9月20日のなのはな

音楽合宿第3弾。
今日の午前は、全体演奏『オペラ座の怪人』を「グループ練習(!?)」するのだそう。
黒板に貼り出された、グループの振り分けが書かれた紙には、いろんな楽器が集まったチームが3グループ作られています。そして、赤文字で大きく、グループ練習の目的も書かれています。
「どのパートが主旋律かをわかる」
「自分のパートが、メロディをどうやって支えているかの役割をわかる」
そのための練習。

わたしは、えつこちゃんリーダーの、アルトサックス、トロンボーン、トランペットが集まるグループで、どういう組み合わせで、どうやって目的が達成できるようになっているのか、疑問とワクワクを胸に集合時間の12時に体育館へ向かいました。
体育館につくと、さとみちゃんがいてくれて、まずはみんなで楽譜の半分ほどまでを演奏してみました。
3種類の楽器だけで演奏してみると、トランペットが誰とハーモニーを作っているのか、誰と掛け合いをしているのかが良くわかりました。
さらに、新発見で面白かったのは、わたしたちがトロンボーンが主旋律の所で、トロンボーンと掛け合いをしているのですが、そこではさらに、アルトサックスが、裏メロを吹いているトランペットの支えをしていて、主旋律を支える人がいることは知っていたけれど、支えの、支え、もっともっと、縁の下の力持ちの役割をしている人もいることを知って、この新しい「グループ練習」の効果を感じました。
自分が主旋律なのか、裏メロなのか、裏メロだとして、どう主旋律を支えているか、どう支えるのが理想形なのか、さとみちゃんとの練習を通して、知ることが出来ました。
そして、なのはなトランペット吹きの今年の最大の課題、スラーの小節も練習方法が確立されました。
「最高の形を作ってから、テンポを速める」。
まずは、一音ずつ、その一音を最高の形で全員で合わせて、あったら二音、三音と音数を増やし、スローテンポで、最高の形を作り、徐々に原曲のスピードに合わせて、ステージで実際に、最高の形で演奏できるようにしていく。
もこもこして聞きにくい、ろれつの回らないようなスラーが、少しずつだけど確実に良くなっていくのを実感したとき、希望を感じました。

そして、午後からは、お父さんお母さん、お客さん役としてひでゆきさんもいてくださっての、全員での練習。
(さとみちゃんとの練習の成果を発揮するぞ!)
全員から、その意思を感じ、それぞれがそれぞれの役割を自覚して演奏しているからこそ感じる、まとまり感がありました。

お父さんは、「一週間ですごく良くなったね!」と褒めてくださり、「もっと強弱を付けられたらいいね」と教えてくださりました。
そこからは強弱をつける練習。
わたしたちはアーティスト。メロディアスにオペラ座の怪人を演奏出来るはず!
お父さん指導の元、全員が同じところを目指して、何度も演奏してみます。
お父さんは「今は、透明で綺麗な演奏になっている。でも、そんなのは、なのはなファミリーじゃない!」
わたしは、これまで、良い演奏とは、綺麗な音で正しく演奏することだと思っていましたが、お父さんは、それではいけないと言いました。
「破綻がないといけない。破綻がないと面白くない。」
「これから、それぞれのパートで破綻させるところを作ってください」


大きい音は、思いっきり大きく。小さいと音は、思いっきり小さく。
パート内で意思疎通をして、ラスト一回の演奏。
メインテーマは、思いっきり大きく。一瞬のブレスで、いつもよりずっと深く大きく息を吸って、思いっきり、パーンっとトランペットらしい華やかな音で、トロンボーンに繋ぎます。掛け合いの相手は、わたしたちトランペットとサックス。
(え? 吹いてるの?)と、突っ込みたいくらいに、全体合奏の中では蚊の鳴くような小さな音で、切なさを表現します。
サックスの優雅なメロディーを切り裂くようにして、パンッパーンっとトランペットが入ってくる。

わたしたちは、100パーセント真面目に演奏していますが、指揮を振るさとみちゃんの顔を見ると、あれ、ちょっとニヤッとしている。
(そのニヤッはどういう意味なんだろう。良いのか、悪いのか)
チラッとそういうことを思ったりしながらも、自分が表現できる全力で自分のパートを破綻させてみた結果……。

「なのはならしい、演奏になったねぇ‼」とお父さんが、ニカーッと笑って感想を言って下さり、さとみちゃんも「すごく聞きやすくなったと思います」と言ってくれて、ひでゆきさんも「すごく良かったです」と、やや圧倒され気味でしたが、教えてくださって、どこか破綻しているその生々しい感じが、面白さに繋がることを知りました。


