【4月号⑩】「初めてのステージ」 ほのか

 

 あの地震があったときは、私はお正月の初売りの帰り道、親戚の車に乗っていました。お正月早々、全国の日本人を驚かせた1月1日の能登半島地震。テレビでは、津波の映像や避難勧告が長時間にわたり報道され、一斉になり出した携帯の緊急地震速報を聞いて心がざわめいていました。
 私も13年前、東日本大震災で被災した経験があり、被災された方たちのために力になりたいと思っていたので、登半島地震の復興のためにチャリティーコンサートという形で出演できることになったときは、とても嬉しかったです。

 それと同時に、私が公共の場で出演する初めてのコンサートでした。
 能登半島地震復興支援のチャリティーコンサートが、美作文化センターで行われ、私たちは、『ビューティフル・ピープル』『バッド・ハビット』『ホワイト・フラッグ』の3曲を披露し、私はそのうちの最初の曲、『ビューティフル・ピープル』に出演しました。

 個人のダンス練習の時間は、朝や夜の空き時間で、私はシスターのまなかちゃんに振り付けを教えてもらいました。
 この曲はテンポは速めなものの、フラダンスなので、「アイハー」といって腰を落として左右に振る動きで踊ります。
 初めてフラダンスをして、その動きがとても難しいことを知りました。スタッフさんで、フラダンスのリーダーでもある、ゆりかちゃんは、その腰の動きが本当になめらかで、思わず見とれてしまいました。

 何日かかけて振りを覚えて、仕上げにはいりました。その中で、もっときれいに見えるために、歯を見せて笑う、手を大きく広げて腕の延長線上に中指が来るように指を開くことを教えてもらいました。
 鏡の前で、1人で踊ることもできるようになり、みんなでの全体練習では、初めて自分のポジションをもらえたことがすごく嬉しかったです。
 空き時間や夜の時間でみんなで練習を重ね、本番の1日前、会場でのリハーサルを行いました。その日はとても暖かい日で20度を超えていて、長袖1枚でもすごせるくらい春らしい日でした。

 

 

 みんなで車割りをして、私はあけみちゃんの運転する、10人乗りのキャラバンに乗りました。
 みんなでおそろいのTシャツとズボンをはいて、会場に到着したときは、「ああ、自分もなのはなの1員なんだな」と実感することができました。
 前の人のリハーサルの時も、みんなで真剣に聞いて気持ちをつくりました。そして場ミリや出はけの練習、バンドの音出しを行いました。
 私は音のミキシングは詳しくないので何もわかりませんでしたが、お父さんやあゆちゃんが主催の方と相談して一つひとつの楽器のボリュームを調整していました。

■やる気で満ちあふれて

 そして迎えた本番。私は朝からなんだかわくわくして、すがすがしい気持ちで朝食を食べて、衣裳に着替えて衣裳のまま車に乗り、10時30分ごろに会場に到着しました。空は曇り時々雨で、前日の暖かさはありませんでしたが、みんなのやる気で満ちあふれていて、肩や足を出す衣裳でもあまり寒さを感じませんでした。

 

 

 みんなで裏口に整列しているとき、通りかかった方が「すてきですね」とか、「楽しみにしてます」と声をかけてくださったのが本当に嬉しかったです。

 11時30分を過ぎた頃だったでしょうか。なのはなファミリーを紹介するMCが始まりました。あゆちゃんの、「みんな行くよ!!」という大きなかけ声に、みんなで「はい!!」と応えました。
 その声を聞いて、私はあゆちゃんは、なのはなファミリーのリーダーで、本当に私たちを導いてくれて、かっこよくて、これからもついて行きたい存在だな、と思って、感動しました。
 ステージに出て、その客席との近さに驚きました。

 

■すがすがしい笑顔

 最前列にもお客さんがいて、年配の方を中心に来場してくださっていました。私は、見に来てくださったことが本当に嬉しくて自然と笑顔で踊ることができました。一番後ろの右側で、1人のご婦人が私たちのダンスをまねするように曲に合わせてノリノリで手を動かされていて、踊っている私たちも嬉しくなりました。

 出番が終わって、私は裏口に戻りみんなのダンスが終わるのを待ちました。裏口からでも、バンドの格好いい演奏やみんなの迫力が伝わってきました。待っている間はひとりでしたが、ひとりじゃないように思えました。
 みんなが、すがすがしい笑顔で裏口に戻ってきて、みんなと合流して車に乗り古吉野に帰りました。一瞬のことのようでしたが、とても濃い時間でした。

 帰ってきた後は自家製のジャムサンドを昼食にいただきました。まだ興奮が収まり切っていませんでしたが、それと同じくらい達成感を感じました。
 今回の初舞台はとても楽しく、またチャリティーとして復興に貢献できるものになり、とても、出演できてよかったなと思いました。次のイベントまで、ほかの曲や新曲も踊れるように練習をしていこうと思います。