氷川神社をあとにした私たちは高円寺駅へ向かい、鉄道に乗りました。各々、ギターとベースを背負い、キーボードとドラムスティックを持って。
向かう先は銀座です。
ウィンターコンサートを毎年撮影しに来てくださる、ステージカメラマンの第1人者、中嶌英雄さんがご招待してくださり、私たちは初めて、ライブハウスで演奏をさせていただけることになりました。
なのはなに来て初めてドラムを叩いた自分が、東京は銀座のライブハウスで演奏する日がやって来るとは、思えば不思議なことです。けれど、そんな考えが頭をよぎる間もなく、このときは、兎にも角にも、きちんとした演奏をしたい、という思いでした。
鉄道を降り、日が暮れてなお賑やかな街を歩きます。たどり着いたライブハウス「まじかな」の、艶々とした黒い入口をくぐると、中嶌さん、岡さんが笑顔で迎えてくださいました。
店の奥のステージはアンバーとブルーの照明で彩られ、黒で統一された店内にあってひときわ貫禄のある世界を醸し出していました。そこへ至る座席サイドの壁には、かつてこの場所を音楽と熱で満たしたのであろうミュージシャンたちの写真が飾られています。ホワイトマリンパールのドラムに座ると、その使い込まれた風情から、これまでどんな人々がこの楽器を叩いてこられたのだろうか、と心が躍りました。
演奏して抱いた気持ちを表すと、「楽しい」でした。一つひとつの音がはっきりと立ちながらも溶け合い、歌が引き立ちました。また、普段はステージに広がって楽器を配置していますが、バンドメンバーと互いにごく近い距離感での演奏は新鮮でした。そのためか、バンド全体のうねりを、ことさら強く感じました。
19時から2一時ごろまで演奏をさせていただき、こうした経験をさせていただけることが、ありがたかったです。
なのはなファミリー初の東京遠征は、講演も、2つのステージでの演奏も、無事、大成功でした。
自分自身の中にも、いつでも、人を惹きつけるに足る音、伝えるべき心を、もっと、強く、くっきりと育んでいきたいと思いました。