縁日お化け屋敷「はっぴーはうす」。名付け親はお化け屋敷監督の須原さんです。はっぴーはうすのメンバーで準備した時間も、本番来てくれたお客さんに怖がってもらえたことも、とても嬉しかったです。
なのはなの夏のイベントと言えば、東浜海水浴場での海水浴。先発組として海水浴場に向かう道中、須原さんと同じ車で行かせていただき、行き帰りに、お化け屋敷をどうするかを話しました。須原さんが、もうすでに会場は森盛庵であること、ブラックライトという特殊なライトを使えないかと思っている、ということなど話してくださいました。
お化け屋敷を森盛庵でする、と思った時に、以前アトリエでお化け屋敷をしたときのことを考えました。アトリエにはキッチンや障子、畳みの部屋、そしていくつかの物があり、赤い照明で部屋をいっぱいにすると、危険を感じる雰囲気になりました。森盛庵一階はフローリングの一部屋で、通路を作るために大きな家具を運び出すと、物があまりなく、恐怖を感じる雰囲気を作りづらいのではないか、と思いました。
須原さんが、和風なお化け屋敷は物が多くあるけれど、洋風なお化け屋敷はあまり物がなくさっぱりとしている、ということを話してくださいました。
そこで、今回は洋風なお化け屋敷にしよう、ということになりました。
BGMは和風ではお経、洋風だとどんな音楽になるのか。海水浴場からの帰り道、調べて聞いたところが丁度トンネルの中でした。薄暗いトンネルの中で『二人ニンギョウ』というBGMを聞いたとき、ものすごく怖くなり、「これにしよう」と決まりました。
■秘密の研究室
縁日当日までは約三週間です。
次の日からは、実行委員となるメンバーの発表がありました。須原さんが「十人は欲しい」と言われていましたが、はじめに発表されたメンバーは六人でした。でも、呼ばれていなかった人が、「どの屋台がやりたいか希望ある?」と聞かれたときに、四人とも「お化け屋敷」と答えていて、十人が揃い、とても嬉しかったです。
「お化け屋敷研究会(OYK)」の部室は仕掛けを極秘にするため音楽室となり、はじめの一週間から十日ほどはどんなふうな仕掛けがあると良いか、お化け屋敷に来たお客さんに何をしてもらうのか(ミッション)、森盛庵内の通路をどう作るか、などを考えていきました。
ほとんど毎日、音楽室で紙とペンを持ち、話し合いをしました。須原さんが、決めておくべきことを話してくださり、プランをよくよく立てた上で制作に入り、進め方も勉強になりました。
メンバーのみんなでそれぞれの得意分野を担当して制作など進めました。
須原さんが教えてくださり、プラスチックの面に紙粘土で形を作っていき、絵の具で色を付けて一人ひとりの面を制作しました。
■はっぴーはうす、開館
縁日当日。はっぴーはうすの一組目のお客さんを迎える、案内人マリアの声が聞こえました。かにちゃんが、「口をこういう形にすると、おばあさんの声になる」
と言って話してくれて、本格的におばあさんのような声になっていて、口やのどの使い方でこんなに変わるのだなと思いました。受付でたくさん話しているのに、かにちゃんと分からなかったという人もいるくらいでした。かにちゃんの演技に引き込まれて驚いたり楽しんでいるお客さんの声が嬉しかったです。
ミッションは、「水の中・執事のポケット・十字架・ギ○○ンの手・箱の中」の五か所からペンダントを持って帰り、そのペンダントに書かれた文字を組み立てて熟語にする、というものです。
屋敷内では、床から二メートルのところにエクセル線を張り、そのエクセル線から暗幕を垂らして仕切った通路が蛇腹状に続いています。お化けとしてスタンバイしていると、一か所一か所、何が起きているか、お客さんの声から情景が浮かびました。
ドアが開くと、すぐ右でメイドが迎えます。
練習で、なおちゃんがメイドの服を着ていないときから、「こんな感じかな」と言ってソファに座ってすっくと立ったり、なおちゃんが演じている空気感がものすごく怖くて、すごいなと思いました。特別な仕掛けはないのですが、メイドの動きでお客さんが怖がって悲鳴を上げている声を聞くと嬉しかったです。
■数々の歓迎
