「最高のプレゼント」 るりこ

9月17日

○最高のプレゼント

 お父さん、お母さん、今日は一生思い出に残る、誕生日になりました。
 午前中から午後にかけて、お父さんとみんなとヒカリ田んぼ上の紫黒米の手刈りをしました。三連休の半ばでお仕事組さんとりゅうさんもいてくださり、家族総出での手刈りが嬉しくて、当たり前のようだけれど、こんなにも大勢の仲間と手刈りができることが改めて、いまが幸せだなと思いました。

 手刈りはまず二手に分かれて行われました。
 昨日、機械刈りをしたヒカリ田んぼ下では、まえちゃんたちがはぜ立てをしてくれていて、他のメンバーで手刈りを進めました。
 手刈りも、刈る人と結ぶ人に分かれたのですが、刈る人が大体8人でそれ以外の人は全員、結び要員になりました。わたしは人数の調整で刈る部隊に入りました。

 新しい稲刈り鎌の刈り具合は最高でした。小さな弧を描くようなイメージで手前に引くと、軽い力でザグッと稲が刈れます。5株で1束にしていったのですが、左手で株を掴み、右手の鎌で刈るときに、一瞬だけ左手の力を抜くように刈ると、連続的にザグザグと刈ることができて、自分なりにコツを掴むことができました。
 途中でかにちゃんがビデオ撮影に来てくれて、わたしが鎌で刈っている様子を撮影してくれました。そのときに、「2秒で(5束)刈れているよ」と、撮影時間の記録を表示をみて教えてくれました。

 正直、刈る人に対して結ぶ人の割合が多いなと思ったのですが、それはわたしの認識間違いで、とても良い比率でした。刈った傍から、結ぶ人が手際よく2束を重ねて結んでいき、刈った稲が溜まることも、結びが追いつかなくなることもなく、最初から最後までものすごく良い配分でした。
 わたしの横にいた、すにたちゃんは初めての手刈りだったと思いますが、とても手際よくスピード感を持って進めていて、隣にいてくれて頼もしかったです。

 刈っている間はずっと株元をみていて、全体がどのくらい進んでいるのか把握できていませんでしたが、時折、お父さんやあゆちゃんが、「もう少しで半分だよ」と教えてくれました。そう言われて起き上がると、本当に後ろががらんとして景色が変わっていて、驚きました。

 開始から50分頃にあゆちゃんがお茶休憩をとってくれました。ちょうど、ヒカリ田んぼ下のはぜ立ても完了したようで、なる足が組まれ、4列に並んだはぜの光景がとても美しく、圧巻でした。
 はぜを見ると、盛男おじいちゃんが教えに来てくださっていたことを思い出しました。昨日の機械刈りのときにも、おじいちゃんが蝶になって助けにきてくださったように、今日もどこかで盛男おじいちゃんが手刈りを見守ってくださっているような気がしました。

 休憩に飲んだお茶が冷たくて、体力が回復するようでした。頑張って汗をかいたあとにみんなで飲むお茶以上に美味しいものはないように感じます。
 それからまた2ラウンド目が始まりました。

 後半からはヒエが稲と稲の間に混ざるようになり、思いがけずスピードダウンしてしまいました。初めは稲とヒエの区別がなかなかつかなくて、何度も手が止まってしまっていたのですが、よく見ているうちにヒエと稲の違いが見えてきました。稲は根元まで株が地面に植わっているけれど、ヒエは根が浮き上がってきていて、茎も細いことがわかりました。その区別の見分け方は正解だったようで、(あっ、根がみえる)と思うものは確実にヒエでした。それがわかってからは間違い探しをしているようで楽しくなってきて、稲にヒエが混ざらないように刈ることができると、結びの人にも気持ちよく渡すことができました。

 そして苦戦したヒエゾーンを抜けると、急に視界が明るくなってきて、残す2条になっていました。まだまだ道のりは長いと思っていたので、思いがけずに反対側の畦へゴールインしました。そんなわたしを待ち構えていたように、稲の隙間から顔を出すと、かにちゃんがカメラを構えていて、目が合って、笑い合いました。
 長い稲刈りの旅から生還したような気分でした。
 そして驚くべきことに、刈りが終わるのとほとんど同時に結びも完了しました。それが本当にすごかったです。全体が気持ちよく終わることができ、台所さんがお弁当を用意してくれていたので、そのままみんなで畦で昼食をいただきました。

 手刈りも十分に楽しかったのですが、もっともっと楽しかったのは、それ以降です。
 お腹も満たされてからは、結んだ稲束をはぜに干していくことになりました。事前にお父さんが流れとポジションを簡単に説明してくださり、あとは自分の頭を使って(認識力を働かせて)、適切な立ち位置につき、バケツリレーで稲束を運んでいきました。

 みんなで一列になって、ヒカリ田んぼ上から下まで、ひたすら稲束のバケツリレーです。気分はウンパルンパ族で、同じ動きを繰り返すのも楽しいし、みんなが同じように動いているのも、余計に嬉しくて楽しかったです。

 途中で間隔が広くなったときは、5メートル範囲のシャトルランをしているようでした。常に走り続けている状態で、本当なら、(もう疲れた!)となってしまうところですが、隣ではあけみちゃん、えつこちゃん、どれみちゃんも同じように必死な形相の中に、これこそが楽しくてたまらない! という表情が見え隠れてしていて、最終的には笑いがこみあげてきて、みんなと、「ひぇー!」と言いながらも走ってバケツリレーをするのが、何だかんだで1番楽しかったです。

