【12月号③】「 すべての答えが詰まった脚本 ―― 演劇練習とお父さんの演技指導 ――」みつき

お父さんによる演技指導

 

 朝起きてから、夜眠るときまで、手には脚本。頭の中にも、ずっとウィンターコンサートの脚本があります。

 演劇練習になると、キャラクターに変身して、なおちゃんは「あさぎ先輩」、やよいちゃんは「お嬢様」、そなちゃんは「ちぐさちゃん」と、自然にみんなで呼び合っています。わたしも「もえぎくん」と呼ばれることが嬉しくて、主要役者の四人で過ごす時間が幸せです。

 お父さんから演技指導もしていただいて、修正をしていくと、どんどんとシーンが良くなっていくのを感じています。

 練習をしていると、セリフを言っている人も、言わずに聞いている人も、同じくらいに重要。むしろ聞いている人のほうが重要なのではないか、と感じるようになりました。

 話している人を立たせるように、見える身体の面積を減らしたり後ろに下がること、表情やしぐさで反応をすることなど、気を付けるべきポイントは多く、ずっと気が抜けることはありません。

■身体の向き一つで

 お父さんが、「耳が不自由な人が居たとして、その人が見ても、今どんな話をしているか分かるくらいにしたいんだよ」と話してくださいました。

 お父さんのように、「お客さんが見やすいように、聞きやすいように、分かりやすいように」という気持ちで演劇を作っていかなければいけないな、と感じました。

 演劇をしていて、今の自分の心持ちや課題が、いくつもあらわになりました。

「身体の向きが逆で、お客さんに背を向けてしまっている。それは怖いからだ、気持ちが逃げているんだよ」

 お父さんからそう教えていただいたとき、とてもショックを受けたけれど、その通りだと感じました。

  
 

 自分の身体の向き、足の運び方、表情、どんな些細なものだと思えても、ステージに立ったときは、それが雑味になり、お客さんに伝わりにくくなってしまう。自分の心の甘さや弱さこそが、雑味になっていることを痛感しました。

 動きや表情がちぐはぐで不自然になってしまっているわたしに、あゆちゃんがこう話してくれました。

■私たちそのもの

「演技をしないでってお父さんが言うのはこういうことだよ。いつものみつきちゃんのままでいいんだよ」

「もえぎくんもみつきちゃんのように、きっと明るくて陽気で、ちょっと抜けているところもあるけれど、愛されキャラなんじゃないか、だからもえぎくんをみつきちゃんが演じられるんだよ」

 あゆちゃんの言葉で、涙が出ました。わたしは本当に、こんなわたしだけれど、良いところも悪いところも丸ごと理解してもらっているのだと、嬉しかったです。

 そして、何人かの子から、「もえぎくんのセリフに共感するなあ」「このシーンが好きなんだ」と声をかけてもらいました。私自身も、脚本を見たときに、もえぎと一言一句違わない、同じ言葉を心の中で考えたり感じていたことを、ハッと思い出しました。

 このコンサートで主人公が抱える気持ち、ぶつかる壁も全部、わたしと同じなのだと感じました。本当にこの主人公四人組は、わたしたちそのものだ、わたしたちにしか表現できない、と身に染みて分かりました。
  

  

 練習中に、

「きっとこのキャラクターは、こういう反応をしそうだね」

「こんなジェスチャーをしてみるのはどうかな」

 と、みんなでアイデアを出して共有し合ったり、笑い合っているとき、とても嬉しくなります。

 自分の未熟さに、悔しさや情けなさを感じるときもあります。上手く演じられなくて、どれだけ時間を取ってしまっても、みんなが、それが当然のように一緒に練習をし続けてくれました。なおちゃんやそなちゃんが笑ってくれた  り、やよいちゃんが「わたしたち、運命共同体だからね」と話してくれました。

 

毎晩、各シーンの役者で集まり演劇のバディ練習

 

 この脚本の紙の上だけじゃなくて、本当にわたしたちは繋がっていられるのだな、と思えること、こうやって同じ目標をもって進んでいけることが、本当に心強く感じます。

 このコンサートの脚本の最後にあるような、仲間とともに、明るい希望をもって前向きに進んでいく道しか、自分にはないのだと思えます。

 お父さんお母さんからのわたしたちへのプレゼント、すべての答えが詰まっている脚本です。

 自分自身のこととして、この演じるキャラクターとともに進んで、成長していきます。一人でも多くの人に伝わりますように、そして毎日、良く生きられますように。

 その気持ちで、このウインターコンサートの物語を演じていきます。 

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お帰りなさい、まさこちゃん!
  

  

 卒業して、今は新しい家庭を築いている、まさこちゃん。

 まさこちゃんが旦那さんと二人の可愛いお子さんと一緒に、久しぶりになのはなへ帰ってきてくれました。

 まさこちゃんご家族の、穏やかで優しい笑顔やお話、可愛くて素敵な子どもたちから、嬉しい気持ち、希望や夢をたくさん、たくさんもらいました!