
朝起きてから、夜眠るときまで、手には脚本。頭の中にも、ずっとウィンターコンサートの脚本があります。
演劇練習になると、キャラクターに変身して、なおちゃんは「あさぎ先輩」、やよいちゃんは「お嬢様」、そなちゃんは「ちぐさちゃん」と、自然にみんなで呼び合っています。わたしも「もえぎくん」と呼ばれることが嬉しくて、主要役者の四人で過ごす時間が幸せです。
お父さんから演技指導もしていただいて、修正をしていくと、どんどんとシーンが良くなっていくのを感じています。
練習をしていると、セリフを言っている人も、言わずに聞いている人も、同じくらいに重要。むしろ聞いている人のほうが重要なのではないか、と感じるようになりました。
話している人を立たせるように、見える身体の面積を減らしたり後ろに下がること、表情やしぐさで反応をすることなど、気を付けるべきポイントは多く、ずっと気が抜けることはありません。
■身体の向き一つで
お父さんが、「耳が不自由な人が居たとして、その人が見ても、今どんな話をしているか分かるくらいにしたいんだよ」と話してくださいました。
お父さんのように、「お客さんが見やすいように、聞きやすいように、分かりやすいように」という気持ちで演劇を作っていかなければいけないな、と感じました。
演劇をしていて、今の自分の心持ちや課題が、いくつもあらわになりました。
「身体の向きが逆で、お客さんに背を向けてしまっている。それは怖いからだ、気持ちが逃げているんだよ」
お父さんからそう教えていただいたとき、とてもショックを受けたけれど、その通りだと感じました。
自分の身体の向き、足の運び方、表情、どんな些細なものだと思えても、ステージに立ったときは、それが雑味になり、お客さんに伝わりにくくなってしまう。自分の心の甘さや弱さこそが、雑味になっていることを痛感しました。
動きや表情がちぐはぐで不自然になってしまっているわたしに、あゆちゃんがこう話してくれました。
■私たちそのもの
「演技をしないでってお父さんが言うのはこういうことだよ。いつものみつきちゃんのままでいいんだよ」
「もえぎくんもみつきちゃんのように、きっと明るくて陽気で、ちょっと抜けているところもあるけれど、愛されキャラなんじゃないか、だからもえぎくんをみつきちゃんが演じられるんだよ」
あゆちゃんの言葉で、涙が出ました。わたしは本当に、こんなわたしだけれど、良いところも悪いところも丸ごと理解してもらっているのだと、嬉しかったです。
そして、何人かの子から、「もえぎくんのセリフに共感するなあ」「このシーンが好きなんだ」と声をかけてもらいました。私自身も、脚本を見たときに、もえぎと一言一句違わない、同じ言葉を心の中で考えたり感じていたことを、ハッと思い出しました。
このコンサートで主人公が抱える気持ち、ぶつかる壁も全部、わたしと同じなのだと感じました。本当にこの主人公四人組は、わたしたちそのものだ、わたしたちにしか表現できない、と身に染みて分かりました。
練習中に、
「きっとこのキャラクターは、こういう反応をしそうだね」
「こんなジェスチャーをしてみるのはどうかな」
と、みんなでアイデアを出して共有し合ったり、笑い合っているとき、とても嬉しくなります。
自分の未熟さに、悔しさや情けなさを感じるときもあります。上手く演じられなくて、どれだけ時間を取ってしまっても、みんなが、それが当然のように一緒に練習をし続けてくれました。なおちゃんやそなちゃんが笑ってくれた り、やよいちゃんが「わたしたち、運命共同体だからね」と話してくれました。

この脚本の紙の上だけじゃなくて、本当にわたしたちは繋がっていられるのだな、と思えること、こうやって同じ目標をもって進んでいけることが、本当に心強く感じます。
このコンサートの脚本の最後にあるような、仲間とともに、明るい希望をもって前向きに進んでいく道しか、自分にはないのだと思えます。
お父さんお母さんからのわたしたちへのプレゼント、すべての答えが詰まっている脚本です。
自分自身のこととして、この演じるキャラクターとともに進んで、成長していきます。一人でも多くの人に伝わりますように、そして毎日、良く生きられますように。
その気持ちで、このウインターコンサートの物語を演じていきます。
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お帰りなさい、まさこちゃん!
卒業して、今は新しい家庭を築いている、まさこちゃん。
まさこちゃんが旦那さんと二人の可愛いお子さんと一緒に、久しぶりになのはなへ帰ってきてくれました。
まさこちゃんご家族の、穏やかで優しい笑顔やお話、可愛くて素敵な子どもたちから、嬉しい気持ち、希望や夢をたくさん、たくさんもらいました!