 そのときに感じたことは、やっぱり大変なときほど仲間の存在に引っ張ってもらっているということと、自分の限界で頑張っている仲間がいるから、自分も同じように限界まで頑張ってみようという気持ちになれるということです。あけみちゃんやえつこちゃんが汗を大量にかきながらも、流れを乱さないように、勢いを止めないように、仲間のことや全体のことを思って、走り続けていました。そこには自分だけ楽をしようとか、手を抜こうという汚い気持ちはまったくなくて、むしろ大変さを楽しんでいました。
 2人の全力の姿をみていたら、わたしも一緒の気持ちで頑張りたいと自然と思えたし、そう感じているときほど、いつも以上の力とか体力とかが出てくるような気がします。

 大人数作業の好きなところはこういうところだと思いました。
 同じ志をもって生きていく仲間という存在を強く感じるし、いつも以上にみんなの良いところ、好きなところがたくさん見つけられて、一人ひとりを近くに感じられるところが、わたしが大人数作業が好きな、大きな理由です。

 最後の最後までみんなでバケツリレーを繋ぎました。長かったようで短くて、でも終わったときは大きな大きな達成感がありました。
 そしてみんなと倒れ込むように、刈り取った田んぼにゴロンと横になりました。太陽が眩しくて目を開けられないくらいだけれど、その明るさがご褒美みたいで嬉しくて、さらに横にはさくらちゃんやえみちゃんがいて、「楽しかったー!」と言い合えました。
 そのときにさくらちゃんが、「最高のプレゼントだね」と言ってくれて、本当に本当にその通りだなと思居ました。大好きなみんなに囲まれて稲刈りができたことも、こうして一緒に達成感を味わって笑い合えることも、どんなプレゼントにも勝るものはないと思い、一生忘れない誕生日になりました。

 最後にかにちゃんが集合写真を撮ろうと言ってくれました。
 そうしたらお父さんが、「今年はこのまま寝転んだポーズにしようや」と言いました。そして思いがけず、今までにない写真ができあがりました。みんなが畦に横になって寝転んだポーズで、その前にはきれいに刈り取られたヒカリ田んぼの光景と、バックにはずらっと並んだはぜの景色が一面に続いています。写真から見たらどんなふうに映っているのかものすごく気になるけれど、既存に囚われずに、ときには羽目を外すお父さんがやっぱり囚われていなくて、発想が自由で面白いなと思いました。

 稲刈りは14時頃に解散になり、あゆちゃんが、「冷たいシャワーを浴びて、16時まで休憩していいよ」と言ってくれて、みんなと校舎へ戻り、小休憩をとりました。
 そしてまた16時に集まって、1時間だけど種をまいたばかりの野菜の水やりに行きました。その水やりも大人数でやると本当に一瞬で、3枚の畑が30分で終わりました。
 今日は何回、人数の力を感じたことでしょうか。

 ホクホクした気持ちで古吉野へ帰ると、ちょうどあゆちゃんがライスセンターからお米を持ち帰ってきてくれたところで、ナイスタイミングで、今度はみんなとお米運びをしました。今日は2パレットに4段くらい積まれてあって、大量でした。すべてが鉄筋校舎のお米置き場に入りきらなくて、入らなかった分は選果ハウスへ持っていくことになりました。ですが思いがけず、あゆちゃんが、「これが今年の分で全部です」と教えてくれて、(えー、もう最後なのか!)と思いました。楽しいお米運びも今日が最後だったのかと思うと、手刈りも終わって、稲刈りシーズンも本当に終わってしまうのだなと、少し寂しい気もしました。(でも、まだ紫黒米の脱穀や籾摺りが待っているのが楽しみです)

 今日は1日、お父さんやみんなと作業ができて、みんなのなかにいると、本当に嬉しい気持ちをたくさん共有できて、心が温かくなる瞬間が何度もありました。
 そのなかで何人もの子が、「お誕生日おめでとう」と祝ってくれました。

 きっと自分一人だったら、誕生日の日がこんなにも良い日にならなかったです。孤独で一人籠もっているか、自分よがりの欲にまみれていたと思います。
 でもなのはなで誕生日を迎えさせてもらって、たくさんの人に、「おめでとう」とお祝いの言葉をかけてもらって、そして作業をするなかでも、たくさんみんなに優しい気持ちを向けてもらいました。みんながいるから、全力で動く楽しさを感じたり、限界まで力を出すことに生きている喜びを感じられます。

 以前、自分が苦しかった時期にお父さんが、「幸せは人と人の間にしか生まれないよ」と教えてくださいました。その言葉が今日、身に染みて感じました。
 逃げたくなったり、投げやりな気持ちになってしまうことも、時々あります。そういうときは幸せとはほど遠くて、人と関わることも嫌になってしまいます。
 でも自分が活き活きとしていられたり、良く生きたいと思えているときは、必ず周りにみんながいてくれて、一人じゃないです。やっぱり自分は誰かと繋がっていることでしか、本当の幸せを感じることはできなくて、生きる喜びや楽しさは感じられないのだと思いました。

 この1年は、なのはなやみんなの力になれる1年にしたいです。逃げや守る気持ちを捨てて、強さをもって、積極的な気持ちで前のめりに生活していきます。
 そのなかでお父さんがお祝いの言葉でアドバイスしてくださったように、自分の良さを活かせるリーダーシップをとれるようになっていきたいです。
 そのためにはまず、声質を変えること。明日からお腹から声を出して、まずは外から変えていきます。そして同時に中身ももっと密度の濃い人になって、意志をもって行動して、なのはなやみんなに貢献できるように成長していきたいです。
 お父さん、お母さん、みんな、どうぞこれからもよろしくお願いします。
 いま、なのはなにいられることがとても幸せだと感じます。