
10月15日のなのはな
いつもなのはなファミリーを温かく応援してくださる、永禮さん。
この日は永禮さんの地元の津山市東一宮で開かれる、『鵜の羽フェスティバル』に出演させていただきました。
会場に着くと、永禮さんを初め、東一宮の地元の方々が、「なのはなさん!」と迎えてくださり、控え室に向かう道すがらも多くの方々が、「毎年コンサートに行ってるよ」などと声をかけてくださいました。
東一宮のみなさんの変わらない温かさに触れ、わたしたちなのはなファミリーが来ることを楽しみに待っていてくださっていたことを感じました。
鵜の羽フェスティバルは東一宮の住宅街にある天王公園で行われるお祭りです。広場の中央にステージがあり、背景にかかる紅白幕には、『鵜の羽フェスティバル』と大きな文字で描かれてありました。ステージを囲むように、飲食店の屋台が立ち並び、大きな山車も出されていました。
お祭りは10時から開演し、わたしたちの出演の前には、地元の小学生や中学生による合唱団や空手の演武が披露されました。他にもステージ横の公民館では、地域の方々の作品の展示会も開かれており、年配の方から小さな子供まで、大勢の家族づれで賑わい、子供のはしゃぎ声が飛び交い、活気で溢れていました。
11時10分から、わたしたちの演奏が始まりました。テント横で出の待機をしているときは、曇り空で小さな雨粒がぱらぱらと落ちてくるような天候でした。
わたしたちのステージが始まる頃に永禮さんがテント傍まで来てくださり、笑顔で手を振ってくださいました。永禮さんの姿を見て、畑作業でダンプを出してくださったり、直近では一緒に稲の脱穀をさせていただいたことを思い出し、日頃、なのはなを応援して助けてくださる永禮さんに向けても、良い演奏、喜んでいただける演奏を届けたいという気持ちでいっぱいになりました。
ステージに立つと、ステージを半円に囲む観客席にお客さんがたくさん座っていて、なかには、なのはなを卒業して東一宮に住む、のぞみちゃん家族の姿や、なのはなの演奏を見るために駆けつけに来てくれた関係者の方もたくさんいて、笑顔で見てくださっていることがわかりました。永禮さんは演奏中、ずっとステージに一番近い本部テントの横でわたしたちのステージを温かく見守ってくださっていて、一曲が終わるたびに大きな拍手を送ってくださいました。ステージの前も横も、わたしたちの演奏一曲一曲を楽しんで見てくださっている東一宮の方々の姿があり、会場全体を包み込むような温かさが広がっていました。それはとても優しい空気で、わたしも緊張がほぐれ、安心したなかで表現することの楽しさを感じながら、ステージに立つことができました。
最後の曲目の『ビューティフル・ピープル』が踊り終わると、大きな拍手が湧き、それから、「アンコール! アンコール!」という声が響きました。その声はどんどん大きくなりました。その声に応じて、もう一度、『ビューティフル・ピープル』を踊らせていただくことになりました。
再びステージに戻ってくると、それまでよりさらに大きな拍手で迎えられました。踊り始めて、上を見るポーズで視線を上に向けると、眩しいくらいの日差しが射していて、自然のライトに照らされているようでした。明るくなった空を見て、永禮さんを初め、東一宮のみなさんと一緒に作り上げた、わたしたちのステージが空に届いて大きなパワーとなり、演奏前に広がっていた曇り空もどこかへ吹き飛んでいったのだと思いました。アンコールの『ビューティフル・ピープル』はみんなでより弾む気持ちで踊り、演奏後も大きな拍手が送られました。
わたしたちの演奏後はすぐに観客席が撤去され、続いて、東一宮の踊りである、『一宮小唄』に移りました。大きな山車が広場の中央に移動され、山車を囲んで、大きな円をつくりました。ビューティフル・ピープルの黄色フラスカートの衣装のまま、わたしたちも円に混ぜていただき、踊りを踊らせていただきました。『一宮小唄』は、東一宮に広がる穏やかで品のある温かさをそのまま振りにしたような、落ち着いた曲調と親しみを感じやすい振り付けの踊りです。両手をくるくると回したり、耳の横で手を叩いたり、勝央町の踊りとはまたひと味違って、様々な地域の踊りを踊れることが嬉しく思いました。
踊っていると、周りで見ていた地域の方々が、「ここに入って良い?」と円に飛び入り参加してきてくださり、人と人の間隔も近くなっていきました。わたしの前で踊っていた年配の男性の方が、「踊るの初めてだけど、楽しいね」と声をかけてくださり、『一宮小唄』を踊らせてもらったことで、より東一宮の方々となのはなファミリーの距離がぐんと近くなったように感じ、とても嬉しい時間でした。
全部で4回踊り、会場をはけてテントまで戻ると、永禮さんが待っていてくださり、「ありがとうございました」と、一人ひとりの名前を呼んで、声をかけてくださいました。その後も、多くの方々がウィンターコンサートのチラシにも興味をもって、受け取ってくださいました。
楽器や衣装を片付けて、会場を出発するまで、出入り口で永禮さんと娘さんのあやかさんが立って、手を振って見送ってくださいました。
わたしたちを支え、応援してくださる永禮さんに日頃の感謝の気持ちをもって、演奏を届けられたことが嬉しかったです。永禮さんが喜んでくださる笑顔が何よりも大きな力となりました。『鵜の羽フェスティバル』という場のなかで、永禮さんとさらにつながり、そしてこれからも畑作業や落ち葉集めなど、永禮さんと作業をたくさんさせていただける日を思うと、とても嬉しく感じます。
永禮さん、東一宮のみなさんに迎えられた『鵜の羽フェスティバル』は、とても心温まるイベントとなりました。
(るりこ)
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鵜の羽フェスティバルでのステージを成功に終え、しかし、私たちには、古吉野の体育館でもうひとつのステージが待っていました。そう、ドキドキの、役者オーディションです!
