【感想文⑤】「深い幸せを感じたマラソン大会」 そな

【第32回津山加茂郷フルマラソン全国大会 感想文集 その5】

「深い幸せを感じたマラソン大会」
そな

 

 今でも会場の空気、情景が鮮明に蘇ってきます。
 長かったようで短かった、でも短かったようで長くもあったマラソン大会でした。

 3か月の練習期間では最短2・5キロのコースから始まり、最長は14・2キロのコースを、皆とフルメニューとして行ってきました。
 雨の日はサーキットメニューや体幹トレーニングを取り入れたり、フルメニュー実行委員は、皆が大変な思いをすることなく、でも着実に力をつけられるための練習メニューを考えて皆の前に立ち、私たちを引っ張っていってくれました。

 初めの頃は、いくら皆と練習をしても走る事が苦手な自分が本当に走りきれるのだろうか、不安な気持ちにたくさん悩まされました。
 いざ練習が始まると、それはそれは毎日がどんどん色鮮やかになっていくような感覚でした。
 走る事が辛くない。こんなに走るって楽しいものなんだ。仲間と走るすばらしさを毎日実感して、その幸せを噛みしめながら走りました。
 どれだけ辛くても挫けそうでも皆といたいから、話していたいから、そして皆のように強くなりたいから。立ち止まる理由がどこにもありませんでした。
 走る道しかどこにもなかったです。

 あっという間に3か月が過ぎていって気づけば本番の4月20日、心の準備は出来てませんでしたが……、時計は待つことを知りません。
 朝は5時起床、5時30分に古吉野を出発しました。
 あゆみちゃん車に乗っていたのですが、たけちゃんちいちは熱があり、ひでゆきさんとお家にいると聞いて、大変な状況でも皆の支援をしてくれるあゆみちゃんの気遣いに胸がぎゅっとなりました。
 会場に着いて仮眠を取り、車内で朝食を頂きました。おにぎり、ゆで卵、バナナ、栗のパウンドケーキ。すごく美味しくて、身体いっぱいに染み渡りました。
 これだけ栄養価の高そうなエネルギー源が身体に蓄えられたら問題なしだ、と思いました。
 熱が少し下がったからと、なんとひでゆきさん、たけちゃんちいちも、加茂に来てくれました。そしてたけちゃんの宣言通り皆にアンパンマンチョコでエネルギーチャージをしてくれました。

 よしみちゃんの掛け声とともに、皆で準備体操をしました。
 出走時刻の10時に近づくと、まず初めに、お父さんとあゆちゃんによる点呼確認と共にゼッケンと、エネルギー補給用のお菓子の配布がありました。
 駐車場付近でほのかちゃん、なつみちゃんとトリオになってゼッケンを付けあい、靴に取り付けるチップの確認をしました。

 少し話は逸れますが、ゼッケンの入っていた透明な袋の回収があり、ほのかちゃんの分も回収ボックスに持っていきました。
 お父さんはどの場所に居る人も箱に戻しやすいように真ん中のほうに置いてくれていたのですが、回収ボックスの辺りに、駐車場の区画を区切る黄色いスズランテープがちょうど顔のあたりのラインに張られており、自分も含め何人かも、そのテープに思わず顔を当てていました。
 すると、それを目にしたお母さんは、ここだと皆がテープにぶつけるでしょ、と箱の場所を移動しようとしてくれていて、その2人のかけあいが、これぞ利他心の境地。利他心のぶつかりあいという感じで、この瞬間に、ああ改めてお父さんお母さんが大好きだなあ、良かれの気持ちで溢れていて、すごくほっとする。私が求めていたのは、この空気だなあと思いました。お父さんとお母さんの子になれて本当によかった、幸せだと思います。

 走り切るぞ!という掛け声とともに写真、ビデオ撮影をしてもらい、やよいちゃんと、頑張ろうね! のハグをしました。
 2分後に出発地点へ移動しよう。という事でその間に着替えを入れた荷物をキャラバンに移動させて、出発地点へ向かいました。
 お父さんの背中を追って、大勢の参加者をかきわけながらぐんぐん前へ進んでいきました。
 お父さんが、そなもこれまでいくつかインタビューを受けているから、出発前の気持ちを撮ってもらおうよ、と言ってくださり、りなちゃんとまなかちゃんに撮影をしてもらいました。

 9時58分頃の事でした。そしていよいよ運命の時間がきます。10時になると前の方から走りだしました。スタートすると、周りの応援の方々の姿に、目頭が熱くなりましたが、スタートで泣いてどうする、まだまだ旅はこれから。涙はゴールに残さないと。その一心で泣くのをぐっとこらえました。
 初めはひろこちゃんを親鮫に走りました。沿道の方の、「いってらっしゃい!」「頑張ってね!」その温かい言葉、動き、姿、全てが、全身全霊で応援してくれる事がもう嬉しくて、ありがたくて、どうにもできないぐらいに胸がいっぱいでした。
 するとひろこちゃんは、「最後まで、こんなふうだよ」と教えてくれて、なんて幸せな時間なんだろう、今を大事に大事に走ろうと思いました。
 噂に聞いていた通り、ピエロや、スヌーピーやピカチュウの恰好をした参加者の方もいらっしゃり、その方がたを目にするたびに元気をもらいました。

