味が変わってしまうこと、1番ベストの温度を保ったまますぐに出すことを話して下さいました。

 桃も1玉1玉、その桃の本当に1番美味しいベストの状態は、きっと極僅かな短い時間なのだと思います。山口さんは、桃の特性や状態に合わせて、桃を見て、見極めて、1番良い状態で調理して下さり、お客様に1番美味しく召し上がっていただけるのだと思いました。

 

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 山口さんが調理をして下さる姿は、鮮やかに速いのに全てがとても丁寧で、食材に対しても、食べられる方に対しても、本当にたくさんの気持ちを注いでくださっているのだと感じました。山口さんの周りの空気が、洗練されて透き通っていて、それなのにとても優しくて、暖かくて、とてもかっこ良かったです。

 

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 出来立ての桃のスープを、すぐに食堂に運び配膳させてもらいました。最後の仕上げが、とっても綺麗で、まるで桃畑がスープの中に見えるようでした。

 みんなで、山口さんが作って下さった、最高級の桃のスープをいただきました。

 

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 山口さんの桃のスープには、とても優しい、包み込まれるような安心が秘められているようで、不思議な力を感じました。言葉にはならないけれど、美味しいというだけの感じ方を通り越したような、料理を食べることで感じる初めての気持ちを感じるように思いました。 

 

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 山口さんのスープに、桃の甘みと爽やかな酸っぱさに、この夏、みんなで駆け抜けた景色が目の前に広がって、胸がいっぱいになった。

 今までに知ったことがない味で、甘さと酸味と苦みと、それらが引き出されているまさに桃のスープで、本当に凄かった、美味しかった。

 私たちの桃を待って下さっている方がいることが、本当にありがたく、大きな力をいただいた。

 幸せだなと感じた。

 1人ひとりが、山口さんの桃のスープに気持ちを動かされるような、気付かされるような、癒していただけるような、暖かく幸せな気持ちをいただきました。

 山口さんは、いつもは8人のお客様のために作っているのを、今日は50人の方に作るということで、本当に同じ味にできるのか心配でしたと、笑って言ってくださいました。そして、作っていて幸せな気持ちになりましたと、言ってくださいました。

 山口さんの桃のスープをみんなでいただいたその時間、その空間が、暖かくて、安心と幸せが満ちたひと時だと感じました。

 

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 桃を通じて、このような素敵な出会いとご縁をいただけたことが、本当に奇跡のように嬉しいことだと感じました。

 摂食障害になった私たちは、普通に食べることが難しくなってしまい、食べる喜びを奪われてしまったのだと思いました。

 食べるということは、人が生きていく上で、根っこの土台にある大切なことであるのだと思いました。食べる喜びと安心を失ったことは、本能の部分で、生きる喜びと安心を失ったことになってしまうのだと、深いところで感じました。

 作って下さる方の心のこもった美味しい料理は、理屈じゃないところで、本来人間に備わっている、食べる喜びに届き、生きる喜びに響くのだと思いました。

 山口さんが作ってくださった桃のスープは、ありのままの、人としての真っ直ぐな気持ち、良く生きたいと願う本来の姿、食べることに対する姿勢を、安心して正しい場所に戻してもらえるような、そんな不思議な力を、深く感じました。

 

 

 昼食の後、演奏とダンスを見ていただきました。

 山口さんへの感謝の気持ちと、喜びの気持ち。真面目に、逃げずに、一生懸命生きていく私たちの気持ちを精一杯籠めて、踊り、演奏しました。優しさと強さを合わせ持った桃のように、山口さんの桃のスープのように、美しく、真っ直ぐに、強く、優しくありたいと思いました。

 山口さんもご友人の方も、真剣に見て下さり、同じ空気でいて下さり、気持ちを受け取って下さったことを感じました。本当に、嬉しかったです。

 

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 演奏の後、この夏の桃メンバーでご挨拶に行きました。山口さんは、桃がフルーツキャップに包まれている姿が、いつも本当に丁寧で気持ちが籠っていることを感じますと言ってくださいました。また、年々、試行錯誤しながら少しずつ進化させている梱包も、全部気付いてますよと笑顔で言ってくださって、繊細で扱いが難しい桃を、どうにかして最後まで奇麗に無事にお届けしたいという自分たちの想いも分かって下さっていて、お気持ちが嬉しかったです。

 山口さんは帰られる時に、まさかこんな展開になるとは思っていなかった、来てよかったですと、言ってくださいました。

 私たちも、まさかこんな凄いことが起こるなんて、山口さんが来て下さって、みんなでご挨拶ができて、今年最後の桃を、山口さんの手によって最高級の桃のスープにしていただき、とても光栄で幸せな形でみんなでいただけるなんて、想像もつかない信じられないような出来事でした。

 本当に、優しく、幸せな気持ちに包まれた、暖かなひと時でした。

 

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 山口さんにお会いできたことが、とても嬉しかったです。

 山口さんの桃のスープにいただいた気持ち。山口さんが物事に向かう優しくて真っ直ぐなお姿。短い時間の中で、なのはなファミリーの気持ちを、精一杯音楽にして表現して、しっかりと受け取っていただけたこと。

 その喜びや希望を忘れずに、そして同じことがまだ見ぬたくさんの方に広がることを信じて、毎日を謙虚な気持ちで、一歩ずつ、大切に、真剣に生きていきます。

(ちさと)