「心まで豊作」 ななほ

9月17日

 今日はるりこちゃんのお誕生日でした。
 るりこちゃんとはどんな作業でも、どんなイベントでも一緒にいるだけで楽しくて、安心します。

 毎年、晩白柚とバナナのビニールハウス作りはるりこちゃんと一緒にしているのですが、いつもるりこちゃんが自分のことのように一緒に考えてくれて、時に苦戦しても楽しく一緒に乗り越えていけて、そんなるりこちゃんの優しさや前向きさに本当に助けられています。

 るりこちゃんはとても穏やかで温かいけれど、リーダーになればみんなを楽しい空気で引っ張っていってくれて、それでいて誰のことも1人にさせないし、いつも周りのみんなを気にかけてくれていて本当に優しいなと感じます。

 いつもその場その場で自分の役割に真っすぐに向かい、責任を果たしていく姿や、るりこちゃんのおちゃめでユーモアのある所が綺麗だなと思います。

 るりこちゃんの日記や山小屋だよりの文章を読ませていただいていても、いつも力をもらっているし、るりこちゃんの書く文章に隠されたユーモアとか、なのはな内のイベントで見せてくれる芸術的な思考とか、伝説の俳句とか、色々な魅力を持ったるりこちゃんが素敵だなと思っています。

 優しくて、いつも肯定的に受け止めてくれて、みんなのいいところを見て真っすぐに向かっていくるりこちゃんのことを尊敬していて大好きです。

・手刈り

 からりと晴れた朝。空に飛んでるギンヤンマ。風がそよげば、お米の熟れた香ばしい香りが広がって、ホッと温かい気持ちで息をつきます。

 家族総出での稲刈り。2023年の稲刈りシーズンラストは、光田んぼ上の田んぼで紫黒米の手刈りです。

 昨日の夜から、「明日は午前中にやるんだよね」「何の服が動きやすいかな?」「暑くなりすぎないでほしいけれど、晴れてほしいね」と廊下ですれ違う子、お風呂で会う子、通りすがりの子と口々に話しては、この日を楽しみにしていました。

 朝からお父さんも来てくださり、手刈りができて嬉しかったです。
 
 田んぼに着いたらあゆちゃんが、「私、結び慣れているよ! 私に任せてっていう人は、左側へ。ちょっと難しいかもっという人は右側へ並んでね」と声をかけてくれていて、(私、結びでも大丈夫かな?)とは思いながら、「よし! 頑張るぞ!」と気合を入れて左側の列へ並びました。

 なのはなに来て初めて稲刈りをした時にお母さんやあゆちゃんに教えてもらった稲の結び方を思い出しながら、藁の束を持ち、持ち場につきます。

 大体、稲を刈る人が10人くらいいたとしたら、結びの人はその倍以上という割合で稲刈りが始まりました。

 前半はももかちゃんが刈ってくれている所の後ろへ着いて稲の束を結んでいきました。
 ザッザッザッと、ももかちゃんや刈り部隊のみんながよく切れる稲刈り専用のカマで稲の束を刈ってくれていて、その稲が溜まらないようにしながら、スピード感をもって、でもしっかりと丈夫に結んでいくのはとても楽しかったです。

 稲の束を藁で結ぶときは、キュッと結ってそれを稲の穂先側から根元側へと結び目を通していくのですが、その結び目を通すときは、親指に力が入ります。

 何度も何度も、何度も何度もひたすらに藁で結んでいくと、親指の先が圧力で痛くなってきたのですが、側にいたまなかちゃんと、「昔の人は、何枚もの田んぼを手刈りしていたんだよね」と言いながら、この痛みすらも味わって結んでいきました。

 束にして結んだ稲を自分の後ろへ回すと、そのお米の重みやバサッという音に豊かな気持ちになります。

 お父さんが、
「結ぶ人が通りやすいように、刈る人は稲の穂先を外側に同じ向きで置いていってね」
 と刈り部隊の子たちへ声をかけてくださっていたので、結んでいてもただ前に進むだけで、まるで、「私を結んでください」と話しかけてくれるように稲がセットされていて、それを結んでいきました。

