盛男おじいちゃんの山に、竹や自然のものを使って家を作る。それは今回のキャンプだけでなく、八月の縁日やウィンターコンサートにも繋がる。テーマは、「人間になりたい! 決意を込めた妖怪人間の家!」。自分を守ってしまう考え方の癖(妖怪)から脱却する気持ちを表現した家を作ります。うーん、いいものを作りたいな。
基地作りの実行委員さんが、テーマとチームを発表し、フォーマットを渡してくれました。そして、チームごとに、基地の図案をお父さんお母さんに確認していただく日があることを教えてくれました。まずは図案を完成させます。
「竹、山、家、手作り」
と、インターネットで検索して調べると、一枚の写真に目が留りました。開放的で美しくて、とても素敵な竹の建物です。
同じチームのひろちゃんやももかちゃん、よしみちゃんに写真を見てもらうと、みんな、すごくいいね! 素敵! と喜んでくれました。デザインが決まりました。
実行委員さんが渡してくれた、基地を建てる場所の写真、広さをもとに、おおよその寸法で図案を描き、写真を持って、チームのみんなと確認に行きました。
お父さんお母さんは図案と写真を見て、この家をどうしたら建てることができるか、頑丈にするための具体的な建て方、そして、おじいちゃんの山のなかに建てる具体的な高さや幅、奥行きなどの寸法を考えてくれました。
この基地はたくさんの竹を使い、その長さは一本一本異なりますが、縮尺図を書けば、必要な竹の長さを正確に出すことができるよ、とお父さんが教えてくれました。その後、実行委員さんが用意してくれたフォーマットに沿って、正確な図面を引き、必要な竹を書き出しました。
正面から見た図、正面の飾り、横、後ろ、天井とすべての面の縮尺図を書きました。そこから実際の竹の長さを出し、すべての竹にアルファベットを振りました。
その必要な竹を、すべて依頼した通りに、各竹にアルファベットも振り、実行委員さんが用意してくれました。
■必ずいいものにしたい
次に、家を建てる順番を考えました。先日お父さんが教えてくださった建て方をもとに、頭のなかで組み立てながら工程を紙に書き出しました。そして、お父さんお母さんに確認することができ、最後に、お母さんが、この基地のデザインが好きと言ってくださいました。これまでデザインについてはあまり言われず、大丈夫かなと少し不安でしたが、お母さんがここは縁日のときに、卒業生のまちこちゃんと忠政さん、ようたくんのわたがし屋さんになるからね、と、とびきりの笑顔で言ってくださり、必ずいいものにしたいなと思いました。
当日までにできるだけチームのみんなと集まって、建てる順番、それぞれの役割を打ち合わせました。どれみちゃんも同じチームでしたが当日はお仕事でいられません。でも準備期間中に、ひろちゃんと一緒にだっこちゃん結びの練習をしてくれて嬉しかったです。
キャンプ二日目の朝。朝食前に、おじいちゃんの山にシダの葉を取りにいきました。山を登っていきアトリエのそばに、シダの葉がたくさん生えている場所がありました。そこでコンテナいっぱいに葉を集めました。
それから山を下りて、前日のウォークラリーで使った丸太が、イスにぴったりだと思い、取りにいこうと思いました。そのとき山小屋の前で会ったえつこちゃんに、もしも時間があったら、一緒に山へ丸太を取りに行ってくれませんか、と言うと、快く引き受けてくれました。
丸太を一つずつ運び、それはとても重くて、二人で休みながら、山小屋まで歩きました。えつこちゃんがずっと笑顔で一緒に運んでくれて、ほんとうに有り難くて、嬉しかったです。
■六つの基地
そして迎えた基地作り本番。二時間二〇分で作ります。
頑張ろう、とチームのみんなと気合いを入れてスタートしました。
図面を見て、工程を確認しながら、アルファベットの竹を並べて、結わえて、建てていきました。
相川さん、りゅうさんが竹を支えてくれて、よしみちゃんやひろちゃん、ももかちゃんがしっかりと結わえてくれます。
ところが家の柱となる竹を建てたとき、ぐらついてしまい、とても安定して建てることができませんでした。どうしたらいいのだろうと思ったちょうどそのとき、スーパーマンのように須原さんが来てくださり、柱から立木にロープを引っ張って結んだらいいと教えてくださいました。四本の柱を四方に引っ張り、家の骨格が頑丈に建てられました。
そして正面と横の面につける逆三角形の竹の飾りを作っているとき、ひもで結ぶ箇所が多く時間がかかっていたところに、お父さんが来てくださり、だっこちゃん結びよりも速く簡単にできて、なおかつ丈夫な結び方を教えてくださいました。
そうして、たくさんの工程がありながら、須原さんやお父さんが助けてくださり、みんなの力でどんどん家が建っていき、頭のなかで考えていたことが本物になっていき、胸が高鳴りました。
天井の屋根にシダの葉を広げると、木もれ日を浴びたシダの葉の鮮やかな青、竹の青、割った竹の内側の白、目の前に広がる光景の美しさに、みんなと静かに息をのみました。正面の竹の飾りにも葉をつけて、大きな桶は逆さにしてテーブルにして、丸太のイスを置きました。それから鍋やおたまも並べて、料理ができて、ゆっくり座ってお話ができる家を、みんなと作りました。
そして、この家のモチーフである妖怪の神様アホラを、相川さんがしてくださいます。チームのみんなで考えた衣装を相川さんが着てくださり、フラダンス衣装のわらスカートをはき、頭に冠をつけた相川さんは、本当にアホラそのものでとても格好良く、素敵で、嬉しかったです。
相川さんがアホラになり、幸せと健康をもたらすアホラの住む家。誰でもいつでも入ってお喋りをして料理もできて休むことのできる、アホラハウスが出来上がりました。
おじいちゃんの山に、六つの基地ができました。
何もないところから完成まで、実行委員さんが流れを作ってくれて、チームのみんなと考えて、作り、思い切り表現できたことが楽しかったです。おじいちゃんの山のなかでの建築、それも縁日やウィンターコンサートに繋がる未来への建築という、新しい表現の手段を得て、新しい表現の世界に踏み入れて、みんなと作った基地が、大成功してとても嬉しかったです。
