
山小屋キャンプのなのはな〈みんなのライブ/お父さん・お母さんのライブ〉
(記者:なお)
山小屋キャンプの夜は、ライブの夜。
一夜目は、山小屋前の野外ステージで行われるみんなのライブ『妖怪の森フェス』です。
私もステージで表現したい!と名乗りを上げた有志の8チームが登場します。
演目は漫才にダンス、歌、タヒチアンフラ、そしてイラストまで、気持ちを表現するアプローチはさまざまです。
深い森に抱かれた野外ステージは色とりどりに点滅するライトで彩られています。
バーベキューの煙もスモークの演出のように見えます。
「みんな、準備はいいかしら? もう、後戻りはできない」
「The category is 妖怪の森フェス,Dance or die」
実行委員のオープニングは、レディ・ガガの『Abracadabra』です。
これから出場する8チームの登場を盛り立てるべく、きれきれのダンスでオープニングを飾ります。
トップバッターは、なのはなの漫才トリオTATSUMI。
なのはなではお馴染みの、自称“イベントには欠かせないお笑い3人組”です。3人は自分の殻を破るために漫才トリオを結成しました。
待ってました、とみんなから大きな拍手がわきます。
TATSUMIのメンバーは、まちちゃん、みつきちゃん、ひろこちゃん。
このキャンプに向けて、アトラクションの実行委員の準備の合間を縫って3人は夜な夜な特訓にはげんできました。
人を笑わせたい、笑ってもらえたらそれが何よりの喜び、というTATSUMIの漫才にかける思いの強さを感じて、そんなエンターテイナーの3人が私は大好きです。
今回のネタは、3人が考えたものをベースに、お父さんがアドバイスをくれて作り上げた新作です。なのはなにちなんだ“梶谷池”や“ガマの穂”もネタに出てきて、日常から生まれてくるネタが面白いなといつも思います。
ボケと突っ込みという役割は違えど、3人とも妙にひょうひょうとしていて、その独特のテンションにじわじわと笑いがこみ上げます。
トップバッターでみんなを笑わせてくれたTATSUMIの3人。
今年の抱負は「春夏秋冬と、年に4回公演をすること」と「妖怪を脱すること」とインタビューで宣言してくれました。
夏公演はいつになるか、楽しみです。
続いては、ダンスが好き! という気持ちで意気投合して出場の二人組です。
そなちゃんとうたなちゃんコンビ、その名も『そんなうたな』。
曲は『problem』と『get it out me』の2曲を踊ってくれました。
ブルーのジャケットに蝶ネクタイ、黒のパンツという衣装で、オリジナルの振付も大人っぽくクールな印象。
「ダンスが好き、ただそれだけの思いで出場しました」
という言葉のとおり、本当に踊ることが嬉しいという気持ちが伝わってくるダンスでした。
勇気を出して、自分の内に秘める“好き”をみんなの前で表現してみる。
そんな小さな一歩を踏み出すチャンスになるのが、有志ライブです。
ただ自分が楽しく歌う、踊るということではなく、仲間の新しい一面を発見したり、殻を破り外向きの自分になり気持ちを表現する大切な機会となるのがなのはなのイベントです。
うたなちゃんとそなちゃんも、今回は大好きなダンスを二人で作ってみんなの前で踊ろう と名乗りをあげ、ステージに上がってくれました。
3組目は、ちょっと不思議なチーム名のMADOGIWAの姉妹。
まず登場したのは、ゆきなちゃんとほのかちゃん。
おや? この二人はどこかで会ったことのある……
そう、前回のキャンプでデビューしたゆきぼの姉妹です。
なんと今回は、そこにアメリカから帰ってきたお姉さま(まなかちゃん)が加わり、3姉妹となっての登場です。
まなかちゃんは、ゆきぼの姉妹のファンで、初めてのステージを見てから一緒に歌ってみたいと思って今回念願かなって3人での出場になったとのこと。