とはいっても、今日で完成ではありません。
これから、今日、確立された練習方法で音色をブラッシュアップし、破綻をより上手に、効果的に作っていきます。
12月のコンサートまでに、もっともっと、密度濃く、この一曲をみんなと極めていく時間を大事に、練習を積み重ねていきたいです!
(なつみ)
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午後からは『ボヘミアンラプソディ』のコーラス練習。
ここでも、お父さんお母さんがコーラスを見てくれました。
まず始めに1曲通して歌ってみて、次はイントロから分解して、お父さんがアドバイスをくれました。
「ソプラノの高い声は、つるっつるテラテラに響かせて」
「アルトは人数が多いから、もっと声量が欲しい。喉の奥から声を出す」

お父さんがそれぞれのパートに伝えていってくださいました。わたしはメゾソプラノ。メゾソプラノは主旋律、フレディと同じ音を歌う部分が多いです。
比較的音もそこまで高くはないので出しやすいのですが、出しやすい分だけ地声になってしまってしまいがちでした。浅く、ガサガサした声になってしまっているな、と感じながらも、自分ではどう直していくべきか分からないまま、今日まで歌い続けてしまっていました。

「息を思い切り吸って。腹筋にしっかり力を入れる」
「口をしっかり、喉の奥を開けて、目線は時計の上!」
お父さんが話してくれる言葉をひとつひとつ意識して、メゾソプラノのみんなと声を出してみると……。全然違う‼

今までも頑張って声を出していたつもりだったのですが、今までの何倍も大きく、響きのある声が、図書館の全体に広がっていました。喉の奥から、思い切り口を開けて歌うことで、今まで出しにくいと感じていた低音も、音が当てられるようになりました。
自分の声が分からない。みんなの中に溶け込んで、ひとつの音になっていることが、とても気持ちが良くて、嬉しかったです。
お父さんが教えてくださるアドバイスには驚きの連続でした。
アルトのパートでは、低い音で『Bsmillah!』と歌うところがあります。もっと力強く、野太い声にしたい!ということで、お父さんが伝えてくださった改善策は……。

「足を開いて、腰を前かがみに。こぶしを握りしめて、顔は下を向く。そして『Bismillah!』と出すんだ!」
図書館に居る全員が、思わず大爆笑。けれど、その姿勢で、腰低く、ぎゅっとこぶしを握り締めて立つアルトのみんなが、とてもたくましく見えました。これなら力強い声が出そうだなあ、と歌う前から確信できました。

『Bsmillah!』。
体勢だけでこんなに変わってしまうなんて……。歌う声が、どんどん男性らしさのある、強くどっしりとした声になっていくのが分かりました、お父さんも同じ姿勢を取って、一緒に声を出してくださって、わたしも『Bsillah!』が格好良くて好きなフレーズになりました。
ソプラノのパートでは、1番高い音でシ♭の音を歌っています。キーンとするような高い音、なかなかその音通りに正しく当てるのが難しいです。
お父さんは、「まずはその音よりも3つくらい低い音から練習して、出せるようにする。それで喉を慣れさせてからその音を練習する」
と教えてくださいました。
課題である『me』というフレーズを、ピアノに合わせて少しずつ音を上げながら練習していって……ついに、鍵盤の音はシ♭。

『me‼』
どれが誰の声か分かることもない、綺麗なひとつの音に固まった、綺麗な高音へと変わっているではありませんか!
この練習方法にも驚かされ、お父さんがくださるアドバイスのすべてが、魔法のように感じました。
すごくシンプルで分かりやすくて、本当に「あるべき音」へと持っていくことができる。自分たちでも「あ! 変わった!」「そうか、この音があるべき音だったんだ!」と気が付いたり、実感することができました。
「わたしって、こんな声を出すことができたんだ!」

そんな大発見もあって、今までに知らなかった自分を知って、どんどんと自分というものが広がっていく。みんなで声も気持ちも揃えて、一緒に、世界が深くなっていきました。
歌うのが楽しい。だからみんなと歌うのが本当に楽しくて、好きなんだなあ、と改めて思えました。

最後に歌った『ボヘミアンラプソディ』は、これまでとは見違えるような歌声へと変わりました。みんなでそれを実感して、喜び合い、拍手をし合いました。
歌いながらハンドサインで〇(マル)をしてくださったり、笑顔で頷いてくださるお父さんお母さん。
お父さんお母さんとわたしたちの間に作ることができた音楽を、これからもっともっとブラッシュアップさせていき、ウインターコンサートでは最高の形へと、仕上げていきます!

(みつき)
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