6月号⑫「畝立てコンテスト、開催!」 えつこ

 

 畝立てコンテストが開催されました。場所は、ナスを植える前の、滝川横の畑です。その日の朝に牛肥を入れて、牛肥を入れたそばからトラクターがけされて、土は、ふっかふかです。畑に足を入れた瞬間、ふわっと音がするくらいに、最高のコンディションです。

 コンテストの審判は、お父さんです。最初に、畝立てのコツを話してくれました。コツは、法則を作ること。畝間の真ん中の土を鍬で二回上げたら、次に畝となるラインの際の土を二回上げる、というように規則的に鍬を動かしたら、効率が良い、ということを話してくれました。お父さんの教えてくれたことを意識して畝を立てたら、リズムができて、疲れにくく、かつスピードも上がりました。

 

 

■何というパラダイス

 

 それでは、コンテストがはじまります。審査基準は、スピードだけではなく、美しいかまぼこ型の高い畝であること。立てる畝は、一人ひと畝です。それを聞いたとき、聞き間違いかと思いました。なのはなで定番の畝立て方法は、四人でひと畝に入る、追いかけっこ方式の畝立て。この滝川横の長い長い畝を、一人でですか? このふっかふかの土での畝立てを、本当に満喫してしまっても良いのですか? と、嬉しくなりました。

 一人ひと畝に着いて、コンテストがスタートです。土がふっかふかで、超気持ち良い! お父さんが教えてくれたように規則的に鍬を動かしたら、体の負担少なく効率よく畝が立つから、楽しい! もういつまででもやっていたいくらいに楽しいです。このふっかふかの畑で、こんなにたくさん畝立てができるなんて、何というパラダイスなんでしょう。

 途中、少し手を止めて、半分ずつの人数にわかれて、もう半分の人が畝立てをしている姿を見て、上手な人の動きを観察しました。効率良くきれいな畝を立てている人は、規則正しく鍬が動いていて、効率が良いのにそんなに急いでいる感じがしなくて、見ていても気持ちが良いくらいに、畝だけじゃなくて、畝を立てているその姿も美しかったです。

 畝立てを再開して、上手な人の動きをイメージしたら、もっと動きやすくなりました。長い畝を立て続けているうちに、自分でも上達していっているのがわかりました。

 

 

■畑に向かって

 

 長い距離を畝立てするのは、フルマラソンみたいでした。はやくやることも大切ですが、体力を最後まで持たせることも大切。質も大切。スピードと体力と質の一番良いポイントが、長い距離を畝立てしているうちにわかってきて、一番良いポイントで畝立てをしていたら、フルマラソンで時速八キロで走っているときみたいに、心地よかったです。

 お父さんが、私の畝立てに、『ショートストローク数稼ぎ型』と名前をつけました。私は、無自覚だったのですが、一回一回の鍬の動きがはやくて、回数多く土をあげて畝立てをするタイプなのだそうです。言われてみたらそうでした。お父さんのネーミングセンスがおもしろかったです。お父さんが、みんなの畝立てを見て、

「素晴らしい」と言ってくれたことが、本当に嬉しかったです。

 その後も、みんなと、ただひたすらに、黙々と鍬を動かしました。コンテストではあったけれど、競争ではなくて、心にあったのは、これから植わるナスのために良い畝を立てたい、という気持ちでした。畝を移るときは、「次の畝に行きます」と声をかけて、それに対するかけ声で、「お疲れ様! 頑張ろう!」と、言いました。疲れてきたとき、このかけ声をかけてもらったり、自分が誰かに言ったりすると、スポーツドリンクを飲んだみたいに、体力が回復しました。

 終わらせるのが厳しいな、と思ったとき、リーダーのやよいちゃんが、「みんなでべストを尽くそう」と声をかけてくれました。やよいちゃんのこの言葉で、空気に一体感が増して、誰ひとりとして力を抜くことなく、それぞれの全力で畝立てをしました。作業を終えたとき、べストを尽くしたぞという清々しい気持ちになりました。

 最後、みんなで畑に向かって、それぞれの気持ちを叫びました。私は、「楽しかったー!」と、叫びました。私は畝立てがもともと大好きでしたが、もっともっと畝立てが大好きになった日でした。