10月13日(日)前編「どうか良いステージを―― 第43回勝央町金時祭 3つの演目での出演」

10月13日のなのはな

 みんなと向かう、大切な1日。
 古吉野を出て、金時祭の会場へ向かう車の中。霧に包まれた薄曇りのような景色だったのが、霧が晴れて、太陽の光がまっすぐに届いて、鮮やかに色づいていきました。

 勝央音頭保存会の方とのふるさと総踊りの出演、なのはなファミリーの演奏、そして金時太鼓のメンバーとしての演奏と、盛りだくさんな1日が始まります。
 みんなと気持ちを合わせて乗り越える1日を、気持ちよく晴れている中でスタートできることが嬉しいなと思いました。

 

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 会場に着くと、早速控え室で着付けに入ります。私はペアのゆうなちゃんと着付けをしていきました。

 赤い裾除けと、白と紺の浴衣。何度見ても、このコントラストの効いた浴衣が美しいなと思います。そして、きちっと着られた時の背筋の伸びるような気持ちよさ。

 着付けは難しいけれど、少しでも美しく、気持ちよく、踊る気持ちをつくる一つとしてきれいに着られるように、ペアのゆうなちゃんと見合ったり手を貸し合ったりして着付ける時間が嬉しかったです。

 

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 赤い襷をお互いに結び合って、菅笠の角度を確かめ合って、そうやって誰かに助けてもらった衣装に身を包んで、踊りに向かえることが嬉しいなと思います。

 笠から見える、赤い口紅を差した口元にきりっとした笑みが浮かんでいると、その美しさにはっとなります。

 

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 この衣装の美しさを最大限にするようなたたずまい。そして自分たちがどんなふうに見せたいのか、意思のあるたたずまい。それを形にできるように、背筋を伸ばして、控え室から会場に向かいました。

 待機のあいだ、お父さん、お母さんが手を振ってくれたり、楽器を搬入するバンドメンバーが声を掛けてくれたり、チラシ配りをするなのはなの仲間が見えたり、一つひとつに力をもらって、踊りの本番です。

 

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 1曲目は、『勝央ヤットサ節』です。「ヤットサ、ヤットサ」と掛け声をかけながら、その軽やかさや華やかさが表現できたらいいなと思いました。すぐ近くに、見てくださっている方々がいて、嬉しそうな表情、見守るような表情や、「きれいだなあ」という言葉に、この踊りを喜んでくださっていることが感じられて、それがとても嬉しかったです。

 

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 2曲目の『勝央音頭』を踊り、3曲目は『四つ拍子』です。「踊れる方は、ぜひご一緒に」の会場アナウンスに、多くの方々が踊りの円に加わってくださいました。一緒に踊りたいと思ってくださったこと、そうやって見てくださっている方を巻き込むことができたことが、嬉しかったです。

 

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 勝央町や、地域のなかで、お祭りをもり立てたり、貢献できる役割を担えること、その中で自分自身を成長させる機会をもらっていることが、とても有難いことだと思います。
 すっと晴れた空の下で、みんなとお揃いの浴衣で踊れた時間が、嬉しかったです。

(ゆず)

 

***

 

「どうか仲間のためにも、その先の誰かのためにも、まっすぐにこのステージに尽くさせてください」
 青空に祈る気持ちでステージに向かいました。

 勝央町の最も大きなイベントでもある第43回勝央町金時祭りが開催されました。なのはなファミリーは、8曲のバンド演奏とダンスで約40分間の出演でした。

 

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 今日の日に向けて、バンドやダンスそれぞれの練習を古吉野で詰めてきました。今回は、バンドの編成、ダンスの編成を直前まで調整したり、新曲の『Ō ‘Urataetae Iti E』などは衣裳を前日の夜まで考え、ダンススペースの広さにも変更が重なったりし、いろいろと緊張することが多かったです。でも、ピンチがいくつかあっても、その分、皆の力や気持ち、団結する空気が強くありました。(何があっても、自分たちがステージや仲間を守る)そういう気持ちでした。

