「明日から竹取りが始まります」
十月十七日、お昼の畑のリーダー会議で、まえちゃんの一言。え、竹取り? はてなマークが頭に浮かびました。だって、竹取りって、いつも夏野菜の支柱立てが始まる、春の四月、五月頃にするイメージだもの。今の時期に竹取りって、なんで?
しかし、これにはちゃんとした理由があります。竹は、お父さんの誕生日である十月十四日の前後が取り頃。なぜならこの時期に取った竹には虫がおらず、虫食いがないため長期保存が可能だからです。竹取りには一番のベストタイミングです。
十八日から二十日まで、永禮さんも来てくださるとのこと。永禮さんのチェーンソーで、どんな竹も一網打尽。ステージは河原大畑の竹林です。いざ、出陣!
■急斜面、踏ん張って
作戦は、十八日は一日、午前も午後も竹をひたすら取る。畑に並べて、十九日に枝払いと、先端のカット。適当な長さにカットした竹を、二十日にかけて、永禮さんのダンプで古吉野なのはなに運ぶという段取り。
十八日、晴天。音楽練習を終えた私たちが畑に到着すると、先発の永禮さん、まえちゃん、どれみちゃんがすでに竹を何本か切り出し、畑に竹が広がっていました。竹を切る永禮さんの手元によしみちゃん、どれみちゃん、なつみちゃん。林から竹を引っ張り出す役割に、まち、りなちゃん。その他の人で畑へ運ぶことに。それぞれの持ち場について、気持ちを整えます。
河原大畑の竹林は平地ではありません。畑のなかは平地なのですが、竹が生えている竹林は崖のような急斜面で、下は川が流れています。よしみちゃんとまちは、草刈り用のスパイク長靴を履いて備えました。これが大当たりで、崖で作業をしていても足元が安定します。足で踏ん張る、足腰も鍛えられそう。
■安全に倒れるまで
永禮さんとよしみちゃん、どれみちゃんが「どの竹を切るか」を短い時間で相談し、瞬時に決めます。
手当たり次第に竹を切るのではなく、実際に支柱に使えそうな、十分な太さや長さがある竹を見極めてから切るのです。また、竹の傾き加減で倒れる方向を判断し、引っ張り出すときにみんなが力を入れやすい方向で切っていきます。切る竹が決まると、「連続で一気に六本切るぞ!」「はーい!」永禮さんの一声に、みんなが大きく返事。心を一つにします。
永禮さんがチェーンソーで一気に竹を切る! 切り始まった竹からよしみちゃん、どれみちゃんが全身で体重をかけていき、畑の方向に倒れるようにします。「倒れまーす!」「はーい!」注意喚起は必須。
竹は十分な太さと重さがあるので、倒れるときが一番、細心の注意が必要です。竹がぶつからないように、竹が安全に倒れるまで、みんなで竹から距離を取って見守ります。
■整然と並べて
竹が倒れ、引っ張り出せる状態になったら、竹の根元に近い人から、バケツリレーのように、みんなでよいしょ、よいしょと引っ張り、竹を順番に畑方向に送っていきます。
竹を美しく畑に並べるのは運びチームの仕事。畑に並べるときも、整然と並べることが大事。ナナメになったり曲がったりして置いてしまうと、次々くる竹の本数に対応できません。どの竹も方向をまっすぐに、竹の頭と根元の向きを揃え、竹を切った面をそろえて置きます。こうすることで、多くの竹を畑に並べ、次の工程を円滑にすることができるのです。
■戦友のように
竹取りは、これの繰り返し。どれくらい時間が経ったでしょうか。ひたすら、夢中になって、みんなで竹を引っ張り、声を出し、運びあうこと一日。気が付いたら夕方になっていました。どんな作業でもそうですが、特に竹取りは、重い竹が倒れてきたりするので、みんなで気持ちを一つにして、安全に気をつけて作業をしないといけません。終わったとき、みんなと絆が深まったような、お互いが戦友のように感じられます。
天気が良く、秋だけど汗ばむ陽気で、休憩のときに飲んだお茶がとにかく美味しかったです。みんなで、美味しいね、次も頑張ろう、と言い合いながら飲むお茶は、どんな栄養ドリンクよりも美味しくて力が漲る、一番元気つけの効果がある飲み物だと思います。
十八日の一日で、みんなで河原大畑の竹林の竹を取りきることができました。竹林の一部分は完全に竹林が開け、川が見えている状態。みんなで並んでその光景を見あって喜びました。
■枝払い
一日の竹取りを終え、翌十九日の午前はひたすら枝払い。畑一面にある竹を、半日でカットできてしまうからやっぱりなのはなの子はたくましい。なのはなのお父さんが教えてくれた、鉄筋を使ってする枝払いはとにかく速い。スパッ、スパッ、スパッ、と一振りで枝を落とすことができます。
午後は永禮さんが来てくださって、古吉野なのはなまでの竹運び。竹の長さをある程度、長い、中くらい、短い、と分け、長さ別に永禮さんのダンプに載せて運んでいきます。
この運びも、みんなと心を一つにする大事な作業。ペアになって長い竹の両端をよいしょと持ち上げて永禮さんのダンプまで運びますが、よそ見をしたりぼうっとしてしまうと、長い竹ですから、竹の先端を、どこかや人の頭にぶつけてしまいます。ペアの人と、「この竹を運ぼう」と決めて、せーの、で持ち上げ、周囲に気をつけながら、丁寧に永禮さんのダンプまで運ぶ。
■ベストタイミング
二人の気持ちが一つになっていないと、そして周りに対する思いやりや視野の広さがないとできない作業です。
永禮さんのダンプが河原大畑と古吉野なのはなを往復すること五〜六回。短い竹は軽トラでも運搬。古吉野なのはなでは、まえちゃんたち五人程度が待ち構えており、永禮さんのダンプから下ろされた竹を、決まった収納場所に素早く収めていきます。
よし、これで全部の竹を運び終わったぞ! 最後の竹がきちんと収納場所に収まったとき、ちょうど午後五時の鐘がなりました。なんて気持ちよく作業が終わったのだ。伐り出した竹を、全部収納できました。
この時期、秋のベストタイミング竹を取り、涼しい中、天気が良い中でみんなで心を一つにしてやった竹取りは、大掛かりな運動会の競技みたいでとても楽しかったです。しかも虫食いがなくて綺麗な状態の竹を取ることができて大満足。ベストな時期に取ることができたゴールデンバンブー。みんなで力を合わせるからできる、絶対に一人ではできない竹取りでした。