「42.195kmの旅」 ほのか

4月20日

 お父さん、お母さん、ああ、何から書けばよいのでしょうか。
 42.195kmの旅は一冊の本にまとめたいくらい濃密で、ドラマの連続でした。
 今日の日記では簡単にまとめて、感想文にしっかり書き連ねようと思います。

 まず、今日みんなとスタートラインに立てたこと。
 お父さんお母さんをはじめ、スタッフさん、ミーティングでの気づき、会合でお話させてもらう時間…たくさんの助けがあって今日があったと思います。
 大会本番直前まで上がったり下がったりの不安定な私は、お父さんの心配の種だったと思います。
 最後まで私は走れるだろうかと、自分でも自分にに対して半信半疑な気持ちで今日まで来ました。

「神様…わたしはもうあなたに対して何の隠し事も嘘もありません。今のわたしが全てです。どうか42.195キロ走らせてください…」

 祈るような気持ちでスタートラインに立ちました。もし完走できなかったのなら、今の心持ちが何かしら間違っているんだろうと受け止める気持ちでいました。それと同時にもし完走できたのなら、今の心持ちは正しいのだということの裏付けにも繋がるのではないかと思いました。

 なのはなのみんなを頼りに走り出した序盤。
 時速8kmを死守して着実に進んでいきました。
 沿道の方々の暖かさと、名前を呼びながら応援してくださったあゆちゃん…まなかちゃん…応援組のみんなの声援が本当に嬉しかったです。
車内で私が不安を漏らしていたことを聞いていたなるちゃんは、「今時速7.5kmくらい!良いペースだよ!!」とタイム表を毎回教えてくれました。
 自分のコンディション、疲れの評価が正しくできないと思ったこともあり、どんなに脚が軽くても、重くても、時速8kmを徹底して走り進めました。

 各地点を通過するごとに時計を見ると、手に書いたタイム表とほぼ一致していました。
 はじめはなのはなの子たちと集団で走っていたのですが、だんだんと一人になっていき、折り返し付近からは周囲には知らない男性しかいなくなっていました。
 これは、不安だぞという気持ちと、早くみんなに会いたいという気持ちで復路からは自然と加速していきました。

 ふと、お父さんに言っていただいたことを思い出しました。

「おまえは、孤独なんだよ。言ってみたらおまえにとってなのはなは不利な状況なんだよ。それでも、神様はその人にしかできない細い道を用意しているんだ。寂しくても、自分に与えられた使命を全うする気持ちでいたらいいんだよ。」
 その言葉を思うと、不安な気持ちが薄れていきました。
 どんなに身体がしんどくても、なのはなの子として、笑顔で、淡々と、背筋を正して走ろう。と思うと、自分が自分じゃないみたいにどこからか力がわき出てきました。

「ほのかすごいな」「ゴールで待ってるからね」
 25km地点前を走っているときに、お父さんお母さんがインスパイアから声をかけてくださったとき、ものすごくパワーをいただきました。

「絶対にゴールまで行きます!!」

 そう叫ばずにはいられなかったです。

 残り10kmからは1km、1kmが長く一番きつく感じました。ですが、今の私の心は整然としていて雑味が汗と共に流れ落ちていっているような感覚があり、最後まで淡々と走り続けることができました。

 ゴール付近では、お母さんとお父さんが待っていてくださいました。
 お父さんに抱きついた瞬間、今まで自分に蔓延っていた不安と緊張と守る気持ちがぶわっと崩れて、泣き崩れました。

「よくやった。」
 お父さんの両腕がぐっと力強く私を支えました。言葉では言い表せない安心感でした。
 グラウンドの外に出ると、ビデオカメラを持ったあゆちゃんが駆け寄ってハグしてくれました。立っていられないくらい脚が痛かったのですが、あゆちゃんの笑顔を見るとすごく嬉しくて安心しました。

「私、完走できたんだ」

 少しずつその実感がこみ上げてきて、涙が溢れました。
 目をこすると顔に吹き出した塩が入って、余計に涙が出ました。

 

 今日走りきることができたのは、自分の力では無いと思っています。
 たくさんの方の応援と、お父さんお母さんの言葉、なのはなのみんな、なのはなで泣いたり笑ったり悩んだりの日常があって、今日まで来ることができました。

 自分を透明にして見えてくる景色は鮮明で、優しい気持ちが溢れていて、自分もみんなも嬉しくなるような空間でした。
 

 フルマラソンを完走できたこと。
 それをひとつの材料にして、明日からもできることをがんばります。