 演奏前にお父さん、お母さんが話をしてくれました。
「何があっても自分たちのペースで演奏する。細かいデティールを大切にする」
「どこまでも謙虚な気持ちで、どうか良い演奏が出来ますようにと青空に向かって祈る気持ちでいたらいいよ」
 お父さんお母さんが伝えてくれたことは、自分が生きる上でも大切なことだと思いました。

 

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 演奏が始まる前、新曲の振り、衣裳がうまくいくか、ステージがスムーズに進行するか、緊張しました。特に個人的には、私たちが『ウラテテ』と呼んでいる曲『Ō ‘Urataetae Iti E』の心配が大きかったです。この曲は、衣裳の一部の白いマントを蝶の羽のように広げたり、離したり、振りの中でも衣裳の使い方が複雑です。成功させると、とてもきれいで効果的なのですが、失敗したりカウントがずれるとわかりやすく、白いマントを効果的にみせるには練習が必要でした。

 お母さんも一緒に考案してくださり、直前までダンスメンバーの皆と一番いい形を探していました。今回、本番で着た衣装の最終的な形は前日の夜に完成したもので、実際にすべての衣裳を着て踊るのは本番が初めてでした。

 

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 また、曲にはいくつかのソロがあります。それぞれの別のメンバーがソロを回していくのですが、私は曲の始まりのソロをさせてもらいました。しかし、このソロの部分も完成したのが本番3,4日前。一度考えた振りは、少しイメージが違うということで、お母さんやあゆちゃんにたくさん助けてもらいながら、コンサートや曲に合うように、お母さんあゆちゃんにみてもらったり、色々なダンスを参考に考えた部分でした。

 

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 曲が始まる前、
(どうかまっすぐに、仲間のためにも、まだ見ぬ誰かのためにも、自分を全力で使わせてください)
 そう、高く広がる秋の青空に祈りました。『Ō ‘Urataetae Iti E』の出からお客さんが拍手で迎えてくださいました。それまでステージを作ってくれたみんなの空気、そして今日まで衣裳や振りなどを一緒につくってきた過程がその拍手につながっているのだと感じました。

 

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 踊ってみると、白いマントもつかみやすくて踊りやすかったです。最後のポーズをして、お客さんからたくさんの拍手をいただけたのがとても嬉しかったです。最後の曲『White Flag』、バンドメンバーの音一つひとつを大切に、曲の一部として、そして自分たちの表現を全力で表現できたと思います。

 

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 お客さんが真剣な顔をして自分たちの表現を受け取ろうとしてくださっていることを感じました。客席や周りには、お父さん、お母さん、応援組の皆がいました。ステージの上、控え、客席、関係なく皆で作っている一体感がありました。金時祭り、大成功でした。

 これからコンサートに向けて、さらに良い表現をできるように、日々を積み重ねていきます。

(あけみ)

 

***

 

 なのはなファミリーの演奏が終わって、ほっと一息つく間もなく、私達は金時太鼓のステージに向けて、衣裳の着替えへ。なのはなファミリーの演奏のすぐ後に、勝央金時太鼓保存会の演奏が組まれていました。毎週水曜日に、なのはなファミリーから11人のメンバーが勝央金時太鼓を学んでおり、今日は、保存会の一員として、ステージに出させていただきました。

 ダンス、バンド演奏の気持ちから切り替えて、次は太鼓打ちの気持ちを作ります。赤と黒の法被を着て、帯を締めると、気持ちもギュッと引き締まりました。一緒に着替えていたメンバーも、法被を着こなした姿がかっこよく、きりっとしていました。

 

 この日は屋外での演奏ということもあり、普段練習している勝央文化ホールの舞台とは環境、状況も違う中で、存分に自分達の力が出し切れるかどうか、少し緊張もありました。

 今回は、『那岐おろし』を演奏させていただきました。この曲は、最初から最後まで7分以上あり、長丁場の曲です。大太鼓の打ち出しから始まり、曲の中で、宮太鼓、締太鼓、大太鼓のソロが次々と入れ替わる、変化の多い曲です。テンポが速く、題名にもあるように、人の力では及ばないほどの威力を持った大風が、一気に吹き抜けるような、力強さ、荘厳さ、ダイナミックさがあります。曲を叩く前に、一度気持ちを真っ新にして精神統一をしないと始められないような、肉体的にも気力的にも力を必要とする曲です。でも、私達はこの曲を叩く中で気持ちを鍛えて、揃えられた部分が大きく、私はこの曲が大好きです。

