「私の、本日の挑戦」 うたな

 本を最後まで継続して読めない。人の話を最後まで聞けない。

 摂食障害になって顕著に出てきてしまった私の短所の一部です。

 「苦手」なのではなく、長らく摂食障害で苦しんできた中で本来自分が使えるはずの身体能力や認識力を十分に使えなくなってしまっていると知ってから、それを克服したいと今ここで鍛えていく気概を持っています。でもどうしたらいいかわからないこともまだまだたくさんあり、考えてしまうときもあります。

 そんな、発展途上にある私の、本日の挑戦。鉢上げと種まきです。

 ポットに土を詰めるとか、不織布をかけるとか、そういう作業をさせてもらうのか、と思っていたけど、がっつり「鉢上げと種まき」をさせてもらえるとわかったとき、嬉しかったです。

 作業に優劣をつけることはいけないことだけど、いつも種まき系の作業発表があるとあこがれていたし、種まきができる人がかっこいいなと思っていました。

 苗八作という言葉があるくらい、種まきや育苗で野菜作りが決まるといってもいいくらいの作業。その作業に、手先が不器用で、まだ集中力が不十分な私が、本当にはいっていいものか、と不安もありました。それでもこの機会を大切に! そう思って種まきに向かいます。

 

 まずやったのは、芽がでているセロリの数だしです。一つのトレーの中で言うと、だいたい7~8割は出ていたのではないか、と思います。全部で1809もの芽が出ていました。

 私は、冬から春にかけて収穫できた大きくて立派なセロリしか見たことがなかったけど、今日見た苗はそのミニチュア版と分かるほどセロリそのものに見えました。

 この細くて一見弱そうな苗が、あの太くてがっしりした株に成長すると思うと、たくましい、私もこういう生き方をしたい、なんて感じました。

 

 そして、鉢上げが始まりました。

 今日鉢上げしたのは、ブロッコリー・水菜です。

 なつみちゃんが、培土に含ませる水の量や土の湿り具合の感覚を伝えてくれました。「手で握りつぶして、固まるけどほろっと崩れるくらい」だそうです。

 こういう、若干感覚的なところが大きい作業が少し苦手なのですが、しっかり感覚をつかんで人に伝えられる人ってすごいなと思います。

 

 培土を完成させたら、次にその土をポットに詰め、そしてついに苗をポットへ ! 

 セルトレーの苗を、土ごとピンセットでつまんでポットの中へ。

 繊細で、か弱くて、すぐに折れてしまいそうなブロッコリーの苗。徒長気味で、ポットに収めるのが至難の業でした。これはどうしたものか……。

 

「生長点が隠れないように」

「日光の存在によって上を向いてくれるから頑張って直立させようとしないでいい」

 まなかちゃんをはじめ、みんながたくさんのアドバイスをくれました。

 いろいろなことに気を配って鉢上げしていると、一つを完成させるのに、おかしいくらいに時間をかけてしまいました。

 まなかちゃんの2倍くらい…。それでも「慌てないで、苗を守る方が大事だからね」と言ってくれました。

 向かいで作業していたすにちゃんが「初めの方のポットより上手になっている!」と言ってくれて、うれしかったです。

 

 ブロッコリーはハート形の葉でした。水菜は、ギザギザの細長い葉で、茎はブロッコリーより細め。

 鉢上げをしているといつもなんとうなく見ていた苗たちの細部まで目に入ってきます。何より、かわいい(笑)。

 すにちゃんが「見て、私の孫!」と言って写真を撮っていて、(孫……?)と思って笑ってしまったけど、孫を見るおばあちゃんはこんな気持ちだろうな、とわかるくらい、いとおしく感じました。

 

 

 鉢上げが早く終わり、種まきをすることに。流れで私も作業に入らせてもらえそうな雰囲気だったので思わず「私も種まきしていいんですか!?」と聞いてしまいました。

 まなかちゃんが「みんなで種まきしよう」と笑顔で言ってくれたとき、飛び上がって喜んでしまいました。

 この年になって、初めての経験に出会い、そのことを心からうれしく思えることは、本当に幸せなことだと思います。

 以前は、安定した生活を求めて働いていました。でも、日々に面白みがあって、新たなめぐりあわせが訪れる今の方が、断然いいな、と感じます。

 

 私の初めての種まきは白菜でした。

 恥ずかしながら、私は野菜の種に初めてお目にかかりました。想像していたのは、かぼちゃやひまわりの種。

 しかし、渡されたトレーに入っていたのは、紫色っぽい、1ミリにも満たないような、グラウンドの砂と遜色ないくらいに小さな小さな種。……これはすごい、これは気合を入れてやらないとだめだ。

 

 あやちゃんが種まきのお手本を見せてくれました。培土を指で軽く指圧し、ピンセットで種を置いて、ピンセットで覆土する。覆土は種の2倍の厚さで!? 

 よし、やってやるぞ。

 ピンセットを持つ手が震えて、緊張して、それでも全神経を目の前の作業に集めて、どうか芽が出ますようにと願いながら種まきしました。時間がかかりすぎで、情けないくらいでした。目の前ののりこちゃんや、手本を見せてくれたあやちゃんは素早いのに正確で、本当に本当にかっこいい、と思いました。

 

 正直、午前の作業はとても疲れました。畑作業とはまた違った疲れで、神経を研ぎ澄ませたあとの、全身がどっと軽くなる感覚がありました。

 3時間も集中していたとは思えなかったです。しっかり集中して、質も量も私のはるか上をいくみんながすごいと思ったし、私もそうなりたいと思いました。

 回復して、症状が抜けてきたら、やれることの幅が広がって、もっと多くの人の役に立つことができるのだと思うと、生きる気力が湧くし、これからも頑張ろう、と思いました。

 

 今までは定植からしか関わっていなかったけど、今日は、野菜のはじめの一歩に携わることができました。定植前までに、ここまで手をかけている人がいて、そのおかげで野菜の手入れができていたのだ。それに気づくことができて、前段階も大切、その段階を経て引き継いだそのあとの作業も大切にしないといけない、と改めて思いました。

 本当に今日が貴重な日になったし、心から楽しく、大事な作業をさせてもらえたことに感謝しています。

 

 早朝作業ではナスの収穫でした。まりのちゃんと一緒に軽トラで行かせていただきました。まりのちゃんが行く前に、

「ナス畑の橋のところの飛び出たくぎは誰か処理しましたか?」

 と聞いてくれました。私はそのことを完全に忘れていました。どこか、自分にはできない、誰かがやってくれる、という他人任せな、他人事のような考えをしてしまっていて、頭の中にその記憶が残されていませんでした。まりのちゃんと、くぎについてはプラスドライバーが刺さらなかったので石のブロックを移動させて段差をなくすなどの応急処置をしました。

 誰がやってもいいけど、誰かがやらなくては解決されない、今回のような問題。それを忘れずに、自分がどうにかしようと動けるまりのちゃんはすごいなと思います。前にエンジンポンプの不調があったときも、散水部隊ではないのにずっと気にかけてくれていて、一緒に修理をしてくれました。頼もしくて、やさしいなと思いました。