ほぼ毎日、私はイチジクの収穫に入らせてもらっています。八月から秋にかけて、何回か収穫に入らせてもらう中で、(そういえばイチジクって漢字で「無花果」って書くけど、ほんまに花咲かんのんかなあ……?)と思うようになりました。
イチジクの収穫は、基本は二人でまわっていて、補助の人が発泡スチロール箱を持って、もう一人の人が、収穫できるか実を見て、採れたら発泡スチロール箱の中に入れていく、という感じです。
イチジクは柔らかくて皮がむけやすいので、思いっきり枝から引っ張ってもいだり、ポンッと投げて置いたりせず、採るときも置くときも常に慎重にしないといけないんだと知りました。収穫できそうだけど、まだもう少し置いておきたいかな、という実には、鳥に食べられないように、タマネギを入れて保存しておく時に使うネットをかけて様子を見るようにしています。
なのはなでは「バナーネ」「枡井ドーフィン」「蓬莱柿(ほうらいし)」の三つの品種があるのですが、どれも色、形が違って、それぞれがとても綺麗で美味しいです。一番多く採れるのはバナーネで、黄緑色で丸い、音符の玉のような形に見える、とても綺麗な品種です。
なつみちゃんと二人で収穫していくと、たくさんの事を教えてもらえて、すごく楽しいです。バナーネを採る基準は、実の色が黄緑色で縦に白い筋が入っていて、サイズも比較的大きめで、触るとふにふにとして柔らかい物だそうです。私は一、二回しか採ったことが無いのですが、ナスやプチトマトみたいに見た目で全部判断して採ってしまいそうで、難しいなと思いました。
枡井ドーフィンは名前も面白くて、見た目も中くらいの赤タマネギにそっくりなものがよく採れて、貴重で高級感があります。蓬莱柿(ほうらいし)も、すごく綺麗な見た目で、柿という名前の通り、和風な感じも少し混ざった渋めのオレンジ色だったり赤色で、小さくて丸い形のものが多いです。なつみちゃんと一緒にまわらせてもらうと、実を見る目が本当にすごくて、迷いが無くて、見ていてすごく楽しいです。
「数日前から、この実を採ろうかどうか迷ってたんだー」
と言って、前々日くらいから熟れるかとか、このくらいの硬さならまだ置いてもいいかとか、一番良い時期に収穫できるように考えてくれていることが本当にすごいし、見習わなきゃ……! と思いました。
■イチジクパニック
晴れの日の収穫は、とっても爽やかな中で綺麗な実をきちんと全部採れるけど、雨が一日降ったりすると、その日は収穫出来ないので、次の日となると「イチジクパニック」という言葉ができそうなほど収穫量が大変なことになります。
一週間ほど前に降った雨の後は、とてつもない量が採れるだろうとなつみちゃんが予想してくれて、イベント当日の朝だったのですが、六人の頼もしいチームが結成されて、発泡スチロール二箱とタマネギ用ネットの大きな束を二つほど持って、畑に出発しました。朝の一時間も無いほど短い時間だったのですが、体育館に帰ってみんなでイチジクの数を数えると、全部で四百二十一個ありました。
すごい!!! もの凄く嬉しいイチジクパニックでした。その後もイチジクが食卓に並んで、みんなが、「今日のイチジクも美味しかった!!」と感想を教えてくれたり、毎朝の収穫の時にたくさんの人に助けてもらっているなあと感じて、イチジクの収穫からたくさんの事を感じたり学ばせてもらえたなあと思いました。
イチジクは花が咲かないというのは本当で、四か月間、毎日行ってじっくり全ての木を見て回っても「花みたいなもの」も一つも無く、丸くて緑の武骨な実が付いているだけでした。
でもそのイチジクの木を見て、自然の中にひっそり、どっしりと立って文句ひとつも言わずに生きているように見えて、(こういうことを自生と言うんだなあ。すごいなあ……)と何とも言えない感動したような気持ちになりました。
七月から今まで、ずっと毎日一緒に収穫に行ってくれて、色々な事を教えてくれたなつみちゃんには本当に感謝しないといけないなあと思います。寒さが少しずつ来て、イチジクも徐々に採れなくなるのだと思いますが、たくさん実を付けてくれたお礼に、これからの時期に、イチヂクが喜ぶ手入れをたくさんできたら良いなと思いました。