みなさま、こんにちは。丸尾くららです。私は半分畑で育っている丸オクラです。名前の通り、実の断面が丸く、大きく生長しても柔らかく美味しい、オクラの原種です。
スーパーでよく売られている、断面が五角形の角オクラと比べて、私は栽培期間が長く、収穫までに手間や時間がかかるうえに、収量性が低いことから、流通数の少ない希少なオクラですが、毎日、なのはなファミリーの家族が、丹念に手入れをしてくれて、私は嬉しくて花を咲かせ、ネバネバの強い、栄養価の高い立派な実をたくさんつけています。
こう話しているうちに、今朝も、しなこちゃんといよちゃん、さやねちゃんが収穫に来てくれました。ではここからは、お話をさやねちゃんにバトンタッチしますね。
■エレガント、くららちゃん
「これだけ葉が青々と茂っているのに、今朝の収量は八百グラム。少なすぎる」
「もっと穫れるはず」
八月下旬。しなこちゃんと私は、気持ちばかりの実を入れた収穫カゴを手に、オクラ畑を眺めました。
「花が咲いていないね」
それでもなぜか、オクラはきっとたくさん穫れるようになると私たちは信じていました。
調べたところ、丸オクラはとてもデリケートな品種であることが前提で、角オクラと同じように肥料を与えたり、最初に少しでも多く肥料を与えると、木が暴れてしまい、全く実がつかないものもあるということでした。
また、丸オクラを育てている農家さんは、株を三本仕立てにし、収穫後に実の下の葉を摘んでいます。
くららちゃんは、葉と枝が伸びたままです。三本仕立てにするには、太く伸びた枝を何本も剪定し、葉も多く摘みますが、大きなショックを与えることで、くららちゃんは、株の生長から花をつけ実をつけるほうへ、変わっていけると思いました。
剪定、摘葉を終えると、くららちゃんはエレガントになりました。畑の姿が変わりました。これがくららちゃんのあるべき姿だったんだなと思いました。三日後、収量が六キロに、さらに三日後には収量は十二キロになりました。
調べていて面白いなと思ったのは、オクラの株の勢いが適切かどうかの判断が、先端に咲く花の上に葉が何枚あるかでわかる、というものでした。葉が三枚くらいなら適正、一、二枚は弱い、五枚以上は勢いが強いです。これによって、栄養不足や過多、水分過多または不足、日照不足や気温低下という、オクラの感じていることがわかります。
■雷雨の夜が明けて
また、虫の被害も厄介です。花をかじったり、実をかじったり吸ったり、葉を食べたり。くららちゃんのために、悪い虫はすべて瞬時に捕らえます。畑に二十人で入って虫を潰したり、薬剤防除もやりましたが、まよちゃんとりのちゃんが作ってくれた、虫界の王オニヤンマの模型を、株の高いところ、目立つところにつけ、オニヤンマの周辺は虫がいなく、オクラが守られています。
くららちゃんは、日に日に生長し、私たちよりも大きくなりました。枝は太く頑丈です。しかし、根が真下に伸びているため、激しい雨風が苦手です。
九月中旬、激しい雷雨がやって来た次の日、収穫に行きました。
「今朝は、収量が少なめだね」
不吉な予感がしました。
「あ! くららちゃんが倒れてる!」
畑の中の二十株ほど、大きく傾いている株がありました。
「昨日は、大変だったんだね」
葉が揺れ、株が揺れて、根が揺れて、くららちゃんは大変な雷雨に耐えていました。
私はとても悲しい気持ちになりましたが、しなこちゃんが、変わらない笑顔で、
「大丈夫、みんなで起こそう」
と言ってくれました。
しなこちゃんとるりこちゃん、ももかちゃんと力を合わせて、二メートルの竹を倒れた株のそばに立てて支柱にし、株を起こしました。
くららちゃんは、今や二メートルを超え、日に十キロ前後、柔らかくて美しい実をつけています。ハイビスカスの仲間である花も、太陽の光に向かって、美しく咲いています。
私自身が、くららちゃんに育ててもらっていると感じています。くららちゃんが元気に、きれいな花、実をつけてくれることが嬉しいです。くららちゃんを通して、しなこちゃんをはじめ、畑チーム“ククナ”のみんなやお父さん、お母さん、家族のみんなで考えて、力を合わせて作業をして、くららちゃんが私たちの気持ちに応えてくれることが嬉しいです。
いつか、収穫を脚立に乗ってやるのだろうか、とちらと心配になりますが、霜が下りるまでもうしばらく、くららちゃんとみんなと一緒に、たくさんの美味しいオクラを届けます。