十二月二十二日の、私達のコンサートまで一か月を切りました。ダンス、コーラス、バンド、一人ひとり役割は違っていても、誰一人として欠けることなく、コンサートに向かって、気持ちを一つにして過ごす期間、練習する過程が、とても好きだなと思います。
私は、今年のコンサートで、バンド演奏のベースを担当します。コンサートでは、ボーカルの入った曲だけでなく、アンサンブル演奏、和太鼓など様々な曲を演奏しますが、そのうち、バンドで演奏する曲は、全部で十七曲ほどあります。
そのほとんどが、コンサートに初披露するために、初めて練習する新曲です。さとみちゃんをはじめ、自分たちで音を取って、楽譜を作るところから始めました。十月から練習を始めて、今は、バンドメンバー全員で合わせながら完成度を高めていっています。
■大きな繋がりの中で
今年からベースを始めて、最初は、その楽器の持つ特性や、良いところ、全体の中での役割を、理解しきれていませんでした。でも、合わせをするなかで、あゆちゃんから、「ベースはドラムと同じように基礎を作る役割なんだよ」と教えてもらい、自分の出す音への責任の意識が、変わりました。
一曲を作るために、ボーカル、コーラス、キーボード、ギター、ドラム……、色んなパートがあわさって、曲によって四人〜十人ほどで音を作るけれど、その誰が欠けても成立しなくて、それぞれが影響しあっているんだな、と思います。音色が違ったり、音域が違ったり、それぞれの楽器が担っている役割は違っています。
それだからこそ、パズルのピースを埋めるように、補いあっていて、自分のその一部なのだ、と思うと、勇気が湧いてきます。また、バンド内だけではなく、その曲を踊るダンサーとも密接につながっているということも、通し練習をする中で、強く感じました。
ステージの上では、全部繋がって、一つの表現をしていて、ダンサーが踊りやすいような演奏にするためには、どこで、誰がどんな動きをしているか、ダンサーと同じように、把握することが大切だと思いました。
大きな繋がりの中で見ると、ダンスであっても、バンドであっても、それは手段の一つでしかなくて、表現したいものは、たった一つなんだな、と思うと、心配、不安などの雑味が削ぎ落されて、理想だけが、自分の中に残るような気がしました。
音にプランを持つこと、理想を持つと、本当に、その音になっていくんだ、と練習する過程で感じます。
どんなに完成まで先が遠く感じても、理想さえ強く強く求めていたら、絶対に挫けることはないし、その理想に向かう過程で起こる失敗、間違いは、全部無駄にはならないのだと感じました。一音一音の単位で、理想を持って、こんな音を出したい、もっと良くしたい、磨いていくことは、全体を引き上げることに繋がるんだ、と思いました。
バンドメンバーで毎日夜の時間に音楽室で、毎日一,二曲ずつ習慣練習をしています。体育館で合わせる時と、音楽室で合わせる時とでは、聞こえ方も違ったり、音楽室の方が、密集して音を出しているので、どのパートがどんな音を出しているのか、構成が体育館の時よりも、とても分かりやすくなります。
そのため、主役となるパートが分かりやすくて、より曲の編成の理解が深まります。
自分のパートだけでなく、他の楽器の音を聞いて、自分事として、アドバイスしあえる時間が、とても嬉しいなと思います。
合わせの時間をたくさん取るようになって、演奏中に、目の前の楽譜に集中して必死になるよりも、他の楽器の音を聞いて、シンクロさせたり、重ねたり、あるいは心の中で同じように主旋律を歌ったりすることが、出来るようになりました。とても演奏がしやすくなって、楽しい、と心から思いました。
綺麗な音を出すことは、ステージの上だけの意識で出来ることではないと、思いました。
「演奏者の心意気、高い精神性まで、自分の引き上げないといけない。そうじゃないと、原曲の通りの音は出すことはできないよ」
■日々の心持ち
オープニング曲、クイーンの『フー・ウォンツ・トゥ・リヴ・フォーエバー』をうまく原曲の通りに弾くことが出来なかったときに、あゆちゃんが話してくれました。足りていなかったのは、練習時間ではなく、日々の心持ちだったのだ、と気が付きました。
日々の生活に転がっている、小さなディティールに、全てが宿っているんだと、知りました。当たり前のことのようだけれど、そのことを抜きにして、忘れたら、ステージの上で表現するものはなにもない、と思いました。
日々の、誰も見ていないようなところで、どれだけ自分の役割に、真面目に、誠実に取り組むか。小さなことにも手を抜かず、謙虚な気持ちで生きれるか。その毎日の積み重ねが、全部音に出るのだと思いました。音も、究極は、手段なのだと思いました。
何を伝えたいか、どう生きたいか、その何にも代えられない一本の太い軸が全てで、それはステージの上ではなく、今この瞬間、生きている間ずっと、誰であっても表現し続けるものなのだと思いました。
コンサートの練習期間を通して、全員で、毎日を洗練させて、全員で、お互いを引き上げられる過程に、意味のある時間にしていきたいです。