 また、結ぶ私たちも今度はあとで運ぶときに稲の穂先を踏まないように、稲の束の向きを揃え、根本側を少し広くとって通り道を作っていきました。

 黙々と集中して作業をしていると、気が付けばお父さんやあゆちゃんが「今、半分くらいまで来ているよ」と声をかけてくれて、ふと後ろを振り向けば、そこには稲の道ができていました。

 また、田んぼの半分が終わった時、
「今、作業開始から45分が経ちました。あと10分したら休憩にします。みんな、休憩の時に下の田んぼにはぜが立っているから楽しみにしててね」
 とあゆちゃんが声をかけてくれました。

 昨日、あゆちゃんが盛男おじいちゃんからいただいたコンバインに乗って光田んぼ下の機械刈りをしてくれていたので、手刈りと同時進行で、まえちゃんを中心とした8人くらいのみんながなる足を立てて、はぜ立てを作ってくれていました。

 「休憩しま~す!」という掛け声の後、上の畔で少し一休みをしに行くと、来た時には何もなかった下の田んぼに4列の立派なはぜが立っていて、その光景がとても綺麗でした。

 なる足が3本でしっかり立っているのを見ると、どこか、江戸時代の日本の屋敷みたいでなんだか、かくれんぼをしたくなるような気もしたし、弓矢をしてみたいような気もしてワクワクします。

 私は以前、盛男おじいちゃんたちと何度かはぜ立てをさせてもらったことがあるのですが、今、盛男おじいちゃんが蝶々となって監督をしてくださる中で、まえちゃんたちがおじいちゃんが教えてくださったとおりにはぜを立てていく姿が綺麗だなと思ったし、はぜをみるとおじいちゃんの大きな笑顔が浮かびました。

 私がおじいちゃんとはぜ立てをした時も、おじいちゃんは90歳を超えていたのですが、それでもおじいちゃんがかけやを持って竹を打っていたり、PPロープでなる足をぎゅっと縛っていたりして、その時のおじいちゃんの力強さや、大きくてしっかりとした手を思い出すだけで、温かい気持ちになったし、力が湧いてきました。

 休憩の後は、お昼ご飯の時間を目標に続きの稲刈りをしていきました。
 稲刈りにはのぞみちゃんとゆりちゃん、おとちゃんもいてくれて、ゆりちゃんが「お姉ちゃん、わらいりますか?」と言って、結び部隊のみんなに藁を配ってくれていたり、「草運びま~す」といって、稲の隙間に生えていたヒエなどの雑草を一か所に運んでくれていました。

 おとちゃんも、お父さんの横でスヤスヤと眠っていて、こんな風に0歳や3歳の子ども達も一緒にこうして稲刈りを手刈りでできるのは幸せなことだなと思いました。

 後半はあっという間に時間も過ぎていったのですが、その分、気が付いたら稲刈りも終わっていました。

 結びをしていると前を見ても、稲の海なのでゴールがどのくらい先か分からなかったのですが、いつの間にか残り3条というところになっていて、私たちの後ろには稲の道がずっと続いていました。

 あゆちゃんの「よ~し、ゴール!」という声が聞こえたと思えば、あゆちゃんが畦に座ってニコニコとこちらを見ていて、その笑顔に元気が出たし、本当にうれしいなと思いました。

「稲刈りは利他心じゃないとできないね。昔の人は、利他心でお互いさまの気持ちでみんなで協力して稲刈りをしていたんだよ。村八分にされてしまったら、稲刈りができないもんね」
 とあゆちゃんが話していたけれど、本当にその通りだなと思います。

 この広い田んぼを1人で稲刈りをしろと言われたら、とてもじゃないけれど、こうして家族みんなでやったら半日もかからずに1枚の田んぼが稲刈りできてしまいます。

 そして、とてもとても楽しいです。
 誰かと競争するわけでも、技術を競い合うわけでもなく、ただ自分の役割を淡々とこなしていき、少し疲れてきたり、稲刈りに慣れていなくて遅れを取っている場所があれば、誰が何と言わなくてもそこへ行きお互いにカバーしあい、みんなと稲刈りをする空気、お互いに助け合って、補い合いながら協力して稲刈りをする空気にいるだけで、嬉しくなりました。

