山小屋前の広場で開催されたのは『料理の鉄人』。火を起こすところから始まって、自炊をして、上手くいってもいかなくても、それが自分たちの晩ご飯になる……。熱血・本気の料理が始まりました!
今回の料理の鉄人の対戦料理は『カレーライス』でした。
わたしはそれを知ったとき、正直、少し微妙な気持ちでいました。アウトドア料理と言えばカレーライス。
けれど今までに学校の遠足などで作ったカレーは、水っぽかったりご飯がパサパサだったり、あまり良い印象がなく、不安を感じていました。
しかし、この日のために、あらかじめチームメンバーで集まって作戦会議をしていました。わたしたち、よしえちゃん・ふみちゃんチームでは、カレーライスの作り方をおさらいして、分担も決めておきました。
このときはまだ重要なことに気がついていませんでした。まさか、全てのチームが違う種類のカレールーを使うことになるなんて……。
■カレールー争奪戦
実行委員さんによる進行で、突如始まった「カレールー争奪戦」。おうちカレーの定番の『こくまろ』のほか、『ゼッピン』や『ゴールデンカレー』など、いかにも美味しく出来上がりそうなカレールーなどが挙げられていきました。
なのはなカレーは『バーモントカレー、甘口味』を使っているそうで、あのなのはなカレーに近づく美味しいカレーを作りたい!
みんなが好みのカレールーを我が物にするべく声を上げ、過酷な争奪(じゃんけん)の結果……。 わたしたちのチームは『ジャワカレー、甘口味』に決まりました。
このジャワカレーは、なのはなで食べているバーモントカレーよりもかなりスパイスが利いています。
なんと甘口味といっても、バーモントの中辛味よりも辛いレベルだと書かれてあり、わたしたちは頭を悩ませました。
ここはキャンプ。道具は限られていて、計量カップなどのはかりも無いので、感覚を頼りにして量ります。
玉ネギがきつね色に炒められたら、よしえちゃんが水を投入してくれて、ついにカレーを煮込み始めました。
■隠し味を入れて
しかし、なんだか味が薄い……? わたしも、味見をさせてもらいました。
「辛いのに、なんかコクがないというか、薄い気がするね」
と、よしえちゃんとあゆみちゃんが話してくれました。ジャワカレーのスパイシーさを生かしたり抑えたり、変化を付けるため、さまざまな隠し味を使ってみました。蜂蜜、なのはな特製の桃ジャム、コーヒーなど、慎重に足していきました。そして、最後にもう一度、「みつきちゃん、味見てみて!」と声をかけてもらって、ひとくち。
「おいしい!! なんで!?」
何も言うことはない、あの美味しいカレーに仕上がっていました。「醤油を入れてみたんだよ」とよしえちゃんが教えてくれました。醤油を入れるなんて、初めて知ったし、本当にすごいなあと感じました。ただルーを入れるだけでもカレーにはなるけれど、隠し味でこんなにも変わることに、驚きました。台所さんが作ってくださるなのはなカレーでも、こうやって手がかけられて作られているのだなあと思うと、嬉しかったです。
審査対象にはなりませんが、晩ご飯のおかずとしてもう一品、卵料理も作りました。とろりとした半熟の目玉焼きに、シュレッドチーズも乗せて……。ああ、なんて贅沢なカレーライスなんでしょうか。
けれど、お父さんお母さん、ゲストの相川さんや大竹さんのカレールーの評価はどうなのか……!永禮さんにもご飯の炊きあがりの評価をしていただきました。
順番が回ってきて、審査員の五人による、運命の試食の時間がやって来ました。試食してどう感じられたのか、頷いたり、点数を書かれている様子に、どきどきしました。
審査が終わったら、さっそくカレーライスを晩ご飯として頂きました。もう、ぺろりと平らげてしまいました。わたしたちが作った特製カレーは、ちょっぴり辛い。ご飯が止まらない、食欲がかき立てられる、元気になれるような味でした。
■優勝カレーは……
そして、炊きたての白ご飯のふっくらつやつやなこと! あゆみちゃんとななほちゃんが、七輪に付きっきりで見守ってくれていました。カレーライスを隣で静かに、けれど確かに支えてくれているような、いつもと変わらない美味しいご飯でした。
「こんなに美味しいカレーライスが、キャンプで作れるなんて!」
と、すごく感動していました。今までのキャンプの価値観がガラリと変わって、キャンプでもみんなと十分に美味しいものを作ることができた、その喜びも感じさせてもらえました。
そして料理の鉄人の結果発表は……なんと、わたしたちのカレーが優勝に選ばれました!
「このチームのカレーは、全てが濃い。辛さもしょっぱさもうまみも濃くて、パンチがあった」
と話してくださいました。
まさか選ばれるとは、と驚きつつも、お父さんのおっしゃることに共感していました。パンチがある、濃〜いカレーは、わたしの山小屋キャンプの記憶にも、濃く残されています!