暑い夏、爽やかな甘さで、何度食べても飽きが来ない魅惑の瓜、マクワウリ。
マクワウリは、今年は中畑と石の下畑にびっしりと畝を覆って勢いよく伸びています。
つる葉が生い茂っているから上からはその姿は見えないけれど、手で少し葉をかき分けて見るとちゃんといます。
マクワウリの実が一か所に三~五個ごろっとついていて、黄緑色をベースに、表面がほんのりと白みがかっていて、その白い色はマクワウリの甘さを彷彿とさせます。この白みがかる色を見ると、頭の中にマクワウリの夢がふわっと広がり、
(ああ夏だ、あの爽やかな甘さを堪能できる毎日が来るんだ)
と少し夢心地になるのです。
色がうすくなっていっているのが熟れていっている証。もう、二~三日したら収穫できるかもしれない、と思いました。
担当のえつこちゃんとまりのちゃんを中心に、毎日の見回りと根気強い手入れで、大収穫に結び付きそうです。
今年のポイントはなんといっても、一週間に一回の葉面散布。
一週目は、濃いリン酸をストレートに野菜に散布することができるメガツインP56と、納豆水の散布。
二週目は、酢酸カルシウムとこれまた納豆水の散布。
毎週欠かさずこの三種類の散布を続けています。
週に一回行っている納豆水散布は、ななほちゃんとみつきちゃんが大豆の選別で出たくず豆から手作りの納豆を作ってくれて、その納豆をミキサーにかけて水に溶かし、発酵を促して手作りした納豆水を使わせてもらっています。
倍率は五十倍! と結構な濃さで散布。野菜の葉の表裏、茎にエンジン噴霧器で散布していくと、葉がツヤツヤしていって、目には見えないけれど、きっと撒かれたそばから納豆菌だらけになっているのだと思うと、嬉しい気持ちになります。
こうやって、野菜の表裏を納豆菌だらけにすることで、病原菌の繁殖を防いで、野菜を健康的な状態に保たせます。
この五十倍倍率で行う手作り納豆水はかなり効果が高い手ごたえを確かに感じています。六月は本当に雨続きの月でしたが、週に一回の頻度で散布していくと、病気がまったくないわけではないけれど、病気がありつつも大勢に影響はなく、元気につるが伸びているという状態をキープできているのです。
カルシウムは甘みを強くします。なのはなでは、マクワウリのような甘みを出したい果采類を育てるとき、カルシウムの追肥は必要不可欠と考えています。カルシウムが即効性をもって、よりストレートに野菜に効くように、酢でカルシウム分を溶かして作った酢酸カルシウムを五百倍の倍率で散布しています。
食卓で沢山のマクワウリを長くみんなで食べられるように、実つきをよくするために行うメガツインP56、カルシウム分をストレートに効かせて甘みを強くさせる酢酸カルシウム、べと病やうどんこ病の広がりを防ぎ、健康な状態をキープさせる納豆水、これら三つの葉面散布を定期的に行うことで、健康的かつ甘くて美味しいマクワウリをこの夏の終わりまで長く食べられるようにしたいと願っています。
■使いやすく綺麗な畑に
また、畝間のつるを徹底的に畝の上に誘引することで作業性を上げます。
マクワウリは健康的で勢いがつけばつくほど、畝の上のみならず、畝間までつるがびっしりと這ってきます。元気なのは嬉しいけれど、収穫や水やり、追肥、草取りなど、手入れをするときに、畝間のつるを踏まないようにと抜き足差し足忍び足みたいになってしまって、手入れをするよりも足場を見つけるのが一苦労で、手入れがはかどらなくなってしまいます。
そのため、畝間まで這ってきたつるは、畝の上に手で上げていって、篠竹を畝の端に差していき、畝間につるが出てこれないようにさせて、畝間はなにもない状態にする、という手入れを行いました。
まだ収穫は始まっていないけれど、この少しの手間で作業性がまったく違うのだと思います。
マクワウリの収穫は、ピーク時になると、他の野菜の収穫に分かれるまえに、全員でマクワウリ畑に行って、広い畑に全員で入って、収穫をしていくときもあります。朝いちばんに、全員で広いマクワウリ畑の収穫を終わらせるのが、爽快で好きだなあと思います。
夏の終わりまで長く食べるには、病気に負けない健康な状態をキープさせながら、勢いが衰える前に追肥をしてあげること、カンカン照りになるときには特に水を切らさず、各畑にたっぷりと水を与えるということが必要だと思うので、みんなの記憶に残る長く採れるマクワウリにしたいなあと思います。
■スイカから広がる夢
夏野菜の中でもみんなの心を華やかにさせる夢の野菜、スイカ。
なのはなで育てるスイカはシュガームーンという品種で、中が爽やかで発色の良い黄色のスイカです。
スイカは土質を選び、砂地でよく育ち、粘土質の畑が多いなのはなの畑とは相性があまりよくないのですが、なぜかこの黄色いスイカのシュガームーンだけはよく育つのが不思議です。偶然の出会いだけれど、黄色というスペシャルな感じと、味も甘みが強くて美味しいスイカと相性がよいというのがなんだか嬉しいなと思います。
