【5月号⑦】「桃の人工授粉 花から花へ ミツバチのように」ふみ

 

 少しでも、ミツバチたちのように……。みんなで、よい桃の実を願って、人工授粉を行ないました。

 四月初旬、まずは、花粉の採取を行ないました。

 桃の品種のなかには、花粉が無い品種や少ない品種があり、その品種は人工授粉が必要となります。そのために、花粉(葯)を採りました。

 開墾十七アール畑の『はなよめ』という品種から、花が開き始める前の、風船状になっている花蕾を摘んでいきました。

 風船状になっている花蕾に触れると、しっとりとしていて、繊細な桃の花蕾を取るのは、少し切ない気持ちもしました。

 葯を採取するのに、ちょうどいいものだけを摘んでいきました。

 脚立に上り、枝と枝の間から顔を出すと、自分の周りがもうすぐ咲きそうな桃の花蕾に囲まれて、淡いピンク色の世界のなかで、とても癒されます。周りをみると、今にも咲きそうな花蕾が、今か今かと、咲くためのスタンバイをしているように見えました。

 桃の木は、たくさんのエネルギーを使って桃の花を咲かせている。実をつけるために、一年かけてずっと働いているのだと感じました。

採取した花蕾を、葯と花弁、花糸に分離させるために、農協まで行き、電動の採葯機を使いました。

 採葯機のなかに、ひと掴み分の花蕾をいれて五秒ほどすると、葯と花弁と花糸が分離され、それをふるいにかけました。

 赤い色をした小さな葯がとれて、大切に思いました。ふわっとした甘い香りがして、一緒にいたあけみちゃんと、「いい香りがするね」と笑顔になりました。

 採取した葯は、帰ってから、紙の上に薄く広げて開葯をしました。

 一〜二日かけて開葯し、赤色から黄色になったら完成です。

 二日後に見てみると、黄色くなっていました。

 

■新しい形を作っていく

 

 黄色くなった花粉を、石松子という増量剤に混ぜて、すべての木の桃の花に人工授粉をしました。もとより人工授粉が必要な品種は、梵天に、花粉と石松子を混ぜたものをつけて授粉を行ないます。

 そして今年は、もともと自家受粉をできる品種の人工授粉も行ないました。花粉を運んでくれるニホンミツバチが減ってしまっていることを考慮し、梵天などで花の中心部分に触れて、おしべとめしべをこすりあわせるようににして授粉させました。変形果などを少なくし、確実に良い実をならせるためです。作業が進むごとに、みんなも私もスピードが上がっていき、超高速ミツバチになった気持ちでした。

 

 

 ある日、人工授粉をしているとき、ニホンミツバチが三匹ほど飛んでいて、フワフワとしたおしりがとても可愛かったです。

 四月は、こうした授粉の他にも、自然農薬作りや散布、早期から桃をネットで覆うための準備も進めました。今はミツバチが減ってきていますが、ミツバチが苦しくない農業、ミツバチにも自分たちにも優しい農業を確立できるように、お父さん、お母さん、みんなと作っていきたいです。

 人工授粉が完了し、次の手入れは、摘果です。

 一つひとつの手入れに誠実に向かい、全力で頑張りたいです。