秋冬野菜の種まきは、キャベツとセロリのから始まりました。
セロリの発芽適温は、十五〜二十度。どうやってこの気温を作り出すのか。
一回目の種まきは七月中旬のことでした。日中の暑さの中、どうやってストライクゾーンの温度を作り出すか、というのが最も重要で難しいことでした。
セロリの種まきは、秋冬野菜の中で一番難しいという認識があって、発芽率を高くするために、種まきをするまえに簡単な芽出しを行いました。湿らせた布に種を並べて折り畳み、水を浸して、冷蔵庫に一時間ほど入れます。
■小さな種
冷蔵庫から出したあとは、すぐにセルトレーにつめた土の上に種をまいていきました。
普段食べているお米が膨らむまえの、五分の一の大きさもあるか、というほどの小ささの種をピンセットで布からひと粒ずつつまみながら、茶色い培土の上に置くと、ふっと気を抜くと培土の一粒ひとつぶよりも小さいセロリの種は、培土の背景になじんで、どこにあるか見失ってしまいます。
見失わないように種をじっと見つめながら、ピンセットで、本当に種が隠れる程度一ミリもないくらいの厚さで覆土を行います。芽出しからこの種まきまで、ものすごく集中力を使いました。
この吸水してから、すぐにまくというのが大切なポイントです。繊細な種まきを終えて安心したいけれど安心できません。なぜなら、ここからの育苗場所の主に温度管理がとても重要だからです。
管理場所は、エアコンをかけた六年生教室です。教室内は天窓があるため、室内でも柔らかい日差しが入ります。セロリの種は二十五度以上になると二次休眠してしまうという、なんともこの猛暑の中でリスキーな性質を持っています。
はじめの四日ほどは二十五度以下を保つことができましたが、外の気温が上がってくると、エアコンを十九度に設定しても、室内が二十五度を超えてしまうという事態がおこりました。絶対にセロリの種を眠らせてはいけない、一粒でも多く発芽させたいと思いました。
あゆちゃんが相談に乗ってくれて、扇風機を設置し、扇風機の羽の後ろに凍らせたペットボトルをくくりつけ、扇風機のプロペラから送られるひんやりとした風で、セロリの周りの空気を冷やす、という作戦をとりました。
■十日経つと
一番温度が高くなる、午後十二時から三時頃にかけてペットボトルをくくりつけました。扇風機に抱っこちゃん結びできっちりと結わえて、こういうときも畑のちょっとしたノウハウが役に立つなと思って嬉しくなりました。
ペットボトルの氷は四時ごろにはすっかり溶けて水になってしまいましたが、この作戦は上手くいって、二十五度以上には上がらなくなりました。
資料で調べたところ、セロリの種は十日前後で発芽するということでしたが、本当にその通りで八日目くらいから頭を持ち上げるように白い茎がにゅっと見え始めました。

種まきから十日経つと発芽がそろいはじめ、最終的な発芽率は九十パーセントと理想的なストライクゾーンの割合を発芽させることができて嬉しかったです。
セロリだけでなく、キャベツや地這いキュウリなどもこの六年生教室での管理は順調だったのですが、発芽したあとが問題でした。天窓から光が伝わるといえども、やはり室内で苗は発芽したあとあっという間に徒長してしまいました。
六年生教室で発芽を終えた後は、もみすり機倉庫横の、白いビニール素材の屋根が備えられたスペースに移しました。しかし、このスペースは屋根があって日陰ができるものの、今夏は日陰の下でも日中に三十五度を余裕で上回り三十八度になってしまうことがしばしばありました。
■ぴったりの場所
お父さんに相談させていただいて、発芽後の外の育苗スペースを玄関下にすることになりました。玄関下の温度を、育苗チームのさくらちゃんが一日の中で数時間おきに計ってくれて、一日のなかで平均した最高気温は三十二度ということが分かりました。
同じ日陰でも、玄関下では大きく開けた風の通り道があることと、グラウンドのように直射日光をまっすぐに受け止めない地形であることで温度が上がりすぎません。

玄関下、という今まで何も思わずに通っていた場所が、育苗のスペースにぴったりの場所でした。
発芽したらすぐに玄関下にうつす、という流れにしました。玄関下のいいところは温度面だけでなく、お父さんやお母さんや、早朝作業で育苗チーム以外のみんなも毎日通るので、みんなに苗の様子をなにげなく見てもらえるというのが安心できてすごくいいなと思いました。
秋冬野菜で一番はじめに植え付けをしたのは地這いキュウリとキャベツ第一弾でした。暑さという困難を乗り越えて、苗たちがスケールの大きな畑へと旅立っていくのが嬉しかったです。
まだまだ秋冬野菜の育苗は続きます。苗チームのみんなと少しでも発芽率よく、少しでも健全な苗を育てられるように見ていきたいなと思いました。
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【畑ニュース】 夏野菜から秋冬野菜へ
夏野菜の収穫が続いている中、秋冬野菜に向けて種まきや、秋冬に収穫を迎える芋、豆類の手入れも進んでいます!