【8月号⑫】「体育館の棚づくりから 学んだこと」 みつき


  
 ある雨が降る日のこと……。この日の作業は「体育館の棚作りをお願いします」と言われて、体育館へと向かいました。

 正しく言うと「体育館の控室の中の棚作り」ということでした。もうすでに上手側の控え室の棚は作られていると聞いて、中に入ってみたのですが、完成した棚が見あたりませんでした。
 
  
  

 首をかしげていると、さくらちゃんが、「これを下手側の控室の中にも作りたいんだ」と、指差して教えてくれました。

 なるほど……。わたしはてっきり、棚を新たに作って部屋に置くのだと思ってしまっていました。しかし、そこにあったのは、すでにある空間に据え付けられた棚。控室内の一角、ステージとつながる空間の、天井近くに、土台となる枠組みが組まれ、そこに板がのせられて、物が置けるスペースがありました。棚はシンプルだけど奇麗で、あまりにもその場に馴染んでいて、気がつかないほどでした。

 さくらちゃんが工程ごとに説明してくれるなか、作り進めていきました。
  

  

 一ミリもずれてしまってはいけない、と教えてもらいました。壁にメジャーで測って印を付けていくのにも、緊張が走ります。その一ミリまでをちゃんと見ようと思うと、目がしぱしぱとして、身体が熱くなりました。

 本当に緻密な作業です。でも、「このくらい」という感覚じゃなくて、ひとつひとつ測っていくことで、「これだ!」という確かな数字、答えがあるということが、気持ちがよかったです。

■ビス一本も美しく

 それぞれの材料を、求めるサイズに揃えていきました。さくらちゃんが、「材料を用意してきます!」と言って、電動の丸鋸でカットしていってくれました。チュイーーン! と大きな音を立てて、粉雪のように舞う木粉。木のあたたかくて良い匂いがして、すぱっと切れていく材木を見ているとワクワクしました。

 切りたての材木を持って体育館に戻り、さっそく取り付けていきます。奇麗に印を付けた、その通りに取り付けなくてはいけないのですが、これがまた難しかったです。

 インパクトドライバーにまだ不慣れな私は、ビスを打つと、ビットがビスの穴からずれてしまったり、斜めになってしまいます。木枠を壁に取り付けるときには斜めにビスを入れていくのですが、真っ直ぐではなく斜めに打つのも、それはそれで難しくて、角度や方向がずれてしまい、かなり苦戦しました。

 ようやく全てのビスが入った! ……と思ったのに、目を凝らして見てみると、ほんの少し…それも一ミリくらいか、印からずれているのに気がつきました。
  

何もなかった空間を活かした、棚が完成しました

   
 正直、自分の中で、「やっと入ったし、これくらいはもう仕方ないのではないか」と思ってしまう気持ちがどこかでありました。けれど、さくらちゃんは迷わずにビスを外し始めました。どこまでも妥協を許さないさくらちゃんの真剣な眼が、格好良かったです。

 そして、棚を完成させることができました。その棚の上に自分たちは乗っていて、さくらちゃんが、「できたねー!」と笑ってくれていて……どこか信じられないような気持ちでした。

 七本の材木で木枠を組み、その上に板をのせる。作り方としては複雑ではないけれど、それだけでこんなにも重さに耐えられる、強いものが作れるんだと思うと、建物って凄いなあと感じました。

 緻密に緻密に、正しく正しく、と願いつづけて、きっちり、ぴったりと、おさまった棚。最後に作り上げられた棚は、願っていた棚そのものでした。すごく嬉しかったです。

 棚はステージの上手側、下手側それぞれに作り、下手にはすでに書籍が収納されています。さあ、これから、棚に何を収納していこうかな?