【11月号②】「伝える強さを胸に ―― 勝央町金時祭への出演――」 ももか

 ふるさと総踊り、なのはなの演奏、金時太鼓……四年ぶりに開催された、『勝央町金時祭』。十月八日、私たちは勝央町のもっとも大きなお祭りに出演しました。コンサートに向う過程で大切な本番の一回でもある、この日。理想を持って、本番をイメージして、気持ちを強く持って……いざ、金時祭へ。

 会場へ着くと、「第四十二回勝央金時祭」という黄色のバルーンアーチと、広場に組まれたステージ、テント村。天気の心配もありましたが、秋らしく涼しく、会場はたくさんの方たちが集まって、華やかな、賑わいを見せていました。 

 

 

 綺麗なお団子に白と紺の浴衣、そしてきゅっと赤い裾除けを身にまとって。これから『ふるさと総踊り』が始まります。
 『勝央音頭』『勝央ヤットサ節』『きんとくんサンバ』『四つ拍子』の四曲。曲が始まる前から、みんなから勝央音頭保存会の一員として、美しくそしてきゅっと引き締まった空気を感じました。

 『勝央音頭』が始まります。会場を包みこむような円を描きながら、踊っていたのですが。心から指先まで美しい……。私は応援組として、あゆちゃんたちと踊りを見させてもらっていました。
 すると、場を盛り上げるためか、あゆちゃんが、「〇〇ちゃん可愛いねーっ」「綺麗だねーっ」と口にするのです。私たちの前を通って、その言葉を聞くと思わずクスッとさらに口角を上げて笑ってくれるその表情が、なお綺麗で。真っすぐに向かうみんなの姿を見ているだけで、自然と心が浄化されたような気持ちにさせてもらいました。
 その後は一味変わって『きんとくんサンバ』生き生きとしたリズミカルな踊り。幅広い世代の方がそれぞれに楽しんで踊っているようすに、元気が出てきました。

 お母さんが、「ももかたちも踊ったらいいよ」と言って下さり、つきちゃんと、よしみちゃんと三人は吸い込まれるようにみんなの円の中へ。ラストは『四つ拍子』、きんとくんサンバからがらりとまた変わり。
 今度は、生の歌と太鼓の力強い音と共に奥行きのある振り。私が知っている中でもっともお気に入りなのが『四つ拍子』。なのはなのみんなが出す空気感、それに包まれあたたかな気持ちで踊らせてもらって。バクバクとした緊張感が少しやわらぎ、「このあとの演奏、頑張ろう!」とさらに、勇気と気合が湧いてくることを感じました。

 

 

■どう見せたいのか

 一人ひとりが迫力のある演奏を。伝えるための演奏を。怖がらないで攻めていくような前向きな気持ちで演奏していくこと。それがあるべき姿。ダンスが得意か不得意かではない、みてくれる人に何を伝えたいのか。どう表現したいのか。評価を気にしてビクビクするのではなくて、自分たちがどう見せたいのか。
 それが大事だということを知りました。お父さんの言葉、それを胸に置いて……。

 続いて、なのはなの演奏が始まります。一曲目は『ザ・グレイテストショー』ポーズからポーズまでの動き、表情、気持ち、一つひとつみんなと揃えて来ました。なのはなサーカス団の一員になって、大迫力のショーを作り出している。
 中には、色々な振りに分かれる部分もあります、しかし気持ちはみんなと繋がっている。どんな時も、お互いを感じて。みんなの一部として、全力で心から指先、隅々まで使って表現して行きます。

 お客さんとの距離は手を伸ばせば届いてしまうのでは……と思う程近い。それだから、だからこそ、曲が進むにつれ、演奏に引き込まれていく。真剣に、夢中になって観て下さっていることを感じて、すごく嬉しくなりました。ラストのポーズを決めて、音が消えた瞬間。ワッと拍手で一杯になりました。私たちの気持ちが届いたでしょうか。何より、客席に溢れる笑顔、それが希望となり勇気になりました。
 この日まで、何度もこの曲は踊って来ました。でも、毎回新鮮……回数を重ねるごとに、楽しさが増す。みんなとの一体感を強く感じています。サーカス団のダンサーになったり、しなやかな動物になったり、踊っていたら、何にでもなれてしまいそうな……そんなグレイテストショーが私は大好きです。

 

 

 それから四曲の演奏があり、『ハウ・ファー・アイル・ゴー』へ。なのはなを港にして、私たちはどこまでも行く! 心地よい綺麗な波の音にのって、海の妖精となり、お客さんの前をくるっとターン。私たちの抱く明るい希望を表現する。
 メンバー六人の一人ひとりがかけがえのない存在、私はこの曲を踊ると凄く幸せな気持ちになります。なのはなのみんながいるから、私はこの先どんなことがあってもあきらめないで、回復する道に向かっていけると。曇り空が吹き飛んで、夏の眩しい太陽が心にさしこむことを感じます。