 

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 『那岐おろし』をステージで演奏した事は以前にもありました。しかし、その時と、メンバーも変わっていたり、パートも変わっていました。今いるメンバーでの、新しい『那岐おろし』を、お客さんに聞いてもらえること、自分たちで演奏できることが、とても嬉しかったです。

 小学生、中学生のステージを、舞台袖で待ちました。太鼓の音が屋外のステージで響き渡るようになると、またバンド演奏の時とは違う、空気が客席で作られていくことを感じました。もうすぐ私達の演奏だ、と思うと、心拍数が上がって、手汗が滲んで、手に持つバチが滑らないか心配になりました。でも、ふと客席のほうを見ると、お父さんやお母さん、応援組のみんなの姿があって、安心した気持ちになりました。何があっても、最後まで叩ききってやる、と思いました。これまで一緒に練習してきた仲間のために、そして未来に繋がっているであろうまだ見ぬ誰かのために、今出せる集中と粘りで演奏したいと思いました。

 

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 ステージの前の客席は全て埋まり、広場の階段に腰を下ろして見て下さっている方もいて、とてもたくさんのお客さんに注目されていることを感じました。ステージに出る前も、横にも、前にも、後ろにもお客さんがいて、360度見られていました。太鼓打ちとして見られている数えきれないぐらいの視線が、自分を覚醒させました。

 ふみちゃんの大太鼓の音で、曲は開幕します。屋外なので、音は吸収されて屋内より聞こえにくいはずだけれど、とても鮮明に聞こえてきました。大太鼓の音がどんどん速く、大きくなり、差し迫ってくるように、心拍数が上がっていきました。

 

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 私は、前列で宮太鼓を叩きました。3メートル離れているか、いないかという位置に、お客さんがいて、とても近かったです。でも、演奏している間は緊張はなく、ただただ一音一音を逃すまい、と音に意識を張り巡らせました。

 曲中、宮太鼓が枠打ちをする場面があります。練習の時には、始まりの拍数があわなくて、何度も何度もやり直した注意ポイントの箇所でしたが、始まりの音が、ぴったり全員で合った瞬間、とても気持ちがよく、その後のモチベーションにもなりました。

 また、演奏中、客席の方から、「そーりゃ!」という、かけ声も何回も聞こえてきて、私達の演奏を後押しして応援してくださっているのだと気が付きました。姿は見えなくても、自分たちと同じ気持ちで叩いてくださっている人がいる、と思うととても嬉しくて、パワーがみなぎりました。

 

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 渾身の力を振り絞って、打ち終わった瞬間、客席からとても大きな拍手が沸き起こりました。嬉しい気持ち、満たされた気持ちが全部、跳ね返ってきました。こんなにも多数の人に、受け入れられる演奏が出来たことに感動して、自信につながりました。

 

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 午前のふるさと総踊りから始まって、なのはなファミリーの演目、金時太鼓の演目と、お祭りに3つの部門で出演しました。一人ひとり、出演する演目は違っても、一貫して全員の気持ちが一つになっていたと思います。大多数の人の前でも通用する、見せる自分で常にいること、ウォッチャーではなくプレイヤーでいる自覚が、私達がこれから生きていくうえでも、とても大切なことなのだと思いました。

 

 勇気を持って気持ちを外にひらいて表現すると、目の前には大きな拍手とたくさんの人の温かい視線があって、満たされた気持ちでいっぱいになりました。そして、今日だけが本番ではないこと、ここが始まりで、日々の日常でも常に、誰かにとっての表現者であり続けたいと思いました。ウィンターコンサートに向かっていく過程も、その連続にしたいし、みんなと一緒に、もっと深い境地まで行けるように、これからの音楽練習も真剣に向かいたいと思いました。

(りな)