【8月号④】「メリケンキアシシギとして 踊る喜び、耕す気持ち」 ゆず

 

 新曲『ウリリ』。鳥の鳴き声で始まるこの曲は、鳥の名前を曲名にしたタヒチアンダンス曲です。『ウリリ』とは、『メリケンキアシシギ』というアラスカからハワイなどへ長い距離を渡る、渡り鳥のハワイ語名で、この曲は、その鳥『ウリリ』の持つ本能的な楽しさや、長く厳しい渡りの道のりを飄々と飛んでいくような軽やかさが表現されているように感じます。

 『ウリリ』の初めての練習の時に、ゆりかちゃんが、この曲のダンスの動画を見せてくれました。魅力的な腰の動きが連続的に続くそのダンスに、目が奪われました。囚われない、伸びやかな気持ち。踊ることそのもの、生きることそのものを楽しむ気持ち。それが伝わってくるようで、この曲ならではの新しい魅力を感じました。黒やグレーを基調とした衣裳も、手作りで再現したいとゆりかちゃんが言ってくれて、今までのフラダンス曲とはちがった魅力を持つ曲が生まれていく予感がして、わくわくしました。

 

■鳥として踊る

 この曲は一曲を通して、ファーラップという腰を回す動きが多く使われています。様々な形で姿を見せる、その腰の動きがこの曲の面白さの一つだと感じます。練習の中でゆりかちゃんが、腰を動かしやすくするために、色々な基礎練習を教えてくれました。
 可動域を広げるために、ゆっくりと大きく動かす練習。円をきれいに描く動きをするためには、腰を後ろへしっかりと動かして前後の動きを意識すること。腰を回しながら一歩ずつ歩いたり、つま先立ちで歩く練習。ひざを柔らかく使うこと。ゆりかちゃんの選んでくれる曲に合わせて基礎練習をする時間が楽しくて、腰を動かす感覚が少しずつ変わっていくことを感じられたり、体幹の大切さを改めて実感したり、とても嬉しい時間でした。
 ゆりかちゃんとのんちゃんが動画を見てダンスを解読してくれました。それをもとに、ダンスメンバーの五人で、練習をしていきました。

 鳥らしさを感じる独特な動きや、ペアでの振り。この曲を踊るテーマを考えたとき、ゆりかちゃんが「奇想天外、はどうだろう」と言ってくれました。
 次にどんな動きがくるのか、予想のつかない動きの移り変わり。鳥たちの喜び。曲の場面ごとに表情に変化をつけて、この曲の面白さがぐっと幅広くなったように感じました。

 

 

 この曲の初披露の場、諾神社の演奏に向けて、お父さんにダンスを見てもらいました。
 お父さんが、
「この曲は、人として踊るんじゃなくて、鳥になりきること」
 と教えてくれました。強く鳥らしさを感じる動きを印象的に見せることで、曲の前半が勝負だ、と教えてくれました。
 鳥になりきって踊る。そう思うと、とても踊りやすくなったように感じました。踊ることそのものを楽しんで、(この曲のここが面白いところだ)と踊る自分たちが見せどころを解って、なりきる。自分ではない何者かになって表現する瞬間が、自分の気持ちの幅を広げてくれたり、日常的なところから一歩離れた喜びを感じさせてくれるのを実感します。こうやって、一曲に向かうなかで、気持ちを耕して、感じられる喜びや楽しさの幅を広げていけたらいいなと思います。

 ダンス練習とあわせて、ゆりかちゃんを中心に、なつみちゃんやりのちゃん、まよちゃんたちが、衣裳づくりを進めてくれていました。
 一つひとつのパーツから手作りの衣裳。素材選びからみんなのアイディアが詰まっていて、華やかで、ボリューム感があって、この曲のらしさが表現されている衣裳が、とても素敵だなと思いました。フラダンス曲だけれどパンツスタイルの着こなしを、お母さんとゆりかちゃんが考えてくれて、なのはならしい、潔さのある衣裳が、とても好きになりました。

 

■曲を通して気持ちを作る

 この曲を含めて、夏のイベントへ向けた練習の中で、フラダンスのような柔らかい動きであっても、その中で「とめ」をつくることを、お父さんが教えてくれました。(今、ここを見て)という強い気持ちを飛ばしたとき、それが「とめ」になる。気持ちが定まっていなかったり、強く気持ちを飛ばせていないと、「とめ」のない、流れたダンスになってしまう。
 伝えたい気持ちの強さ、気持ちの確かさが、「とめ」になるのだと思いました。ただ何となくきれい、じゃなくて、見てくださる人に伝わる強さのある表現を、みんなとつくっていきたいと思いました。

 その曲の気持ちになりきり、その曲を伝える一部となって表現することで、自分がつくられていくことを感じます。そうやって気持ちの豊かさや鋭さを育てて、自分たちの生き方を何度も心に入れていく。見てくださる人たちがいる中でみんなと演奏をすることが、自分たちにとってとても大切な場なのだと、演奏の度に実感します。
 みんなとステージをつくる過程で、気持ちの強さや鋭さを育て、より研ぎ澄まされた演奏をつくっていきたいです。そして、研ぎ澄まされた演奏をつくる喜びを、みんなと感じていきたいです。この曲の持つ魅力を自分の中に入れて、新曲『ウリリ』を、深くなのはなの曲に育てていきたいです。