 そして、ラストナンバー『ビューティフル・ピープル』泥臭く、若々しく、今を精一杯で生きます、そう宣言して。
 私たちらしくいっぱいの笑顔で踊ります。お客さんとの距離も、物理的な部分だけではなくて、心の距離もぐんと近づくような感覚がします。あたたかな空気が、お祭り中に広がって……ラストのポーズ、大きな拍手と共に、なのはなの演奏が終了。一つでも多くの、希望や勇気になったらいいなと思いました。
 自分を消して、心・身体に強さを持って叩くんだ!『ビューティフル・ピープル』から太鼓の法被に着替える五分間。この時間で衣装だけでなく、気持も着替えます。

 

 

■力強い気持ち

 法被にきゅっときつく帯を絞めて、手甲をまくと、さらにと引き締まる思いに。バチを持って、ステージ裏にスタンバイしに向かいます。「よし、やるぞっ」秋の空の下に再び出ると、さっきまでとは、変わった世界が広がって見えました。力強い気持に合った、空気感……そうです、勝央金時太鼓保存会のベテランの方々と、岡山県和太鼓連盟の有志の方々による『疾走』が鳴り響いていたのです。私は圧倒されてしまいました。

 全身で太鼓を叩いている……舞台裏からは、演奏されている姿は見えないけれど、腕を上に上げたとき、伸びる部分は全て伸びきっている姿が思い浮かびました。お腹の底から発される掛け声と、溢れる強さ。
 その瞬間、理想が目の前に表れました。今できること。それは、練習して掴んだ曲のイメージをリズムで表現していく。九人の太鼓メンバーと今の精一杯で叩くんだ、この本番の中でもレベルアップしていくんだ。
 本番だけど、ゴールではない。失敗を恐れずに、思いっきり叩こう、太鼓を楽しもう。まだまだ成長過程で、未熟だけど、お客さんの心をダイレクトに強く打つくらい。強い心で叩けるくらいになりたい。

 

勝央金時太鼓保存会のベテランメンバーの方々と岡山県和太鼓連盟の方々による『疾走』

 

 初の太鼓本番で、バクバクとした緊張感がありました。けど、『疾走』を聞いた瞬間……緊張が程よい緊張と共に強い勇気に変わることを感じました。その後、小学生、中学生の演奏が終わり、私たちの出番がやってきました。
 締太鼓を持ちあげ、ステージへの階段を一段、一段、腕にはずっしりとした太鼓の重み。その重さが太鼓を叩く人に持つべき心持ちを表しているようでした。強く堂々と……。

 

■解放感のある中

 『那岐おろし』大太鼓のふみちゃんの強くて堂々とした打ち出しから。「はっ!」と天に向ってバチを上に突き出し、『那岐おろし』がはじまります。
 一打目のアクセントを打った途端、曲の物語へ突入。宮太鼓、締太鼓、大太鼓、それぞれソロがあります。この場面では、どこを立たせたいのか。何をお客さんに聴いてもらいたいのか。みんながお互いを感じて、一つになって叩いている。
 屋外という解放感のある中にも、響き渡る『那岐おろし』。凄く楽しい、叩いていて未来に勇気が湧いてくる。どんなことも跳ね返せそうなくらいに強さがもてました。太鼓のリズムは叩いている自分たちもどうしようも出来ないくらい、テンポが速い。けど、誰か一人が乱れることなく一体となっていた。きっとそれは、一人でも籠っていたら出来ないこと。みんな表現者として、外向きであり続けていたから、出来たのだと思いました。

 二曲目は『若葉』、りなちゃんの「カッカラ、カッカラ」と力強く、高く響き渡る枠打ちのリズムからはじまります。大太鼓、そして締太鼓の出番です。
 私は本番数週間前、強弱が自分のアレンジになってしまっていてパートのかにちゃんたちと合っていない、ということを知りました。それからつきちゃんが一小節一小節、強弱やアクセントを確認し、見てくれました。
 一音、一音を確実に……若葉があちらこちらで舞っているような、色々なリズムが立ち代わり入れ替わり。笑顔で『若葉』の物語をステージから、みんなで生み出していけることがとても楽しかったです。

 両手打ちでのクライマックスを終え、「ドドン!」叩き切りました。なのはなに来てから、かっこよい太鼓メンバーの姿に吸い込まれるように夢見ていました。「いつかみんなと叩きたいっ」それが今日現実になって、こうしてみんなの中で金時太鼓の一員として、この場で叩かせてもらえたことが、信じられないくらいに有難くて、嬉しくて。

 まだまだ、基本もしっかりと出来ないくらい……もっともっと太鼓を好きになって、上達していきたいです。
 こうして見てくださる方、伝えるべき相手がいて、その人たちに向けて気持を表現出来る場があることが有難く、一回一回を積み上げて自分たちの成長へと繋げていきたいです。

 

毎週水曜日は太鼓の練習日。あたらしく『金太郎囃子』の練習をしています!
初挑戦の篠笛を教えて頂いています