 なのはなの応援車がたくさんいて、前のほうからも、後ろのほうからも応援があったり、先駆けて決まった地点にいて撮影をしてくれたり、補給物をくれたり、とにかく皆の姿に助けられました。皆の顔を見られるだけで胸がいっぱいでした。幸せでほころんでしまって、思わず立ち止まりそうになるぐらい、皆に会うたびにすごく胸がほっとしました。
 途中、写真撮影が間に合いそうにない! という事態があったのですが、まことちゃんがさっと車を降りてダッシュで駆け抜けて前のほうに立ち写真を撮ってくれました。
 その瞬発力、判断力の速さ、潔さに、驚きました。またこれも利他心なんだなあって思いました。
「お茶しっかり飲むんだよ!」
 と声をかけてくれて、どこまでも温かくて、皆を支えてくれている、何をしたらこの恩を返せるだろうか。そんな思いで一杯でした。

 

■ナイショにしたいけど、自慢したい話

 ある給水所では、少し珍しくバラエティ豊かな補給物、様々な種類のお菓子なども置いている場所がありました。
 端のほうにはマフィン、そして禁断の“パン”がありました。これはいけない。パンはだめだ、のどに詰まる。ぱさぱさするし勧めないと言っていた。
 でも通り過ぎたあと後悔するのか? 気付くと片手に塩パン、もう片手には水を持って、まるっきり食事スタイルになってしまいました。
 隣にいたうたなちゃんも、ニヤリとしながら満面の笑みでパンをとっていて、これは最強の背徳感だねえー、と笑いあいました。
 怒られるなら一緒に怒られよう、悪い子になってしまえ、校則を一緒に破るような感覚でドキドキしました。

 ななほちゃん、よしみちゃんを親鮫に中間地点まで走りました。
 お父さんがスマホを向けてビデオを撮ってくれていて、お母さんは大きなかりんとうを手渡してくれました。
 ちゃんと2人に会えた、ひとまずここまでこれた。でも気を抜かずに最後まで頑張ろう。と思いました。
 折り返すとなのはなの皆とたくさんすれ違えて、会うたびに互いに手をのばしてハイタッチをしました。
 苦しいのは皆一緒だ、この壁を一緒に皆と越えるんだ。一体感を感じました。
 須原さんとハイタッチをしたところで、下り道のおかげもあるのか、少し重くなっていた足がすごく軽く感じたのが自分としてはすごく強烈に記憶に残っています。
 ここからがスタートだという気持ちでいこうと思いました。

 後半も、できるだけ1人にならず、よしみちゃんらに着いていこうと思いましたが、2人の速さに着いていけず少しペースダウン。
 なつみちゃんや、さくらちゃん、しなこちゃん、えつこちゃんと出会いました。
 焦りもでてきましたがこのペースだと、6時間のゴール制限時間より1時間早いぐらいだし、折り返し地点3時間以内のほかは制限時間はない、という事を聞いて安堵しました。
 1人になってしばらくして後方から、さくらちゃんの「ファイトー」の掛け声がありました。
 さくらちゃんはすごく謙虚で、誠実で、地道にコツコツと積み重ねていく力がすごくある、尊敬する大好きな存在です。
 私もそうでありたい。遅くても、遅れてても、とにかく着実に足を前に運ぶ。それだけを考えて走る事にしました。

 

■噂のお好み焼き! 油断して、遊びすぎた帰り道

 帰りの給水所では噂のお好み焼きブースがありました。
 立ち寄るしかない! 割り箸をとって、「いただきます!」と言って鉄板にのったお好み焼きをいただきました。
 屋台の方には「悪い子だね~」と言われましたが、私は良い子呪縛から解かれて悪い子になれたようで、最高な気分でした(笑)。
 もうここまで来たら遊びつくしてしまえ、走る人の特権だし全部楽しみつくしちゃえ! と、喉がずっと乾いていたのを良い事にあらゆる場所でコカ・コーラなどのジュースも飲みました。

 帰り道は、「おかえりなさい」「お疲れ様ー」そんな掛け声に助けられながら走れました。
 なのはなさん頑張れーという声もありました。なのはなのプライドを守るためにも走り切ろうと思えました。
 集団でいると、かわいい子達だね、なんて言ってくださる方もいました。気持ちの強さは絶対負けない。なのはなの強さを前面に押し出していこう、なんて思いました。
 本番前から聞いていたように、成人男性の方でも歩かれている方は本当に多かったです。でも絶対に遅くても走る事を諦めないでいようと思って歩きませんでした。
「すごいなあ」という声が聞こえてくると、嬉しさで胸が高まりました。気持ちでは絶対負けたくないと思いました。