その次に目に入ってくるのが執事です。お客さんがペンダントを取った瞬間、執事の首が落ちます。ある日、部室に行くと須原さんが執事の土台を作られていました。
首が落ちるタイミングやスピード感で怖さがまるで違いました。照明も、仕掛けや言葉も、少しの違いで怖くなくなったり、ぐっと怖くなったり、一つひとつが集結して演技したときの効果になることを感じました。えつこちゃんの首の動きや、落ちたときのみんなの悲鳴。怖がりながらも、須原さんが作ってくださった仕掛けに「どうなってるのすごい」という声が嬉しかったです。
次は人形です。人形が持っている箱の中にペンダントがあるのですが、箱の中には、丸い一口大のこんにゃく、しらたき、カブトムシの置物が入っていました。そしてその中からペンダントを取った瞬間、ほのかちゃんの人形の可愛らしい面が外れ、おぞましい面に変わります。そしてねじまき人形のように追いかけてきます。
面がすぐに外せるようにするにはどうしたらいいのか、須原さんが、能や狂言などで実際に面がサッと変わる仕掛けを話してくださいました。面を、ゴムを使って頭に固定するのではなく、手を使わなくても外せるように、面の口のところに二、三センチの棒を付けて、それを口でくわえている、ということでした。能のことまで知られている須原さんがすごいなと思いました。
■クライマックスへ
人形がいたすぐ次の通路の奥には、ギロチン台があり、処刑される人の手にはペンダントが握られています。ペンダントを握っている手はのんちゃんの本物の手で、もう片方の手はのんちゃんが白い手袋に紙粘土を詰めて作っていた偽物の手です。もちろん首は偽物です。
お客さんがペンダントを取った瞬間、のんちゃんの本物の手は消え、首が切られ、首が逆さに吊りあがるという仕掛けでした。本番は、のんちゃんの断末魔が、来てくれた人の悲鳴が大きくて聞き分けられないくらいでした。
私はそのすぐ横で気配を無にしてスタンバイしていました。目の前にある棚のガラスに反射して、次の「水の中」のミッションへと向かう、浴衣を着たみんなの後ろ姿が見えました。
ゲネプロのとき、顔を照らすために首から下げているライトをつけたまま待機していたら、ガラスに私(チャッキー)の顔が反射し、お母さんに、「誰か見てる」と気が付かれてしまいました。水の中からペンダントを取るという仕掛けが目に入ったみんなが通り過ぎ、水槽に注意が向いたことを感じてから顔の照明スイッチを入れました。
水槽の中には金のペンダントのダミーとして金色にした石を入れています。「ない、ない……。あった!」まだペンダントがないうちに出て気が付かれてしまうと、ペンダントを持って帰ってもらえないため、「あった」の声を合図に暗幕からひっそりと出ました。
顔の角度は七十度くらい右に倒し、包丁をかざして背後から近寄り、「あったの?」と低めの声で言います。みんなが怖がってくれたり、もう少し容赦なく追いかけたほうが良かったなと感じたり。全十六チームのお客さんが来てくださいましたが、反省があったり、反応が嬉しかったりして、楽しかったです。
その後は、いよいよクライマックスに入っていきます。トイレには監督須原さんの操る背むし男が座っていて、十字架のペンダントを取った瞬間にガバッと起き上がります。
「キャー」と出口の方に向かっていったお客さんの声が、「キャー」とまた戻っていくことが分かりました。出口の扉までの最後のコーナーを曲がってすぐのところから、すにたちゃん演じる全身タイツの“ハチ公”が残酷に笑う面をつけて、ブリッジの体勢で追いかけてきます。すにたちゃんが、古吉野での集まりのときからハチ公の練習をしていて、最後まで改良していて、みんなの怖がる声が嬉しかったです。
■真剣で、楽しかった時間
最後のお客さんの、あゆみちゃんとなっちゃんまで無事に終え、待合室で、はっぴーはうすのメンバーが集まったとき、かにちゃんが写真を撮ってくれました。制作時間は、一緒に作ったメンバーのことを知ることができた機会でもありました。須原さんが監督でいてくださり、制作も、考える時間も真剣で、楽しく、勉強になりました。
次回は山での肝試し(予定)をお楽しみに。