【10月号②】「手刈りと、汗と、笑顔と。」 うたな

   
 秋に入ったとはいえ、まだ暑さを感じる日、稲の手刈りが決行されました。私にとって初めての体験である手刈りです。でも、みんなが一大イベントとして楽しみに話しているほどの魅力が果たしてあるのか、体験前は分かっていませんでした。いつもの畑での作業の延長線上のようなもの、くらいに思っていました。

 その日は、たくさんのゲストの方が来てくれました。相川さんや、りゅうさんや、そのご友人のたくろうさん、息子のしゅんき君、そして、あきなちゃんなど、私が初めて会う方も多かったです。
  
  

 その人たちはみんな、自然になのはなファミリーに馴染んで、なのはなファミリーを好きに思ってくださっていることを感じて、そんな温かい人たちに囲まれて作業できるのが、すてきなことだなと感じます。土曜日でお仕事組さんもいて、ベテランの力が頼もしく、にぎやかな空気がうれしかったです。

 手刈りは、想像していたより体力を消耗して、工程が多く、でもその何倍もの楽しさが感じられました。私は前半は主に、稲を鎌で刈っていく作業をしました。みんなで一列になって、ひたすらに稲を刈っていきます。みんなのスピードに圧倒されつつ、それについていこうと無我夢中で手を動かしました。

■みんなの中で

 刈っている時間はあっという間で、汗を気持ちよく流して、「終わったね!」と笑いあう時間がうれしく、こういう瞬間のために大変な作業も頑張れるな、と思いました。

   
  
 はぜ干しもまた、想像を絶するほどに面白いものでした。全員で稲をバケツリレーしていってはぜ干しするのです。はたから見てみたい、と思ってしまうほどに、とめどなく稲が運ばれていきました。全ての稲を干し終えた達成感はすごいものでした。みんなで作業することの魅力は、大変さを共有して喜びに変えることができるところにあると思います。
 摂食障害から立ち直ろうとする私たちにとって、今回の手刈りがどういう意味をもつのだろう、と考えてみました。私はなのはなに来る前、一人でこもって、症状のことで頭がいっぱいで、毎日が苦しく怖かったです。でも、手刈りではみんなの笑顔や一生懸命な姿が近くにあって、孤独さや寂しさを感じる暇もありませんでした。不思議とのめりこんでしまう作業で、症状のことが頭をよぎることもありません。
  
 
  
 日々の作業も同じで、夢中になれる何かをさせてくれることが、畑作業のもつ意味の一つなのだろうなと思います。そして、すべての活動は、作業に今の自分を映す「表現」なのだ、と教えてもらいます。なのはなで生活することの一つひとつを大切に過ごしていこうと、改めて思いました。

 その日はみんなでバーベキューをしたり、縁日の遊びをもう一度したりと、一日中遊びつくしました。いろんな人に囲まれて、豊かな自然の恩恵を受けて、自分たちで考えて作り出して……。言葉では言い尽くせないほどに大切な日になりました。これからも、なのはなで過ごす日々からたくさん学び、成長していきたいと考えています。