【12月号②】「 ディティールを大切に 気持ちのバトンを繋ぐ舞台」あけみ


  
 空間や場所は、形があるもの。ステージや舞台も形があるもの。そう思っていたけれど空間も場所も、ステージも、一瞬の生ものだと思いました。

 なのはなの食堂の黒板には、コンサートまでの日数が書かれ毎日カウントダウンされるようになりました。いよいよ、コンサートまで一か月をきりました。

 実際に脚本と、今まで練習してきたダンスやコーラス、演奏が合わさった通し練習を週末に行っています。今までは、一曲いっきょくを練習していましたが、それらが脚本の中の一部として、物語を繋ぐ一つのパーツとなっていき
ます。

  
 
 
 ダンスでは、曲の前後の脚本の内容を含んだ表現をしていきます。そのダンスのシーンにあった、表情、役割、その都度変化していきます。

 難しいところもありますが、その場その場で自分の役割が変わり、いろいろな表情、表現を、この脚本の一部として皆と表現していくのが面白いとも感じます。

 ダンスの振りをそろえるのはもちろん、劇とダンス、ダンスと劇を繋ぐ“出はけ”もとても大切です。

 「小さなデティールにすべては宿る」出はけの表情、気持ち、出までの袖でスタンバイしているときの気持ち、はけたあとに気持ちを残し続けバトンをつなぐこと、細かく練習していきます。

■気持ち一つ

 通しの前には、あゆちゃんと出はけの練習を行います。今の段階で、脚本の中にある曲目は、アンサンブルなどを含めて二四曲です。その前後のシーンとの役者の人とのはけ、出、ダンサーのはけと役者の出を確認していると、半日かかるときもあります。
 
  

  
 あゆちゃんと出はけの練習をしていると、自分たちはコンサートの練習をしながら今、本当の意味で生きる、という練習をしているように感じることが多いです。

 印象に残っていることがあります。「アイ・シー・ファイヤー」のではけの練習をしているときのことです。この曲は、前半の大切なシーンに入る曲になっています。一度、出はけをしてみたときに、あゆちゃんが「気持ちがステージに向いていない。ステージの場面を切り替えるのも、つくるのも、皆の気持ちしかないんだよ。」と教えてくれました。

 その後にもう一度ではけをしてみました。その前のシーンの台詞を役者の人が言い終わり、少し間があり、はけ始めます。中央でダンスをする人がスタンバイに向かい、その後にあゆちゃんの歌で始まります。そのほかのメンバーは袖で控えています。

  

 ステージの上にダンサーや出ている人は少ないけれど、ステージの上の空気が静かにガラリと変わるのがわかりました。研ぎ澄まされた空気があって、皆の気持ちがステージの上にあるのがわかりました。

 ステージという場所は、物質的にはあるけれど、それをつくり、その空間、表現をつくるのは、どこまでも自分たちの“気持ち”しかないのだと、その経験を通して強く感じました。

 もう一つは、すこしシリアスなシーンの後の曲のではけの練習をした時のことです。私は、どうしてもシリアスなままの表情になってしまったり、出はけのことに集中してしまい、真剣で少し怖い表情になりがちでした。全体的にも「華が足りない」と言われることが多かったです。

 あゆちゃんがその時に、「自分たちが表現するのは、どんな困難があっても楽観的な希望を見て、どれを持つ人。そんな表情をしよう」「私たちが表現するものの先にはいつも希望がなければ」と、教えてくれたことがありました。

 『ルアラギ』の曲では、「朝、起きて(あ、今日はこれはこうしたいな。こうしてみよう!)とか、いろいろ考えるようなときの気持ち」とも教えてくれました。

 なのはなの脚本の中や、なのはなで表現していると、自分が生きていくあるべき姿を、ダンスや演奏を通して練習しているとも感じます。

 「前向きなところにしか答えはない。」 お母さんがいつも言ってくれる言葉です。

 今回の脚本を読んでいても、前向きなところにしか答えはないし、それが自然であって、自分たちを生み出したこの世界自体がその原理に基づき存在しているのを改めて感じます。

 大変なときでも、困難を感じても、絶対に前向きさ、楽観的な希望を忘れない、どこまでも道を求め続ける、それが私達の生きるあるべき、自然のことなのだ。私もあるべき姿を演じながらも自分のものにしていきたいとも思いました。そのことは、ステージの上だけでなく、日々の生活、その先の延長で、自分の人生も変えてしまうように感じます。

■一瞬の積み重ねが

 今、コンサート練習、ダンス練習、出はけの練習をしているこの一瞬一瞬が自分たちの人生をつくる大切な一瞬だし、その一瞬が私の永遠になっていくのを感じます。一人ひとりの気持ちや意志、志だけでも、ステージの上の空気や場面を変えることができる、そしてそれが同じ方向で合致したときのエネルギーの大きさも改めて感じます。

 今、私たちの一瞬の積み重ねが、コンサートや一人ひとりの人生をつくり、それがまた大きな力となって、まだ見ぬだれかの大きな力や生きるきっかけになるのだと思います。それが、たくさん集まれば、今の生きづらい社会だって変えていけるのだと思います。
  

 ステージの上の空気が、皆の意志や願いで変わるのだから、そう感じました。そこに資格や学歴、技術などは大きな問題ではないことが、わかりました。

 気持ち一つで、大きく変われる。それは良くも悪くもなのだと思います。だからこそ、あるべき気持ちの方向に、まっすぐに向かえるように、理想と志、プランをもって、祈る気持ちで、皆と一緒に最大限で向かいたいです。