歌とコーラスで『reflection』『wake up romeo』を披露してくれました。
色の違う2曲で、3人の歌声もそれぞれに魅力があり、とても綺麗なハーモニーでした。
さてさて、チーム名のMADOGIWAとは?? という謎をインタビューで聞いてみました。
すると納得、3人は食事の席が窓際の列という共通点があったのです。
家族だからわかる“なのはなネタ”がネーミングにも盛り込まれていて、みんなでわいわいと楽しめる理由の一つだなと思います。
そして『『wake up romeo』ではゆずちゃんとのんちゃんがダンサーとして加わり、モノ トーンの粋な衣装とダンスを見せてくれました。曲の雰囲気にマッチしたダンスが、とてもかっこよかったです。のんちゃんに振付について聞いてみました。
「なのはなで踊ってみたいダンスの一つとしてストックしていた振付があり、それがこの曲にぴったりと合ってびっくりしました」
まなかちゃんが歌いたかった曲と、のんちゃんが踊りたかった振りが運命的に出会い、このステージにつながったのだなと思いました。ゆきぼの姉妹とまなかちゃん、そしてのんちゃんゆずちゃんの思いがひとつにつながり、新しいMADOGIWAの姉妹チームとなり“表現してみたい”が叶った素敵なステージでした。
ステージの前に小ステージが設置され、次の出演者が登場します。
続いては、デザイナーの相川さんです。相川さんといえば、イラスト!
新作のなのはなの子のイラストをキャンプのために10枚も描いてきてくださいました。
題して『私は誰でしょう? クイズ』
1枚1枚披露しながら、誰のイラストかをみんなで当てていきました。
一発で当たるものもあれば、なかなか当たらず苦戦、という絵もありました。
「今年は少し難易度上がっています」
相川さんはこう話してくれました。難易度が上がったのは、デフォルメを際立たせて描いたからだそうです。
「本人に似せることに寄せたらわかりやすいけれど、今回はよりキャラクターっぽく描いてみました」
という相川さんの言葉通り、どのイラストも一人ひとりの魅力がより強調されて、ひとつのキャラクターとして1枚の紙の中で躍動しているように感じました。
あふれんばかりに牛肥を盛ったテミを持って走る姿。
ホースで水やりをする姿。
たくましく鍬をかつぐ姿。
若々しくかっこいいお父さん。
なのはなファミリーに来てくれると、いつもみんなと一緒に作業で汗をかいて楽しんでくれる相川さんが見た『なのはなファミリーのみんな』の姿がそこにはありました。
2次元の絵からこちら側に飛び出して来そうなほど生き生きとしたイラストに、相川さんの目に映るなのはなファミリーを感じられて、とても嬉しくなりました。
インタビューで相川さんに、なのはなでみんなと楽しむならぜひこれを! というおすすめイベントや作業を聞いてみました。
「どろんこ運動会です」
笑顔で答える相川さん。播種ももうすぐ、どろんこ運動会ももうすぐ。相川さん、そして新たなゲスト参加者も加わり、また思い切り泥んこになれたらいいなと思いました。
妖怪の森フェスも後半へ入ります。
5組目は、大所帯9人での登場『妖怪ファミリー』のみなさんです。
9人はなのはな伝説の名曲、袋小路『行き止まり』をバンド演奏と歌で表現します。
依存にとらわれて、まさに袋小路にいた私たち。
しかし、なのはなファミリーに来ることができて、回復の道筋は見つかった。
私たちは、摂食障害になったからこそ、強く、優しく、誰かために生きることができるのだと知った。
摂食障害になってよかった、なのはなに来ることができて良かった。
回復したら、そこには本当に良きる喜びを感じられる世界がある。
私たちの思いを、濃く強くのせることができるこの曲は、なのはなファミリーオリジナル曲です。