 そして、最初にあゆちゃんが決めてくれた、刈る人と結ぶ人の割合がものすごくちょうどよくて、刈り部隊の人が全部借り終わったとほぼ同時に、結びの人も全部の稲の束を結び終えることができ、その綺麗な作業に達成感を感じました。

 稲も刈れて、結び終わったら、ご褒美のようなお昼ご飯です。
 前日に台所さんたちがお弁当を用意してくれていて、今日の稲刈りは台所メンバーのまりこちゃんやゆきちゃんたちも一緒にできたことが嬉しかったし、昼食はとても豪華でした。

 ふたを開ければ、みんなの大好きな大きな大きな唐揚げが詰まっていたり、ハート型の卵焼きにシャインマスカットやオーロラブラック、お赤飯のおにぎりなど具沢山のお弁当に力が出たし、田んぼの畔に並んで座り、みんなで育てた野菜やお米で作ったお弁当をいただく時間は、本当に豊かな気持ちになりました。

 それから後半は、稲運びです。
 お父さんが言ってくださって、今回は場所や役割分担なども決めずに、みんなが自動運転でそれぞれの動きを考え、自分のポジションや役割を考えて動きました。

 最初は動きや流れが確立するのに苦戦したところもあったのですが、流れができてからはものすごい速さで稲のバケツリレーが進んでいき、先頭にいるあゆちゃんやまえちゃんのもとへ、稲の束が運ばれていきました。

 私は主に斜面についていたのですが、斜面もみんなと言葉は交わさなくても、それぞれで頭を使い、ポジションを取ったり、列を移動させながら、一番先頭の人まで最短距離の列を作り、稲を運んでいきました。

 流れに乗ってくると、「はい」「はい」という掛け声がウンパルンパの歌のようにテンポよく聞こえてきたり、私も時に反復横跳びをしたり、ターンをしたりしながらポンポンと稲の束を受け取りは、隣の人へ渡し、ものすごく楽しかったです。

 みんなでやると本当にあっという間にたくさんの稲の束も運べてしまうし、はぜに稲の束がいっぱいに干された光景は1つの芸術作品でした。

 最後、お父さんたちと家族全員で畦に寝っ転がって、写真を撮れた時間も嬉しかったです。

 空を見上げれば、雲の隙間から太陽の光が一筋、昼間の流れ星のように光っていて、豊作をお祝いしているようでした。

 お父さんが「今年の紫黒米は大豊作だね」といっていて、本当にはぜに4列ぎゅうぎゅうに干されたお米を見ていると、私たちの心まで大豊作になっていきます。

 稲刈りの達成感、充実感を味わえること。こうして家族みんなで、手刈りをして日本の文化を繋げていけること、豊かな気持ち、自然の美しさ、力を出して、汗をかいて、助け合う気持ちよさや生きる喜びを感じられた1日が嬉しかったです。

 稲刈りも終わり、明日はウィンターコンサートへ向けて音楽合宿第1弾が始まります。
 こうして家族みんなで稲刈りの達成感を味わい、気持ちのいいコンサートへの1歩をみんなと踏み出せることが嬉しいなと思います。

・最後に

 夕食でりゅうさんたちとチャーハンを作ることができて嬉しかったです。
 まりこちゃんが「ななほちゃんにも覚えてほしいから」と言って全部の工程に入らせてもらい、ものすごく楽しかったです。

 今回のチャーハンには卵やきくらげに加えて、ウィンナーにりゅうさん特製のこんがり焼いたエビも入って、ものすごく具沢山でした。

 でも1つ問題が……。
 それは、ひと鍋で10人前ずつ作っていったということです。

 以前にも何度かりゅうさんのチャーハンを作るところを手伝わせていただいたことがあったのですが、その時よりも鍋がものすごく重たくて、汗だくになりながら全力でチャーハンを作っていったのですが、それはいつもの倍の量だったからということが判明しました。

 でも、ジュ―っとおいしそうな音と香りをさせながらチャーハンを作っていき、60人分のチャーハンを作るのはものすごく大変だけれど、その忙しくても活気のある空気が本当に楽しくて、りゅうさんやまりこちゃんたちと何度もお互いに顔を見合わせては笑いながら楽しくチャーハンができてとても嬉しかったです。

 それに、ものすごく、ものすごく美味しいチャーハンでした!