【新春号③】「コンサートを通して得た希望 ―― 「ちぐさ」として舞台に立って ――」そな

  
 ホールでお客さんが実際にいる中で初めて舞台に立ってみて、今までの練習よりも大きなやりがいを感じました。

 行きの車で、やよいちゃんが、お客さんがいらっしゃると、その人達からの反応が返ってきて、それが凄く嬉しいんだよと教えてくれて、とてもワクワクした気持ちでホールに向かいました。

 お客さんとアーティストの間に音楽がある。演者や演じるものが同じでもお客さんの雰囲気で会場の空気は変わってくる。というお話を聞いて、今日来てくれるお客さんはどんな人なのか、伝えたい気持ちをしっかり受け取ってもらえるような温かい人達であってほしいと願いました。

■全部の過程を楽しむ

 昼食時は卒業生の方含め、皆のコメントを聞いてなのはなファミリーの偉大さを感じました。たくさんの人が救われていて、救われるだけじゃなく努力次第で普通以上のグレードで生活ができるようになる。自分もそうありたいなと改めて強く感じたし、なのはなでの生活を本当に好きな子が多いということも実感しました。

  
   
 ウィンターコンサートはとても愛されていて、今日の本番を楽しみにしてきた人もたくさんいる。その方たちのためにも自分のできる事を精一杯頑張りたいなと強く思いました。

 失敗して引きずっても意味がない。もしなにかあっても次のことに目を向けてできることを頑張ろう。そして全部の過程を楽しもうという気でステージに立ちました。

 私は今回のウィンターコンサートで、主人公たちの一人、ちぐさを演じました。自信をもって、最後まで堂々と、強い気持ちをもって舞台に立てたのは、皆の存在があったからだと思います。普段から顔を見ている人が近くに必ずいて、その安心感、心強さからほとんど緊張する事無く、穏やかな気持ちでずっといられました。

 シーンごとに拍手や笑いが起きて、そのたびに何とも言えない気持ちになりました。

■何事にも代え難い幸せ

 こんな感情があるんだ、もっと味わいたい! 誰かに自分を見せて、反応してもらえるってこんなにワクワクするものなんだ! と、やよいちゃんの言っていた言葉がすぐに実感できました。特に『アウェイク』のシーンで、たくさんの笑いが起きたときは、お笑い芸人を目指す人の気持ちがとてもよく分かりました。どんな形であろうと人を笑顔にできたり笑ってもらえる事は何事にも代えが難いような幸せがつまっている。

 昔の自分はそんな希望、夢をもっていました。お医者さんのように人を助ける仕事というより、ダンスや歌で人を魅了できるような人を喜ばせられる仕事に就きたいなという淡い理想を幼いながらに持っていました。
  

   
 しかし中学生の頃、塾の帰り道にそれとなく、

「大人になったら本当はアイドルとか、テレビに出れるような仕事をしたいな」

 と言うと、母に真っ向からその理想を否定され、変なことを言ってしまったと、いろんな思いが頭を駆け巡りました。塾に行かせてもらっているのにそんな夢を持っているのかと失望されたかも、恥ずかしい、自分の本当の気持ちや理想を伝える事はダメなことで隠さないと、そもそもの物事に対する自分の感じ方を根本的な部分から変えなくてはいけない、勉強以外のことに現を抜かすなんて許されない、ガリ勉でいなければ、エンターテイナーになるなんてそんな希望を持つのは恥だ、自分の本当の想いは全部隠さないといけない。

 それ以降は、ただ、真面目に堅実に生きることが美学である。個性なんて許されない、ただただ勉強だけを頑張っていい高校、大学を目指して普通の会社員になることが親に求められている事なんだと大きな勘違いをし、以降、友人関係も切り捨てて自分の世界にこもって、学校ではほとんどの時間を一人で過ごすようになりました。

 私語を慎みなさいと先生に注意を受けなくとも、密かにチェックされているかもしれないと思うと内申点に響くことが怖かったからです。

   
  
 そこから、コンサート当日の発見があるまでの時間。つまらない生き方だったかもしれないけど、コンサートの練習期間含め、舞台でまた昔の希望を持った生き方が新たに蘇ってきていると思うと、過去の自分なんてどうでもいいし、これからどんな形で自分は幸せになっていけるのか、どんな道に進んで、人に幸せをもたらせる人間になれるのか、どう成長していけるか、楽しみが盛りだくさんです。こんな気持ちで生きられる今、この瞬間そのものが幸せです。

 本当の生き方ではなかったかもしれないけどその時間があったからこその今だと思うと、その期間は無駄ではなかったと思えるし、自分がこれから強く生きていくためにも、誰かを救うためにも、そしてこれ以上痛む人をふやさずに世界が回っていけるようにするためにも必要な時間であったと思えます。

 皆とコンサートに向かうことができた時間、本番の空気。全てが宝になりました。

 皆の、何にも負けないようなエネルギーを持つパフォーマンスに何度も救われてきました。コンサート期間に与えてもらったこの希望、本当の生き方を、次は自分がまだ見ぬ誰かに繋げられる人になりたいです。

 ただ息をしているだけだった過去の自分と同じような状況にいる人を救って希望を持った生き方へ導けるように。

■生きる意味を見つけて

 コンサート自体は終わってしまったけど古吉野での生活はこれからも続くし、さらに上の段階に上っていけるように前向きな気持ちを失わずに生きたいです。
  

  

「この世の中の流れを変えていきましょう」という思いを強く訴えることができて、どうして私が苦しまなければいけなかったのかという、これまで感じてきた怒りもぶつけられて、今は晴れ晴れとした気持ちです。

 自分は社会のレールから外れてしまった負け組なんかじゃない。レールのゆがみに気づいて早くに降りた。レールそのものを正しい形に、あるべき方向にもっていくという任務を与えてもらい、その為に生かせてもらっている。

 生きる意味がずっと分からないままだったけど、今は生きやすい社会を作ることに貢献することが自分の生きる意味だと、胸を張って言えます。
  

   
 まだ自分を良くしていかなければいけない段階で、実質的な意味で社会の役には立ててないけど、いつかちゃんと社会を良くしていける人間になるためにも、なのはなの利他心、考えをきちんと身に着けて、広い視野をもって生きられるように、できることをしっかりやっていきたいです。