 最後の3キロはすごく遠くて、でも、ふみちゃんとすれ違えてそのキラキラした笑顔のおかげでパワーを振り絞れました。
 グラウンドが見えてくると、ここまで来た、もう大丈夫。そう確信して走りました。
 お母さんやのぞみちゃんの姿が見えてきました。お母さんは電話をしながら「そなが来たよ!」と、ゴールで待っているお父さんへ伝えてくれていました。
 グラウンドに入ると、うたなちゃんの姿が見えました、みゆちゃんや、のりこちゃんやももちゃんが大きな声で自分の名前を呼んで応援してくれて、最後のグラウンドの2周は、重かった足も軽くなり、着実に前へ前へと進めることができました。ゴールテープを張ってくれていた、かのんちゃんとなるちゃんがもうすぐそばに居ました。

 ゴールテープをきると、マラソン前夜の集合で打ち合わせしていた通りお父さんとハグしました。ぐっと抱きしめてくれた瞬間に涙がどっと出てきそうになりました。
 もしかしたらだめかもしれない。走りきると宣言したけどそれが現実のものにならないかもしれない。不安な気持ちもありながらも皆の力を借りてようやくここまでこれた。
 脚を引きずる自分を介抱してくれながら、ふみちゃんがベンチのほうへと誘導してくれて、椅子に座らせてもらうとスタッフの方がシューズに着けたチップを外してくださいました。
 まことちゃんが、完走証をもらいに行くんだよと教えてくれて、なのはなの皆の顔を見られるだけですごく嬉しくて、ほっとして、安心した思いと、ああ本当に走り切れたんだあという思い、いろんな気持ちが重なり合って、涙がぽろぽろ出てきました。
 そして帰ってきたさやねちゃんとハグをしました。完走証を頂く際にも思わず涙が出てきてしまって、そこでもスタッフの方は、よく頑張ったね、お疲れ様、と優しく声をかけてくださいました。
 走っている間は一度も行かなかったお手洗いに行って、座った瞬間、脚全体がじわーっとしびれていくのを感じました。この脚で、ちゃんと自分の身体で走ったんだ! 走れたことの実感が湧きました。

 ふみちゃんと共に、
「なんだか荷が下りたような感じがする、安心した」
 と話しながら車のほうに行きました。
 りなちゃんがカメラを向けて、走った感想のインタビューを撮ってくれました。そしてお待ちかねのマラソン弁当を手渡してくれました。
 お重いっぱいに溢れるほどに、ご飯が詰められていました。お稲荷さん、巻き寿司、ウインナー、唐揚げ、卵焼き、ほうれん草の胡麻和え、味噌ピー、オレンジ。
 お弁当はキラキラ輝いていて、台所さんとお仕事組さんの心遣いがすごく嬉しかったです。
 車内に入ると既にゴールしてお弁当を食べながら、仲睦まじく笑顔いっぱいの皆の姿がありました。皆の一人ひとりの顔を見ると、それだけですごくほっとして、緊張の糸が解けたのだと思います。涙がどんどん出てきて、声に出してしまうほどひたすらに泣きました。
 まことちゃんは、お茶いる? と近くに来てくれて、りなちゃんはその隣で自分の様子をビデオに収めてくれていました。
 お弁当の美味しさは格別でした。そしてあんなにも心にまで染み渡った食事は人生で初めてでした。
 まなかちゃんが、
「お疲れ様、本当によく頑張ったよ」
 と言ってそばに来てくれました。その温かさに胸がいっぱいいっぱいでした。

 着替えを済ませて、ひろちゃんと共にグラウンドに向かいました。
 帰ってきた、あやちゃんやどれみちゃんに声援を送っているとまた涙がでてきて、もう思うまま泣きながら必死に応援しました。

 

■利他心の空気

 皆とタオルをつないでゴールテープをつくって、りゅうさんの双子である寧君とつきちゃんの帰りを待ちました。
 なのはな以外の参加者の方も数人帰ってきて、帰ってこられるたびに皆と手でアーチを作って帰りを待ち受けました。
 なのはなの皆全員が参加者の方全員を応援しようという強い気持ちがあって、その利他心一杯のすごい幸せな空気で溢れていて、その空間そのものが本当に素晴らしくなによりも幸せなものでした。
 応援うちわを作ってくれた相川さん、応援に来てくれた永禮さん、卒業生のゆきちゃん、えみちゃん、まゆみちゃん。
 広い広いなのはなの輪が、フルマラソン当日も皆の気持ちが欠けることなく、等しくつながりあっていました。

 今回のフルマラソン大会で、加茂の方々やなのはなの皆の声援のおかげで走れた。完走できたこともちろんすごく嬉しかったです。
 ですが、随所に感じられた利他心の空気がなによりも幸せなものだった。そう強く思います。
 この感想文は翌日に書きましたが、昨日は1日中いろんな気持ちでずっと頭と胸がいっぱいで、すごく精神的にもあたふたしていた日でした。あんなにも心が忙しかった日は久しぶりでした。
 本当にかけがえのない、一生忘れたくない最高な日になりました。