なのはなベーカリー、パン作り大会が開催! 一月二十三日は、なのはなファミリーのお母さんの誕生日。
そして、二十六日に行われたのは、お母さんの誕生日会、内容はパン作りでした! お母さんの大好きなメロンパンとコッペパンをチームごとに作り、どのチームが一番おいしいか、お母さんお父さんに採点してもらう、というものでした。なのはなファミリーでパンを作るのは初めて。私自身もパンを作るのは初めてで、ハラハラドキドキしながら、この日を迎えました。
■人生で初めての体験
お誕生日会当日、みんなで朝七時四十五分に家庭科室に集合し、パン作りが始まりました。パンは発酵させる工程が二回あるので、お昼ご飯に食べようとしたら、朝早くから作りはじめないと間に合いませんでした。私たちのチームは、コッペパンを作る人とメロンパンを作る人に分かれて、作りました。
私は、ふみちゃん、うたなちゃんとコッペパンを作りました。強力粉、イースト菌……人生で初めて扱うものばかりでした。それらを混ぜ合わせ、こね合わせていきます。
前日に、パン作りのベテランである、そなちゃんにパン生地をこねるときのポイントをたくさん聞いて、勉強していたので、注意するべきことやこうしたほうがいい、などは、よくわかりました。しかし、実際にパン生地をこね合わせてみると生地がべとべと手につき、ものすごくまとまりにくかったです。
動画でパン職人がのばしこね、叩きこね、V字こねをするものをチームのみんなでたくさん見たはずなのに、思った通りにはいきませんでした。しかし、ふみちゃんが机に押し付け、のばし、机にたたきつける。そんなことをしたら、一気にパン生地がまとまり始め、すごくもちもちになっていきました。その姿の変わりように、私とうたなちゃんは立ち尽くし、驚きを隠すことができませんでした。
それと同時に改めて、ふみちゃんパワーは偉大だと感じました。ふみちゃんは、こねるコツを一瞬でつかみ、私には難しくてできなかったV字こねも、すごくなれた手つきでやり始めました。その姿はまるで、経験者かと疑うくらいに慣れていて、どのような場でもすぐプロになれるふみちゃんに惚れ惚れしました。ふみちゃんのこねたパン生地を触ってみると、ものすごくぷにぷにしていて、柔らかく、うたなちゃんと二人で歓声をあげて目を輝かせました。
■お母さんへの愛を込めて
パン生地にはこねがとても大切で、しっかりこねないと柔らかくならない、生地を薄く伸ばしてグルテン膜というものができたらこね完了の合図、ということをそなちゃんから教えてもらいました。他のチームも必死になってこねていて、お母さんへの愛を叫びながらこねてるチーム、プロのように素早くパン生地を扱うチームもあれば、手や机に生地がべとべとついて、苦戦しているチームもありました。どのチームもすごく楽しそうで、家庭科室には明るい笑い声や歓声が響き渡り、とても楽しい時間でした。その後は九時から十時の一時間で、こねた生地をこたつの中で一次発酵させました。
その間に朝ご飯を食べたり、掃除をしたりして十時に家庭科室に行くと、ふみちゃんの手にあったのは、二倍ほどに膨らんだ、丸くてつるつるのパン生地。チームのみんなが、「見てこれー!」と言ってキラキラした笑顔で見せに来てくれて、その笑顔にも、すごくうれしくなりました。一次発酵が終わると、それを八分割にして形を作り始めます。
コッペパンは分割した生地を麺棒でのばし、三つ折りにして形を成形しました。
成形したりするのは私の得意分野。一つひとつ丁寧に、指跡をつけないように、しわのないように、気持ちを込めて成形していきました。
横で見ていたふみちゃんが、「きれい!! 」と言って喜んでくれて、ものすごくうれしくなりました。コッペパンはメロンパンより作る工程が少なかったので、早く終わりメロンパン作りもお手伝いしました。
奇麗にまるめられた生地の上にクッキー生地をのせ、網目をつけていきました。これが結構難しく、あまり力が強すぎると割れてしまうし、弱すぎても網目が薄すぎて目立たないので程よい力加減が必要でした。
