「利己心の理解 / ルーマニアの小説家になった話」 りんね

9月27日

〇利己心の理解

 前回の同盟会議で、お父さんから利他心や利己心についての捉え方について、教えてもらいました。
 それから日々の生活をしていて、自分の中で、「あっ、これは利己心だ」と気づく場面がいろいろとありました。

 利己心は、自分を基準にして正義を考えてしまうこと、だと思いました。自分を基準にしてしまったとたん、視野が極端に狭くなるのだと感じました。
 日々の中で、そういう利己的な感じ方を消すことはできないけれど、そう感じたときに、「これは利己心だ」と分かると、「これは感じなくてもいいことだ。人も自分も、怒らなくていいことだ」と認識することができて、すごく、楽になりました。

 一つ、今朝の個人的な出来事について書きます。
 毎朝イチジクの収穫をさせてもらっていて、嫁入りできないものを、加工用にロスに貯めさせてもらっていました。今日もロスへ行って、今まで貯まっていたものを少し見ると、大部分に腐りがきてしまっていました。
 イチジクが非常に傷みやすいことと、ロスが少し湿度の高い環境だったことで、傷んでしまっていました。それで、「ただでさえ傷みやすいのに、なんで早く使ってもらえないんだ」とか、「だから今までもこうやってたくさん腐ってきたんだ……、もうヤダ」という思い、自分を基準にして人を責めるような、利己的な気持ちが湧いて、心が塞ぎました。
 でも、実際は誰が悪いというわけでもないのだと、思いました。ただ、今の現状を河上さんに伝えて、これからは冷蔵庫に保管してもらうようにでもできれば、解決できるし、嫁入りできる実はできているのだから、損失もそんなに大きくはありません。

 それでも気持ちがもやもやしていて、朝食後の洗い当番の最後の集合で、「全然洗いと関係ないことだけれど……」と、誰が悪いわけでもないことを前置きして、今朝のショックだったことを話させてもらいました。みんなが、頷いて聞いてくれました。
 すると、さっきまで叫びだしたいような気持ちだったのが、嘘のようになくなって、イチジクの実の腐りも、心を重たくするものではなくなりました。
 誰かに共感してもらうこと、そして、誰かのせいにしないこと。穏やかに、人との関係を良いものにしていく気持ちの持ち方を、少し実践できたのかな、と思って、嬉しかったです。

〇ルーマニアの小説家になった話

 少し前のことですが、済東鉄腸さんの『千葉から~ルーマニアの小説家になった話』を読みました。最初は息抜き程度に読み始めたのですが、思ったよりも深い共感があって、面白く最後まで読みました。
 彼がなぜ、ルーマニアという国にそこまで惹かれたのか。それはあまり理解できたわけではないけれど、ルーマニアという国がマイナーであるゆえに、ルーマニア語を学んで、ルーマニア語で働きかける行いが全て、大きな影響力になってくるのだと思いました。つまり、ほとんどルーマニア語を話せる日本人はいないので、自然とルーマニアにおいて著者が日本代表になって、そこには大きな責任が生まれる。
 ルーマニアが好きという情熱でルーマニアに関わっていくのだから、(ネット上のみでも)やはり好意的に受け取ってもらえるもので、ルーマニアの人との関りも、濃いものになっていると感じました。

 日本の社会で平然と生きることができなくて、引きこもりになって、ものすごい数の映画を観て、小説を読む中で、ルーマニアが好きになった。ルーマニア語での小説家になって、日本の闇、男女差別など、日本で生きづらさの元になっているものを書いて伝える。
 それが著者の生きがいになっていて、ルーマニアは偶然ではなくて必然だったんだな、と思いました。

 印象的だったことは、詩を書くために、ルーマニア人の詩人に教えてもらうことでした。
 相手は高校生で、現地で活躍している詩人で、著者が書いた詩に、毎回容赦ない厳しい添削をされる、という場面がありました。
 けれど著者は、年下の師匠に対して心から尊敬していて、辛口な添削を受けるほどに、畏敬の念を深めていました。著者のルーマニア人の人を語る言葉から、著者の謙虚さと、ルーマニアの小説家としての自分を磨いていきたいという向上心の強さを感じて、ただただ、純粋にルーマニアが好きなことが伝わりました。

 最後に書かれていた言葉が、印象的でした。「生まれちまったもんはしょうがねえ! どうせなんだから生きてやれ、お前のその人生を全力で!」
 これは、著者が自らに対して、そして自分と同じような気持ちを持つ人に対しての言葉でした。著者は、この本を自分の人生の意味を確認するために、自分のような人にとって希望になるために、書いていました。それは私たちの回復の仕方とも共通するものがあることを感じました。
 著者の心の持ち方が好きだな、と思ったし、この本に出会えて嬉しかったです。