私は、この日を、緊張しながらも、とても楽しみにしていました。火曜日に、オーディションで言うセリフが、リビングの黒板に張り出されました。今までのコンサートのセリフの中から、オーディションで言うセリフを6種類、お父さんが選んでくれました。その中から、言いたいセリフを自分で選んで、動きもつけて、みんなの前でセリフを言います。
私は、その6種類のセリフを見て、絶対にこれだと思うセリフがひとつありました。それは、去年のウィンターコンサートに登場した“ナナポン”のセリフです。
主人公のひとりであるとうこが、損得感情の化身であるギブソンの仲間になってしまい、とうこの仲間であるてつおとたかおが、もう愛の世界を作ることなんてできないと、諦めそうになってしまっていたときの、ナナポンの言葉です。私はこの場面が大好きで、このセリフを見た瞬間、オーディションでは絶対にこのセリフにしようと決めました。
それから、短い時間ではあったけれど、発表があってから今日まで毎晩、音楽室で秘密の練習をしていました。オーディションではあるけれど、オーディションというよりは、ひとつの表現として、このセリフを言いたいと思い、練習をしました。逆境の中であっても決して諦めない、ナナポンの勇気があって前向きなセリフを言っていると、私も気持ちが強くなりました。オーディションのためというよりは、私もナナポンのように強く勇敢に生きていきたいという気持ちを表現をするために、このセリフを言いたいと思いました。
夜のお風呂や、リビングでの話題も、オーディションの話で持ちきりで、私は本当に今日をとても楽しみにしていました。そして、ついにオーディション当日です!
オーディションに入る前に、お父さんが、演劇をするときの気持ちを教えてくださいました。演じないこと。別の人を演じるのではなく、自分が役そのものになることが大切だと、お話してくださいました。
私は、その言葉を聞いて、足が震えるほど緊張していたのが、和らぎました。自分がナナポンそのものになって、気持ちをそのまま表現しようと、思いました。
オーディションがはじまり、1人ずつ順番に、それぞれが選んだセリフを言います。見ている時間も、とても楽しかったです。同じセリフを言っていても、人によってカラーが違って、それぞれに魅力的で、新鮮でした。みんなの魅力や、新しく知る一面を見つけたりして、みんなのことがもっともっと大好きになりました。格好良かったり、感動して涙が出そうになることもありました。自分を離れて全力で表現している姿から、自分も力をもらい、私も誰かを勇気づける表現が出来るようになりたいと思いました。
オーディションの6種類のセリフの中で、車を運転して、割り込みをしてきた人に対して怒りをぶつける父親のセリフがあります。普段はおだやかな子が、思い切り叫んでいるのを見ると、私も爽快な気持ちになりました。
途中、お父さんが、車を運転するパントマイムのお手本を見せてくれました。アクセルを踏むふりだけでなく、割り込みをされたときには、ちゃんとブレーキを踏む仕草も入れることを、教えてもらいました。そのことで、より劇がリアルになりました。演劇では、道具を使わずに、パントマイムで何かをしている演技をすることがあります。そのときに、そこにないものをちゃんと見て演技することの大切さを、再確認しました。
そして、ついに私の番が来ました。直前まで心臓がドキドキと鳴っていたのですが、みんなの前に出たとき、みんながあたたかい目で肯定的に見てくれているのを感じて、私は、その中で、未熟ながらも伸び伸びと表現することができました。ナナポンのセリフの最後の、「絶対に諦めない」という言葉が、私は大好きです。自分の使命を忘れてはいけない、何があっても絶対に諦めない、という気持ちを込めて、表現しました。セリフを言った後、とても清々しい気持ちになりました。大好きなセリフを通して、みんなの前で自分の気持ちを表現出来たことが、本当に嬉しかったです。
オーディションが終わった後で、お父さんとお母さんが、
「みんなが強い声を出せるようになっていて、誰もが役者になれると思って、本当に心強くて嬉しい」
と、話してくださいました。お父さんとお母さんの笑顔に、私も嬉しい気持ちになりました。
お父さんは、強い声を出せるようになることは、生きる上でとても大切だということを話してくれました。大きい声を出せる人は、その場に応じて、声を小さくも大きくも調節することができる。話に説得力を持たせることもできる。
自信のある人は、言葉と言葉の間に、一瞬の間を開けて話すことができる。そのことで、聞かせたい言葉を際立たせることができる。
お父さんのお話を聞いて、声の幅を広げることは、人間としての幅を広げることにもなるのだと思いました。
また、演劇のときの身体の動かし方について、演劇のセオリーがあるという話もありました。自分で工夫して動くのではなくて、演劇のセオリーにのっとって動くこと。希望のあるセリフのときは上の方を見る。自分がセリフを言わないときは、体を横向きにして、邪魔にならないようにする。好き勝手に動くのではなく、セオリーにのっとって動く。その美意識を積み重ねて、なのはならしいステージが生まれるのだと思いました。私も、なのはなのステージを作るひとりとして、もっと美意識を高めたいです。
最後に、お父さんとお母さんが、みんなの演劇を見て、みんなの成長と、希望を感じたと、話してくれました。私も、このオーディションで、みんなのことをもっと好きになったし、大好きなみんなとコンサートを作っていけることに、希望を感じました。今年はどんな物語ができるのか、とても楽しみです。少しでも力になれるように、日々の生活から気持ちを作っていきたいです。
(えつこ)
音楽合宿2日目でもあったこの日は、他にも『オブリビオン』のダンスを皆で集中して作り進めたほか、バンドは『バッド・ハビッツ』『ナチュラル』といった新しい曲の練習を進めました。