奇麗に線がつくと、ものすごく気持ちが良くて、癖になりました。お母さんはクッキー生地が大好きなので、なるべくクッキー生地を楽しめるように私たちのチームはクッキー生地の上にクッキー生地で作ったお花をのせることにしました。理想として、焼いたときに上のお花がカリカリのクッキー生地になったらいいな、という願いを込めてつけました。
他のチームも、コッペパンをお花や蜂の形にしたり、小さいサイズのメロンパンをたくさん作っていたり。どのチームも彩り豊かで作っている姿を見ているだけで面白かったです。
■自画像と手紙
パン生地を成形したあとは、二次発酵が始まりました。再び、こたつの中で一時間ほどパンを休ませ、その間にお母さんへ送る自画像のカードを作成しました。鏡を見て自分の顔を描き、その紙の裏にはお母さんへのお手紙を書きました。私は、自画像を描くのは初めてで、かけるか不安でした。しかし、やってみると意外と楽しくて、自分の顔を観察していると新たな発見があり、描いているとなんだか面白くなっていきました。
裏に書く、お母さんへのお手紙も、自分の気持ちや感謝の気持ち、お母さんへの愛をたくさん伝えることができてうれしかったです。他のみんなも一生懸命書いていて、みんなでお母さんが喜んでくれたらいいな、という気持ちで書けたのが、とてもうれしかったです。このみんなの気持ちが、お母さんに伝わったらいいなと思います。
二次発酵が終わる時間になり、パンの様子を見にチームのみんなでこたつをのぞきに行きました。すると、またびっくりすることに生地が膨れ上がっていて、チームのみんなと感激しました。発酵させると必ず膨れあがってくれて、そのパン生地がなんだかけなげでかわいく感じました。
二次発酵が終わると、順番にパンを焼き始めました。台所の大きなオーブンで香ばしいにおいを漂わせながら、ふわっと膨れ上がるパンたち。パンはこんがりときつね色になっていき、だんだんとパンの焼きあがる香ばしい幸せな香りが台所中、廊下にまで漂い始めます。
その香りを嗅いで、みんなで、「幸せ〜、いい香り〜」と言い合いながらうっとりした時間がすごく幸せでした。さらに、数分後にはものすごくきれいに焼き目のついたパンたちが台所から運ばれてきて、その姿を間近で見ると本当においしそうで、奇麗で、みんなで「わあーー!!! 」と歓声をあげました。どのチームのパンも本当に本当においしそうで、膨らまなかったり、焦がしたり、くっついたり、失敗したチームは一つもありませんでした。正直、そのことにもすごく驚いて、なのはなファミリーでこのようにパンを作るのは初めてだったのでなおさら、びっくりしました。
焼き終わた後は、最終段階に入り、トッピングをし始めました。私たちのチームはお花をモチーフにしていたので、コッペパンに切り込みを入れ、ホイップクリームと薄黄色の桃ジャムを交互に入れて桃の花をイメージしてトッピングしました。
その時間はすごく楽しくて丁寧にきれいになるように盛り付けしていくのが、お母さんへの気持ちをたくさん込めることができているような気がして、すごくうれしくなりました。トッピングの材料はかなり豊富で、ジャムの種類は五種類以上。なので、チームごとにトッピングの仕方はかなり違っていて、コッペパンにホイップ山盛りだったり、反対にメロンパンにホイップを入れていたり、蜂の形のコッペパンに黒ゴマジャムで模様を描いていたり。八チームもあるのに、まったく形態が違っていて、すごく面白かったです。
■パンが集結
パンのトッピングが終わると、プレートに盛り付けて、食堂に運びました。食堂に入った瞬間、思わず大きな歓声をあげてしまいました。机に並べられていたのは大きなバケット。その中にはみんなが作ったパンが並べられ、まるでパン屋さんのようでした。その前にはチームごとに作ったお母さんお父さんへのプレートが並べられ、そのプレートは本当に本当に本格的でした。
切り株にお父さんとお母さんの似顔絵を描いてパンと一緒に並べられていたり、パンにおめでとうの旗が刺さり、お花がちりばめてあるチームもあれば、パンを花束のようにきれいな紙で包んでいたり。
