【感想文④】「優しい気持ちに守られて」 りな

【第32回津山加茂郷フルマラソン全国大会 感想文集 その4】

「優しい気持ちに守られて」
りな

 

 津山加茂郷フルマラソン全国大会に、みんなと出場しました。今年、初めてフルマラソンに出る、というメンバーが、たくさんいました。そんな、新メンバーの顔ぶれで、新鮮な気持ちで、少しハラハラした気持ちで、4月20日を迎えました。

 私は今回のフルマラソン大会が2回目でした。去年どうだったか、と走った記憶を手繰りよせながら、今回もきっと大丈夫だ、と自分に思い込ませようとしました。けれど、去年はまぐれだったんじゃないか、と思えて、心配はあまり消えませんでした。
 そんな日の夜の集合の時に、「人の目を気にしなくなるにはどんなスタンスでいればよいか」という質問の答えに、お父さんが、
「結果よりも、プロセスが大切であること」
 を話してくださりました。
 その言葉を聞いて、はっとさせられました。フルマラソンも同じだと思いました。1月の中旬から、3か月間、出場するメンバー全員と、フルメニューで身体を鍛えてきました。そのプロセスが、一番私たちには大切で、フルマラソン当日は、おまけ、みたいなもので、もうすでに、自分の中には、みんなと一緒に積み重ねてきたものがあるのか、と思いました。そう思うと、完走できるかどうか、は究極のところ、あまり問題ではないんだなと思いました。そして同時に、ここまでみんなと積み重ねてきたからには、絶対に走り切りたい! その気持ちだけが湧きました。

 前日にお父さんに相談させていただき、スマホで撮影しながら走る許可をいただきました。フルメニューでみんなが走る姿を写真や動画で撮影していながら、ずっと自分のほうがみんなから勇気をもらっていたんだなと気づきました。

 フルメニューが始まった当初、石生の坂をランニングで登りきれるかどうか、というところから始まって、日に日に、フルメニューが初めてのメンバーがどんどん強く、逞しくなっていく姿を、間近で感じました。
 フルメニューで走る距離は日に日に伸びていき、ピークは14・2キロ走りました。14・2キロに距離が伸びて初日、私は動画を撮っていました。その時に、ゆうなちゃんが、いつもはキラキラした目で見ているアヒルや犬のそばを通っても、下を向いて、懸命に腕を振っている様子でした。でも、最後まで、みんなの列の中に入って、最後までゴールし、14・2キロ走り切ったとき、ゆうなちゃんが崩れるようにして泣いていました。隣で走っていたそなちゃんも泣いていました。ずっと堪えていたんだろうなあと思いました。自分まで、目の奥がジンとなって、本当に良かったと思いました。
 インタビューで、
「みんなと一緒だったから、みんなが自分のことのように応援してくれるから、走り切ることができた」
 と話していたことを思い出しました。そう、涙を流しながら話すゆうなちゃんが、本当に綺麗だと思いました。そして、そんなふうに感じて、精一杯で走っている姿が、希望だと思いました。

 フルマラソン大会は、自分だけではなく、みんなにとって本番でした。42・195キロは、フルメニューでも走ったことはなく、未知の領域です。走り切れる、という保証はありません。でも、なぜかこのメンバーだったらきっと走り切れる、大丈夫、という確信に近い気持ちがありました。それは、毎日積み重ねてきたフルメニューで、みんなと汗も、涙も流しながら気持ちを共有しあって、仲間を信じる気持ちが強く強くできたからだと思いました。
 フルマラソン当日のみんなの走る姿も、映像の記録として残せることが本当に嬉しいと思いました。役割を全うしたいと思いました。

 フルマラソン当日は、いつもより早起きして、すぐ会場に出発し、朝食は車の中でおにぎりを食べ、いつもとはイレギュラーな動きでした。そのこともあり、気持ちが高ぶりました。当日、りゅうさんの弟さんや、卒業生のまゆみちゃん、えみちゃん、ゆきちゃんもマラソン大会に出場するために帰ってきてくれて、大家族になりました。そのことが、とても心強く感じました。
 お父さんとお母さんがペアルックの服を着ていたり、たけちゃんも早起きして来てくれていて、みんなに1つずつアンパンマンチョコをくれて、すごく温かい気持ちになりました。また、お母さんが、うちわを高く掲げて、
「相川さんがイラストを描いてくださったんだよ!」
 と見せて下さりました。よく見ると、ばんざいをして笑っている相川さんのイラストと共に、
「走る子も 応援する子も 頑張れ!」
 と書かれていました。場所は遠く離れていても、同じ気持ちで応援してくださっている方がいることが、本当に恵まれていると思いました。

 お父さんが以前、
「応援する人に笑顔で手を振っていると、いつの間にか完走している」
 と話してくださっていました。本当にそうでした。スタートして、いつも誰かが応援してくださっていました。それは、なのはなの応援組のみんなもだし、永禮さんも来てくださっていたり、沿道で旗を振られている地域の方も、勢ぞろいでした。

