「新しい言葉」 えつこ

10月31日

 私は今、トロンボーン漬けの毎日で、とても楽しいです。理想に向かって、時間のある限り練習しているとき、私は人間なんだということをとても感じます。私はとても不器用なので、人の何倍も練習しないと、普通になれないです。でも、だからこそ、出来ないことが出来るようになったときの喜びは大きいです。

 最近嬉しかったことは、『アミューズメントパーク』の4曲を、原曲よりもゆっくりのテンポではあるけれど、形にできたことです。
 『アミューズメントパーク』では、バリトンサックス用に作られた楽譜をトロンボーンで吹くため、トロンボーンでは吹きにくいような連符も出てきて、この楽譜を見たとき、出来ないかもしれないと、不安になりました。もしかしたら他の楽器でこのパートはやった方が良いのかもしれないと思ったこともあります。

 しかし、私は、同じパートを吹くさやねちゃんに勇気をもらいました。強い意志を持って練習に向かうさやねちゃんの姿に背中を押されて、私もさやねちゃんに少しでも近づきたいと、その気持ちが力になりました。
 
 楽譜を1小節ずつに分解しました。1小節ずつ、メトロノームの一番ゆっくりなテンポで繰り返し吹いて、慣れてきたらテンポを一段階ずつ速めていく、という方法で練習しました。1小節ができるようになったら、次の小節に進みました。それでも難しい連符のところは、音を3つずつに分けて、繰り返し練習して、少しずつ繋げていきました。

 そんな方法で練習していって、一番難しい『ローラーコースター』をなんとかテンポ110で吹けるようになったときは、新しい言葉が自分の中に入ったように感じて、そのことが自信になりました。まだまだ人に聴かせられる形にはなってはいないけれど、猛練習したら出来るようになると、希望が見えました。

 まだまだ途中経過ではありますが、それでも、アンサンブルのメンバーと『アミューズメントパーク』を合わせていると、一緒に吹いている仲間のことが大好きだ、という気持ちが強くなります。さやねちゃんと、お互いに、「聞こえてくる音が、自分の音なのか相手の音なのかわからないね」と言って笑いました。さやねちゃんも同じことを感じていたんだ、ということは、2人の音がぴったりと合っていたということなんだと、嬉しくなりました。音で心を通わせる、アンサンブルの時間が大好きです。

 先週の音楽合宿でのことになりますが、『メリーゴーランド』を合わせてるときに、写真を撮りに来てくれたかにちゃんが、「すごく素敵だね。泣きそうになった」と話してくれて、そのことがとても嬉しかったです。途中経過ではあっても、気持ちで演奏していたらそれは人に届くんだと、思いました。一番大事なのは、気持ちで演奏することなのだと、思いました。

 お父さんが、『メインストリート』を聴いてくださって、とても笑顔で聴いてくださったことも、大きな力になりました。お父さんは、「上手くなったね」と言ってくださいましたが、さやねちゃんが一緒だからです。2人で同じパートを吹いているけれどまるで1人が吹いているかのような一体感、それに加えて、2人で吹いているからこその密度の濃い音が、理想です。もっともっと、艶があって密度が濃くて、音楽に深みを出せる低音を吹けるようになりたいです。メロディーを吹く人の優秀な右腕になりたいです。