なのはなに来て初めてのお正月。初めて体験する楽しさの連続で、毎日が幸せな気持ちと充実感で満たされます。
コンサートが終わり、古吉野なのはなが一気に年末モードになりました。大掃除を終えた次の日から三日間にわたって、チームに分かれてのおせち作りが始まりました。
料理は全部で十二品目。そのうち、私は今回「エビの甘煮」と「たたきごぼう」をチームのみんなと担当しました。
初日は材料集めから。みんなでエプロンを着て集合すると、家庭科室がぎゅうぎゅうになりました。
みりん、さけ、さとう……など、たくさんのボトルに入った調味料から、煮しめ用の野菜まで、家庭科室にはたくさんの食材が並んでおり、お正月が間近に迫っていることを感じました。
■ゴボウを叩く
そして翌日。
午前中は、お正月遊びの準備をしつつ、お昼前に農産倉庫前でゴボウを洗いました。
ゴボウを水につけてこすると、茶色いゴボウが一気に真っ白になり、ゴボウってこんなに白かったかな……? と思うほどでした。ゴボウが長いと、酢水の入った食管に入りきらないため、よしえちゃんが程よい長さにカットしてくれました。ゴボウは皮をむいた後、酢水にさらさないと、茶色く変色してしまうそうです。
午後からは調理に入りました。
まずはゴボウを酢水から引き上げて、叩きます。
叩く目的としては、味が染みこみやすくするためで、叩く、ということは開運の象徴でもあるそうです。
思ったよりゴボウが柔らかく、力を抜かないとゴボウがすぐに折れてしまいました。
叩いてひびが入ったことを確認したら、次はカットです。
程よい長さにカットされたゴボウをさらに一口サイズの四〜五センチの長さに切ります。このとき難しかったのは、太さです。ゴボウは場所によって太さが異なるため、太いところは四〜五センチにカットした後、さらに二等分する必要がありました。
まりのちゃんが手際よく、無駄な動きを一切せずに素早くカットを進めていたのがすごくかっこよかったです。
■冷めると味が変わる
次はいよいよ、茹でます。
根菜は水から茹でるので、沸騰する前から鍋にゴボウを入れておきます。
待っている間には、河上さんと他のチームの人と、ユズ大根用の皮むきやカットをしました。大根の皮むきをして、まず包丁の切れ味の良さに驚きました。普段私たちがよく目にする文化包丁とは違い、刃先が四角い形状でした。「菜切り包丁」というそうです。
大根は首もとの青いところが残らないように、厚めにむくと良いと、よしえちゃんが教えてくれました。
大根を真ん中で半分にカットしたものを皮むきしました。上半分は比較的皮がむきにくく感じたのですが、下半分はするするとなめらかにむくことができました。
それをりゅうさんたちが拍子木切りにカットしてくれました。
そうしている間にゴボウが茹で上がりました。
茹で上がったゴボウを、まだ熱いうちにあえておいた調味液とあえます。
調味液は、砂糖、酢、醤油をあえたのですが、このとき、入れる順番は砂糖が一番最初で、さしすせそ(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)の順番で入れていくということを教えてもらいました。砂糖を先に入れないと、醤油を入れた後からでは後から砂糖をいくら入れても甘くならないそうです。
まだ湯気の立っているゆでたてのゴボウをあえると、すごくおいしそうな香りがしました。そこに、ふみちゃんがすってくれたすりごまを投入すると、汁気のあった調味液にすりごまが染み渡り、一気にゴマの香ばしさで包み込まれました。
ここで一欠片だけ、ふみちゃんとよしえちゃんと味見をしてみました。最初に食べた感想は三人とも「少し酸っぱい……?」という感じでしたが、冷めると味が染みこんでまた変わるそうなので、後日調整をすることになりました。
翌日、河上さんに味見をしていただいたところOKが出て、たたきゴボウが完成しました!
■長寿を願うエビ
その日は、エビの甘煮を作りました。
エビは、腰が曲がっているので、「腰が曲がるまで長生きできますように」と長寿を願う気持ちが込められています。
頭がついていて、大きさはだいたい十センチ〜十五センチくらいの、大きなオレンジ色のエビでした。
まず、背わたの取り方を河上さんに教えていただきました。
エビの腰が曲がっているところ(だいたい第二関節くらいのところ)の上から五ミリくらいの位置に爪楊枝を突き刺して、そこから爪楊枝をくるくる回転させるように上に引き上げると、エビの中に入っていた背わただけが綺麗に取れます。このとき、解凍が不十分だと背わたが切れてしまうそうなので、予めしっかりと解凍を済ませておく必要があるそうです。
この背わた取りが本当に楽しくて、ずっとやっていたいくらいでした。
「なんだかエビの外科医になったみたい」と言うと、なっちゃんが笑っていました。
頭が取れないようにとかなり緊張していましたが、背わた取りの段階では負傷者が〇で、このまま無傷でいきたい……! と思っていました。
するとここで悲劇が……。
茹でている間に、ぼこぼこと沸騰するお湯にあおられてエビの頭が、二尾取れてしまったのです……。たった二尾、されど二尾、かなり悔しかったです。
気持ちを切り替えて、それ以上の損害を出さないように、集中して最後まで見守りました。エビは、一分〜一分三十秒くらいで茹で上がりました。透明のオレンジだった色が、パステルカラーのオレンジ色に変わりました。
塩ゆでしただけでもエビの風味が湯気とともに立ち込めて、お寿司屋さんの海老汁のような香りがしました。
最後はいよいよ煮込みの工程に入ります。
調味液を沸騰させておき、そこにエビを慎重に入れていきました。エビに対して調味液が少ないような気がしたのですが、「煮込むときは落としぶたをして平べったい鍋を使えば、調味液を被らなくても味が染みこむ」と河上さんに教えていただきました。
二分程度、火に掛けた後はコンロから降ろして熱が取れるのを待ち、冷めた頃にタッパーに入れて完成です。
完成したおせちはすごく綺麗で、つやつやしていて、宝石箱でした。それぞれの盛りつけから、詰めてくれた人の思いが伝わってきて食べてしまうのがもったいなく感じました。
みんなで作ったおせちは、みんなで作った楽しい時間が蘇ってきて、よりおいしく感じました。また、ひろこちゃんが黒板に一面に書いてくれたそれぞれに込められた意味も知ることができて、ありがたかったです。