お父さんが作詞をし、みんなで作曲をしました。曲を作ったのは母の日のイベントでした。そのとき袋小路突破隊というバンド名でこの曲を歌いました。
大切な、大好きなこの曲をまた歌いたい。その思いでメンバーを募り、パワーアップして9人家族になりキャンプで歌うことが実現しました。
赤と青に塗ったドラム缶をパーカッションで使い、音も見た目も力強く、エネルギーに満ちた演奏です。
自分たちは一度人生を諦めた経験がある。だからこそ、良い意味でやけくそになって袋小路『行き止まり』を“突破”できるんだと思います。
歌詞と音とみんなの表情から覚悟が見えて、本当に心が熱くなる1曲で、あらためて大好きな曲だなと思いました。
続きまして登場は、こちらも熱い3人組『全力三姉妹』です。
うたなちゃん、ゆうなちゃん、すにたちゃんが歌う『やってみよう』。
チーム名と曲が示す通り、なのはなの毎日を「全力でやってみたら」自分のこだわりからどんどんと解放されていく、というストーリーが1曲のなかに詰まっていました。
畑での作業、SNSの撮影、芋ほり、サーキットトレーニングにフルマラソン……
今なのはなファミリーの毎日を全力で過ごす3人の毎日がダイジェストで繰り広げられます。
鍬を持って全力で畝を立てるうたなちゃん。
なのはなの発信を良くすべく色々な角度から撮影にトライするすにたちゃん。
芋(紅はるか)への愛にあふれ、そしてフルマラソンの感動を再び思い出させてくれるゆうなちゃん。
こだわりを手放す怖さを振り切って、全力で取り組んで、仲間と乗り越えてきた気持ちがその動きから伝わってきて、面白くて笑いながら、ほろりと涙が出てしまいます。
飾らず、ストレートに思いのたけを表現できるのがキャンプの有志ライブの良さです。
外のイベントでのパフォーマンスとは一線を画すステージをゲストのみなさんにも見てもらえて、私たちがどんな風に生活しているかを知ってもらえるのも嬉しいなと思いました。
続いでは、妖怪の森フェス唯一にして無二の男性ボーカルグループの登場です。
みんなのライブ常連の男性アーティストといえば、Sunshine Ryu(りゅうさん)ですが、今年はソロではなくグループでの出演となりました。
ユニット名はSunshine Boys、メンバーはりゅうさん、たくろうさん、ひでゆきさん、相川さんの4人です。
普段生活する場所がそれぞれに違う4人はいったいいつ練習をしたの? と思ったら、なんと合わせるのはこの日が初めてとのこと!
歌う曲を決めて連絡を取り合い、それぞれこの日のために個人練習を積み、ついにライブで4人が集結しました。
衣装は白のシャツにオーロラ色のテンガロンハット。
歌を合わせるのは初めてだけれどチームワークは抜群で、会場を巻き込んで熱い歌を披露してくださいました。
見ている私たちもサビを一緒に歌い、会場も大いに盛り上がりました。
なのはなファミリー有志ライブ、妖怪の森フェスもいよいよ大詰め。
トリを飾るのはタヒチアンフラダンスチーム『なのタヒチ』です。
ゆりかちゃん、のんちゃん、よしみちゃんが新曲フラダンス『ヤオラナ』『ティアレタヒチ』『パテパテ』の3曲を披露してくれました。
登場から衣装の美しさに会場全体が華やぎます。
フラダンス衣装の緑、赤、黄色の鮮やかな色合いと、おじいちゃんの森の深い緑とが相まって、鮮やかで異国的な景色が広がります。
視線と心をぐっとつかんで離さない笑顔と、全身からあふれる生命力。
フラダンスの持つ力がステージいっぱいに広がっていました。
人が本来持つ生きるエネルギーや前向きさ、明るさ、力強さ。そんなフラダンスの魅力は、野外だと何倍にもなるなと感じました。
山小屋で、盛男おじいちゃんの山のある場所でフラダンスショーをできることが本当に嬉しかったです。