今年もみんなで思いっきりスイカ割りがしたい。スイカまるごと使ったフルーポンチも作りたい。そのまま切ってかじりつきたい。スイカという言葉から、たくさんの遊びや小さな夢が連想されます。
そのみんなの小さな夢を実現すべく、絶対に成功させようと担当のしなこちゃん、ももかちゃんが見回りを毎日行ってくれて、チームのみんなで育てています。
野畑の横を通るたびに、緑色に深緑の縦縞模様が入ったスイカが毎日、二センチ、三センチ、4センチと少しずつ少しずつ大きくなっていきます。
野畑に植わるスイカは、全部で約九十株。
六月はずっと雨続きで、畑全体の一割ほどに、葉の表面に五ミリほどの茶色い斑点がぽつぽつと出てきました。スイカにはお馴染みのつる割れ病が来ました。
しなこちゃんが報告してくれて、一割未満の時点ですぐに気づけたのが有難かったなと思います。
講じた対策としては主に二つ。徹底して納豆水防除と、消石灰をまく、というものです。
納豆水防除はマクワウリの手入れでも行ったように、五十倍の倍率で行い、雨が連日降るため、強い雨が降って流れてしまったと思ったら、また次の日も散布をしました。
消石灰も同様です。消石灰は、殺菌効果があり、株全体から畝間まで、畑内全体にまくと、株に広がった病原菌を殺菌してくれる効果があります。
また、消石灰はその名の通りカルシウム分が含まれているので、病気対策と同時にカルシウムの追肥にもなり、甘さを強くさせてくれるので、一回で二つの効果を狙えてすごくいいなあと思います。この二つの対策で、病気に負けず長雨の期間を乗り越えることができ、晴れ間が来ている今も元気につる葉を茂らし、そして一株につき三~四個の実をつかせています。
雨が続いて晴れる期間がなく、かつ気温が高いと、気候が合わないためか、雄花から雌花へと花粉を受粉してくれるミツバチたちの姿が畑に見られませんでした。そのため、はじめはスイカになる実も少ないという印象を受けていましたが、長雨が終わり、予定した通り、一株に三~四株の実がついてくれて、畑の横をなんとなく通るだけでも、たくさんの布に巻かれたスイカが自然にすっと目に入るくらいになりました。
カラス対策として、しなこちゃんやももかちゃんが毎日のように畑に見回りに行っては、自分の拳以上のサイズのスイカにはさらし布を巻いてくれています。
一日か二日か見回りに行けない日が続いた次の日に、布に巻かれていなかった一つのスイカの実に、鳥につつかれたあとがありました。驚きましたが、やはり布をかけていないとすぐに狙いに来てしまうのだなと思いました。お父さんにも相談させていただいて、次の日にすぐに防虫ネットを上からかけて、それからは鳥の被害はなくなっています。
スイカの収穫は八月下旬を予定しています。収穫を終えるまで、鳥から守り切って、みんなと思いっきりスイカを満喫できる夏にしたいなと思います。
■野菜が気づかせてくれること
水面からすっくと伸びて、ハサミで切ると茎の中が空洞なのが驚き。
切っても切ってもにょきにょきと脇芽を茂らせるパワフルでスタミナあふれる野菜、空心菜。
東西に向かって株間三十センチ間隔でまっすぐに、十三列に整然と並ぶ空心菜たち。暑い日差しの中でも、水面の上に整然と並んでいる空芯たちはどこか涼しげです。
空心菜の収穫が始まっています。
空心菜の印象は、とにかく強い。水と二週間に一回の追肥さえあれば育つイメージがあります。
そんな空心菜に異変がおきました。長雨が終わり、晴れ間が続き始めたときに、空心菜の葉に茶色く枯れた斑点がぽつぽつと出始め、畑の中のほとんどの株にその症状が出始めたのです。担当のまりのちゃんとえつこちゃんが知らべてくれて、病気から来た症状だと分かったのですが、お父さんに相談させていただいたときに、原因は暑さだということが分かりました。水の量が少なかったために、土の温度が上がってしまったのです。次の日から、水の量を倍くらいに増やすと、地面が冷やされ、病気の斑点も出なくなり、空心菜が再び元気に伸びはじめました。
いくら強いからといって、この異常気象の中で、大切なことを見落としてしまうと、野菜に異変がすぐにおこってしまうのだなと思いました。
でも、こういうときに野菜は本当に嘘がなく素直だなと感じます。私たちの認識を間違ったり、野菜の変化を見落としたり、間違った手入れを行うと、それは違うよ、とそんなことしてほしくないよ、気づいていないよ、と野菜自身の見た目で私たちに気づかせてくれます。
野菜は嘘がなく、いつも当たり前に生命力を持って、異常気象であろうとどんな気候であろうと淡々と生き続ける野菜たちが凄いなと思います。
正確に認識することを心掛けながら、野菜と向き合い、チームメンバーでお互いに助け合って、野菜を豊作にさせると同時に、自分たちにとっても実りの多い夏にしたいなと思いました。