ピカッ……ドーン!!
九月に、古吉野の校舎も停電するほど近くに雷が落ちました。
翌日、サトイモ担当のるりこちゃんが畑に見回りに行くと、交番先畑の一角だけ、葉や茎がシナっと元気をなくしていて、掘ってみると、芋が黒い。
(これは、まさか……)
そう、そのまさか。里芋畑に雷が落ちたのです。
畑の四分の一ほど、雷に打たれたサトイモのしょげた頭が見えるたびに、これはどうなのだろうかと思っていました。黒く焦げた芋を見ると、唸ってしまいますが、雷の電気で、普段は効きにくい畑のリン酸が効いて、実は豊作だった! ということもあるかもしれません。
試し掘りされた、雷に打たれていない里芋を見ると、見た目や状態は良いですが、芋の数はそこまで多くなく、収量は担当の子もあまり期待はしていなさそうでした。
■穫れ続ける芋
しかし、サトイモの収穫の日。畑に着いて、トリオで芋を掘っていくと、常に安定して芋が穫れ続けていて、これは雷とみんなの手入れの成果ではないかと思い、掘っていると、みんなで集めて全体量を見るのが楽しみになりました。
里芋掘りは二人で畝を挟んで、向かい合わせにスコップを畝肩に刺し、「せーの!」で掘り上げます。掘り上げられた里芋の、まるでラピュタのような土と芋の塊を、後を追って一人が土落としをしていく役割分担で進めていきました。わたしはももかちゃんと掘り上げて、ほしちゃんが土落としをする組み合わせで、里芋掘りに向かったのですが、土落としのほしちゃんも速いし、掘る私たちも速くて、長さ五十メートルはあるのではないかと思われる一畝も、ものの十分で傷芋ゼロで掘りあげることができました。
土は柔らかく掘りやすいのと、芋もしっかりついているので、掘っていてとても楽しかったです。
芋掘りは午後二時過ぎから三時の一時間かかるかどうかという、猛スピードで終わり、全員で十分で土落としを終えて、芋の回収に入りました。
芋回収と言っても、ただの芋回収ではありません。
■チーム戦で積み込む!
まえちゃんが、チーム対抗戦を考えてくれました。
メンバーを三チームに分けて、一チーム四畝、一輪車一台とコンテナ二十個、軽トラ一台を割り振って、どこのチームが一番早く軽トラに自分の畝の里芋を積み終えられるかを競います。
最初に、五分ほど作戦を立てて、わたしたちのチームは、芋の運搬がスムーズに行くように、歩きやすさを重視して、まずは畑の手前半分の芋を全員で、あるだけのコンテナに詰めて、空きコンテナがなくなったら、軽トラまで芋を運んで荷台に移し、また空になったコンテナを持って芋を回収するという作戦で臨みました。
「よーい、スタート!」
まえちゃんの掛け声で、チームの全員が無心で芋をコンテナに詰め始め、あっという間に全部のコンテナが里芋でいっぱいになり、そこから作戦を無視して、それぞれが、お互いがやり易いように動くと、自然と運び部隊が四人、詰め部隊が二人に分かれて、どんどこ芋が軽トラに直積みされて、気が付けば荷台は里芋で山盛りになっていて、積み切れない里芋が出てくるほどでした。
みんなで一位を目指して、協力しながらひたすら芋を運び続け、ほんの数秒の差で、りなちゃんチームに負けて二位という結果でしたが、自分たちの負けん気と身体の強さが良く解る勝負が面白かったし、結果的に、効率の良い芋回収が出来て、とても楽しかったです。
そして気になる収量ですが、この畑だけで、これでもかというほど溢れんばかりにサトイモが軽トラ三台分も回収されていて、思ってたよりも豊作だったのかなと思い、嬉しかったです。
作業も、交番先畑を三時四十五分までに回収までを終える目標で進めていましたが、ジャストタイムで、綺麗に終えることが出来て気持ちが良かったです。
さぁ、ここから芋を古吉野なのはなのグラウンドまで運んで干す人が要るため、七畝近くある魚とり裏畑では、人が減りますが、里芋掘りを終わらせるべく、気持ちを一つにして、二枚目の畑へ向かいました。
まえちゃんとみんなで、魚とり裏畑を二十分で掘り終える目標タイムを立てましたが、コンテナと軽トラを取りに帰ったまえちゃんが戻ってくるまでに何とか掘り終えようと、ありったけの力を振り絞って、ももかちゃんと掘って、掘って、掘り続けました。
畑の土は、交番先田んぼよりも柔らかく、畝肩に刺したスコップを、一回ジャンプして踏んづけたら、深くまで刺さり、一発で掘りあげられて、全力で掘って汗を流して、土からは里芋の塊がドーンと出てくると、生きてるなと感じて、幸せで、満たされた気持ちになりました。
まえちゃんが帰ってきたと同時ほどで芋掘りが終わって、目標より七分早い、十三分で掘りあげて、まえちゃんをびっくりさせることが出来て、嬉しかったです。
そのあとは、回収して運搬して、五時には芋を体育館の軒下に干し終えて、見事、目標としていた二枚の畑の里芋掘りを終えて、達成感をみんなとたっぷり味わうことが出来て、心がフル充電されました。
これから、貯蔵作業が始まりますが、ちさとちゃんが毎年各野菜の保存方法を進化させて、長期保存がきくようにシステムを作ってくれていて、今年の里芋も、良い状態で長く使えるように、貯蔵作業も頑張りたいです。