一つひとつのチームでまったく違うけれど、それぞれ良さが盛りだくさん、びっくりするほどきれいで可愛かったです。食堂の飾りつけも、とても本格的で、赤と白の旗がつけられ、そこにはほしちゃん作の本物みたいなパンの絵が飾られていました。お父さんとお母さんも食堂に来て、びっくり。目を真ん丸にさせて、パン屋さんで買ってきたんじゃないのか、と疑うほどでした。本当にどのチームも美味しそう、見た目もすごくきれいで本当にすごかったです。
それぞれのチームのパンを一通り見た後、お母さんとお父さんが一つひとつのプレートを観察、試食し採点が始まりました。お母さんとお父さんが、どのチームのパンもとてもおいしそうに幸せそうに食べている姿を見て幸せな気持ちでいっぱいになりました。
一口食べるごとに、「うまい!! 」「ふわっふわ! おいしい〜 !」とおっしゃっていて、その姿を見るだけですごく心が癒されたし、採点もほとんどのチームが百点で、お母さんお父さんの優しさがすごく感じられました。お母さんが、大好きなメロンパンを口いっぱいに入れて「幸せ」と言っている姿を見て、私は心からうれしかったです。
その後、みんなでいただきますをして、実際に自分たちが作ったパンを食べました。食べてみると、生地はもちもちしっとり、メロンパンのクッキー生地はカリカリで、本当に美味しかったです。みんなで「美味しいね」と言い合いながら食べられた時間がとても幸せでした。
食べているとき、みんなの顔は笑顔でいっぱいで、お母さんお父さん、なのはなファミリーのみんなが笑顔で、本当に本当にうれしかったです。私は、なのはなに来るまで、みんなで美味しさを共有したことはなかったし、美味しいとかそんな感覚もよくわからなくて、食事に関して嫌な気持ちしかありませんでした。だけど今は、なのはなファミリーという大きな家族と、美味しさをたくさん共有してたくさん喜び合って、ただそのことが、ものすごくうれしくてうれしくて、仕方ありませんでした。
ここに来るまでは、他の人と違うものを食べる不安もあって、この日、他のチームとは、材料は同じとはいえまったく違うカラーのパンを食べたけれど、全然平気でした。むしろ、自分で一生懸命作ったパンを食べることができて、チームのみんなと、「ここをこうしたから、ここが柔らかいね」と言い合えた時間がすごくうれしかったです。なのはなのみんながいてくれるから、自分がどんどん変化していくことができて、本当にうれしくてありがたくて、たくさん幸せを感じました。
食べ終わると、お父さんお母さんが三位までを発表してくれました。実行委員さんが作ったパン作り用のトロフィーも用意されていて、これもまた本格的でした。私たちのチームは三位までに入ることができなかったけど、入賞したみんなは本当に輝いた笑顔でトロフィーをもって笑っていて、その姿にすごく癒されました。チームのみんなで協力して何かを作るって本当にうれしくて楽しいことだなと改めて実感しました。
その後はお母さんクイズをしたりして時間を過ごしました。たくさん、お母さんの知らなかった部分を知ることができてうれしかったです。
この日一日、私は本当に幸せでした。パン、というものは摂食障害の私にとってあまりいい思い出はありませんでした。だけど、そのイメージはこの日一日で塗り替えられました。みんなで協力しておいしいパンを作る、食べておいしさを共有する。
ただそのことが本当にうれしくて幸せで、心がいっぱいになりました。お母さんも、「今日一日大好きなメロンパンがたくさん食べられて幸せだった」とおっしゃっていて、その幸せそうな笑顔に私も、とてもうれしくなりました。この日一日、お母さんのために、お母さんが喜ぶ一日になるようにみんなで作ったり、飾ったりする時間が本当にうれしかったです。そしてお母さんが本当に喜んでくれて、たくさんお母さんの笑顔を見ることができて、本当に幸せでした。
お母さん、お誕生日おめでとうございます。お母さんに出会えて、お父さん、そしてなのはなのみんなにも出会うことができて、私は本当に今、幸せです。お母さんのように、強く、優しく、笑顔いっぱいで生きていきます。お母さんのことが大好きです。