ある日の夜のこと。
「明日、藤井先生とご一緒にブドウのビニール張りをしませんか?」
さくらちゃんからの突然のお誘いに驚きつつも、興味が湧いてきます。詳しく聞くと、藤井先生のお宅へうかがって、藤井先生とブドウのビニール張りとウドの収穫をするとのこと。見たことがあるけど実際にはしたことがないビニール張りと、見るのも収穫するのも初めてのウドの収穫に、ときめきを感じました。
次の日の朝食後から、さくらちゃんとお弁当を持って藤井先生のお宅へ。車の中では、さくらちゃんから、
「藤井先生の畑やお庭は(ウィンターコンサートに登場した)ベネチアの畑の日本版、というと、しっくりします!」
と話してくれて、さらに楽しみになりました。
現地に着くと藤井先生が待っていて下さって、早速、ブドウの木がある場所へ。ブドウは家の裏の、庭のような場所に三本植えられていました。私のイメージでは、なのはなと同じように畑の中にブドウの木があると思っていたので、そのイメージと違っていて、驚きました。木がある周り二メートルの部分だけ土になっていて、囲いがされており、その外側は砂利になっています。
(なんてお洒落なブドウ畑なんだろう)
ブドウの木は三本で、三本仕立てが二本、二本仕立てでさらに枝が分かれて四本に仕立てられている木が一本。どちらも等間隔に枝が真っ直ぐに伸びるように誘引さています。鉄パイプで支えられたブドウの木は安定していて、気持ちよさそうです。ブドウの木は剪定されていていて、まだ新しい枝は伸びていないのですが、新しい葉が出始めていています。柔らかな緑でフワフワとした葉を見ていると、気持ちが癒やされました。 ブドウ棚のビニール張りは、ブドウ棚の屋根の部分のビニールを外して、新しいビニールを上から被せ、パッカーやマイカ線でぴっちり留めます。綺麗にピシッと皺なくビニールが張れると気持ちがよくて、達成感がより強くなります。
屋根はアーチ型に骨組みが組み立てられています。ビニールが張れたら、マイカ線をアーチ型の屋根の長い辺の端からもう一方の端まで渡します。渡すときに、藤井先生が作られた、六十センチくらいのスズランテープの先端にクリップ、もう一つの先端にボールがついている道具を使いました(私たちはクリップボールと呼びました)。マイカ線にクリップを挟んでからボールを投げると、ボールと共にマイカ線の一端をぶどう棚の端まで飛ばすことができます。「この道具、何かに使えそうですね」さくらちゃんと、藤井先生が作られたクリップボールを見ながら話した時間も嬉しかったです。
■山ウドの収穫!
ビニール張りが終わったとき、藤井先生が、「一人だと一日では終わらないよ」と話されながら、笑顔で嬉しそうにブドウ棚を見られていました。透明なビニールから透ける青空とブドウの葉の柔らかい緑を見て、ブドウの木も喜んでいるように見えました。
ブドウ棚のビニール張りが完成した後は、藤井先生が育てていらっしゃるウドの収穫へ行きました。トタン板で作られた囲いが二つ、くっついて立っています。一つの囲いの中は籾殻がぎっしり。もう一つの囲いの中は籾殻が三分の一ほど入っています。(これは一体何だろう?)頭の中が「?」になっていたとき、籾殻の中にウドがあるよ、と藤井先生が話して下さって、さくらちゃんと籾殻を移動させます。ぎっしりと詰まった籾殻を、隣の囲いへ。籾殻を移動すると、すらっと伸びた赤い茎が現れます。三十センチ掘ってもまだ底は籾殻。(一体どこまで籾殻なんだろう?)六十センチぐらい掘ったところで、底の土が見えてきました! 六十センチほどの長さがあるウドが三十本ほど現れます。掘っているときは、ウドが思ったよりも長くて、途中で折れてしまうのではないか? と思ったのですが、真っ直ぐピンと立っていて、さらに驚きました。日に当たっていないので、茎の部分が赤っぽく、柔らかそう。包丁で切ると、中は透明に近い白色で、ちょっと酸っぱくも感じる爽やかな香りがフキノトウやタラの芽と違って意外でした。
三十センチほどのまだ小さなウドも、
「一週間ぐらいしたらタケノコみたいに倍ぐらいに伸びていくんだ」
と藤井先生が教えて下さいました。小さなウドにはもう一度、姿が見えなくなるくらい、籾殻をかけました。してはいけない悪いことをしているような気分。それも面白かったです。収穫したウドを藤井先生がなのはなのみんなにと、プレゼントして下さいました。
いただいたウドをなのはなの食卓では、ウドの皮はきんぴらに、中の白い部分は酢味噌和えに、そして、上の葉の部分は天ぷらでいただきました。「ウドは捨てるところがないんだよ」そういう話も教えてもらい、収穫したり、いただいたりしながら、ウドの魅力をたくさん感じることができて嬉しかったです。
藤井先生のお家で作業をして、新しいことを知ったり、聞いたり、見たりして、自分の中で新しい世界が広がった感じがしました。藤井先生が教えて下さったことをなのはなで活かすことができたらいいなと思っています。