衣装のこの3曲のためにメンバーと実行委員が考案し、お母さんも一緒に見てくれてこだわって作りました。ヘアバンドやネックレスといった小物も新しく作りました。
1回きりのステージではなく、この夏の新しいステージにつながるように、と。
ゆりかちゃんがキャンプのために選んだフラダンスの3曲は、この夏ぜひみんなで踊りたい曲だと話してくれました。
「キャンプが終わったら、夏に向けてみんなで練習をしたいです!」
とゆりかちゃんが言うと、みんなから歓声が上がります。みんなも、ステージをみて踊りたくてうずうずしていたのです。
このキャンプを皮切りに、なのはなの夏が始まる、新しいフラダンスがはじまる。
そんなわくわくした気持ちになれたフラダンスショーでした。
全8チームのパフォーマンスで盛り上がったみんなのライブ。
なのはなの生活で感じている楽しさや喜び、自分たちが辿っている成長を全力で表現。
歌ってみたい踊ってみたいあの曲を、仲間を募ってのキャンプで実現。
キャンプだから集まれる新しいメンバーとの初ステージ。
なのはなのこれからにつながる新しいダンス。
それぞれステージにかける思いを、全力で出し切った夜でした。
生き生きとした表情でパフォーマンスをするみんなの姿に、見ている自分も嬉しい気持ちに包まれ、そして新しく始まるこれからのなのはなへ期待が高まりました。
***
キャンプライブの夜。
熱い野外ライブに続いては、お父さんお母さんの弾き語りライブです
山小屋のリビングにみんなが集まり、お父さんお母さんのお話しと曲をじっくりと聞いて過ごすことができました。
今回は『本当に知りたいシリーズ』というテーマで質問を募集しました。
お父さんの幼少期の話から、なのはなファミリーが設立されるまでの経緯について知りたい、という質問に対して、じっくりたっぷりと聞くことができました。
自分たちが出会うことができたなのはなファミリーがいかにして生まれたのか。
お父さんお母さんの子供の頃のこと、思春期のこと。仕事に就いたときのこと、ライターのお父さんと、『なのはなの会』を作ってボランティアさんを集めてなっちゃんの訓練をしていたお母さんとの出会い、そしてこの山小屋の地からどのようにしてなのはなファミリーが始まったのか。
そのお話を、みんなと、そしてゲストの方とも共有できたことが嬉しかったです。
なのはなファミリーの始まりの場所である山小屋でそのお話を聞くと、より自分の中に大事なストーリーとしてしみていくように感じました。
お父さんとお母さんが生きてきた道は、自分たちがいかにして生きるかの答えがたくさんつまっています。
依存や生きる苦しさから逃げたり、目を背けたり、なんとかやり過ごそうという生き方では、自分は本当には解放されることはないのだと思います。
お父さんお母さんが模索し、求めて、戦ってきたその先に常に素敵な出会いがたくさんあり、道が開けてきたのだと思いました。
そしてそんな生き方は、いまもなお現在進行形で続いています。
お父さんお母さんがたくさんの人と作ってきたなのはなファミリー。
そこで自分守られてきたように、今度は自分も小さくともそういう場所を作っていきたいなと思いました。
そして、ふと周りとみると、山小屋のリビングにはたくさんの仲間がいます。
私にはすでにいま、こんなに素敵な出会いをしているんだということを感じ、それを大切にしたいと思いました。これからどんな出会いがあるか、それもまた自分の生き方しだいです。
お父さんお母さんのお話しと、『大空と大地の中で』『トンボ』『HERO』などの力強い歌声。
2時間が過ぎても、またまだお話を聞きたい、歌を聴きたいと名残惜しい気持ちでいっぱいでした。
山小屋でのお父さんライブで、あたたかさや、これからまた毎日を大事にしっかりと過ごしていこうという気持ちが自分の中に満ちて、嬉しい時間でした。
(記者:なお)