 これが、本当に誰も応援する人がいなくて、1人で走っていたら、絶対に寂しいだろうと思います。でも、実際になのはなファミリーに来る前の私は、そうだったなと思いました。走ること自体が、1人で泣きながら何かに追われながら走るイメージしかなく、苦しかったと思いました。でも今は、そのイメージが180度変わって感じられること、そんな世界があるのだと知れたことは、本当に大きな大きな宝物だと思います。

 なのはなの応援組のみんなは、60メートルぐらい離れていても、その声量と空気感と動きの可動域の広さですぐに分かりました。
「○○ちゃん、頑張れ――!!!」
 と声がつぶれるぐらい、両手をぶんぶん振って応援してくれていて、その姿を見ると、弱音は吐いていられなくて、力が湧いてきました。なんて綺麗なんだろうと思いました。そんなふうに、自分以上に、自分達のことを応援してくれている人がいる、希望に思ってくれている人がいる、と思えるだけで、何があっても頑張れそうな底力が湧きました。心強くて、自分の足が、自分の足じゃないように、軽くなり、これはみんなに走らせてもらっているんだなと思いました。

 スタートから、ゴールまで、たくさんの方に支えられて、守られていることを感じました。すぐ近くには一緒に走るなのはなの子がいて、全然1人ではありませんでした。寂しいと思うこともありませんでした。
 それは、人生も同じかなと思いました。自分も、みんなも、誰も1人では絶対に生きていけなくて、そして自分の力で立つ、とも思わなくていいんだと思いました。自分の力の源になっているのは、周りの人の温かい心しかなくて、それを上手に受け取って、自分も発して初めて、立つことができるんだなと思いました。助け、助けられる関係があることが、原動力になるのだと、改めて感じました。

 42・195キロ、本当にあっという間でした。グラウンドの前ではお母さんが待ってくださっていて、グラウンドに入り、ゴールテープのところでは、お父さん、応援組のみんなが力いっぱい手を振って応援してくれていました。お父さん、お母さん、応援組のみんなが、完走したことを心から喜んでくれて、本当に嬉しかったです。走り切っても、まだまだどこまででも走れそうな気がしました。
 走り切れるのだろうか、と思っていたけれど、自分が思っている以上に、自分自身の身体と気力は強靭だったんだと思いました。どんなに挫けそうなことが、今後あったとしても、何とか乗り越えられるだけの力はあるのだ、と思うと、安心した気持になりました。自分を強くしてくれたのは、一緒に過ごすみんなのおかげだと思いました。

 ゴールテープを切るみんなの表情がキラキラ輝いていました。一人ひとりが、42・195キロの濃密な物語を抱えて、清々しい笑顔で帰ってくると、嬉しい気持ちでいっぱいになって、胸が熱くなりました。
 初めて走る子も何人も次々にグラウンドへ帰ってきました。本当に嬉しかったです。1人、1人と帰ってくると安心した気持ちになりました。

 タイムリミットまであと15分。カウントダウンで胸がチクチクしました。どうかみんな帰ってきて、笑顔が見たい……、祈るような気持ちでした。
 そんな時、グラウンドに、帽子を被った見覚えのある女の子が走ってきました。あやちゃんでした。あやちゃんの姿を見ると、緊張がほぐれて、こらえきれない涙が溢れてきました。地道に、健気に、精一杯で走っているあやちゃんの姿に、本当に勇気と希望をもらいました。
 あやちゃんの姿を追って、どれみちゃんも帰ってきてくれました。2人のゴールが、涙が溢れてしまうぐらいに嬉しくて、幸せな気持ちになりました。

 自分のゴール以上に、何倍も何倍もみんなの一人ひとりのゴールが嬉しく感じて、同じように、サクセスストーリーを色濃く感じました。
 タイムには間に合わなかったけれど、寧さんとつきちゃんが、最後まで走りきり、グラウンドまで走ってきた姿を見ると、また涙が出そうになりました。お父さんとお母さんがゴールテープを持って、その後ろをみんなで列に並んで、両手を上に上げて、アーチを作りました。その時間が、本当に温かくて、幸せでした。
 この大きな優しい空気の中に終始乗っている感覚でした。自分がどうしよう、ああしよう、と考える間もなく、気がついたら、大きな利他的な空気に飲まれていました。この空気は1人で作るものでもなく、なのはなのみんなと、会場の人とも、全員で作っているものなんだなと思いました。
 そして、この優しい空気は、何よりも、うんと影響力があるものなのだと思いました。なのはなの応援組のみんなの作る空気で、ランナーの方が勇気づけられたり、自分達が最後まで笑顔で、生き生きと走ることで沿道の方が、「なんてかわいい人たち」と言って笑顔になってくださったり……。
 そんな優しい空気を、一人ひとりが作ってくれたこと、本当にありがとうございました。そして、私も、マラソンの機会だけではなく、優しい気持ち、空気を作っていけるようになりたいと思いました。