桃の摘果が終わり、早速袋がけが始まりました。
桃は硬核期に入っています。
袋がけは収穫が早い早生品種から順に進めています。
一番収穫が早いのは、『はなよめ』で、六月下旬に収穫が始まります。『はなよめ』という名前は、六月のジューンブライドにちなんで名付けられた品種で、桃のはなよめというのが、とても素敵だなと思いました。
桃の実が、日に日に大きくなり、葉も茂ってきています。
最終摘果で最終着果数にしてはいるものの、その木の大きさや樹勢、強さを見て、つける袋の枚数をはじめに決めて、その枚数をメンバーで分け合ってかけていき、最終的にその木に何枚袋をかけたかを分かるようにしています。
また、品種によって、かける袋の種類も選んでかけていっています。遮光性の優れた二重袋。大玉用の大きめの袋。晩生品種向きの袋は、袋が厚手でしっかりしているものだったり、袋によって、針金が分かれているものと分かれていないものとがあり、果樹の袋にも色々種類があり、実の仕上がりを見越して袋を選んでいっているのだなと思いました。
■次に会うのは収穫
袋をかけるときは、葉が入らないようにするのが重要なのですが、葉が入ってしまうと病気になってしまう恐れがあるため入らないようにし、口をしっかり閉めます。
袋の口が開いてしまっていると、水や虫、光が入ってしまうほか、外れやすくなるため、口はぴっちりと合わせて閉めること。桃の実に袋を被せ、袋の口を合わせてたぐり上げて、クロスさせて針金を大きく一回折る。
袋の向きが、枝の垂直になるようにするのも袋が飛ばされないようにするために大切なポイントだとあんなちゃんに教えてもらいました。
はじめは、数個やってみて、あんなちゃんに見てもらいました。あんなちゃんチェックでOKをもらい、今度はスピードを意識して行いました。
プロの農家さんは、一日で一人で二千枚かけるとあんなちゃんから聞き、私もプロの桃農家の意識・気持ちでやろうと思いました。
袋をかけた桃が、収穫されると思うと緊張しました。
桃の実に袋をかけるのは、桃にベールをかけるような気持ちがしました。もう、この実は収穫まで見ることができないのだな、会えないのだな。次に会うのは収穫したときなのだと思うと、桃に誓うような気持ちになりました。
美しい実になるように、精一杯気持ちを込めて、力を尽くします、と。
日当たりのよい高い枝の実、大きくて、色・形が綺麗な実から優先してかけていくことをあんなちゃんに教えてもらいました。袋をかけた実が収穫されることになるので、綺麗な実を収穫出来るように、一つひとつの実をかける前にチェックし、袋をかけていきました。
摘果のときにも見ている筈だけれど、害虫被害や変形の実が残ってしまっているのがあったり、実際にかけて見ると、実の近さや、袋をかけすぎや少ないということが分かりやすく見えると思いました。手入れの次の工程をすると、より前の工程の重要さを感じました。
桃の作業をさせて頂いて、改めて桃はとても繊細だということを感じます。でも、手をかけた分、応えてくれるのもまた可愛いなと思います。
『桃』とひとくくりにはできない。品種によって特徴も違えば、同じ品種でも木によって異なります。一本一本が違います。その木の性質や、今の状態を踏まえて、判断し、対応し、未来を見て袋をかけていっています。
■能動的になって
開墾十七アール畑の加納岩白桃は、今年は樹勢がやや弱めなこと、遮光性の高い袋を使っていることもあり、小玉になりやすい傾向にあるため、実の数をやや少なめに絞りたいとあんなちゃんが伝えてくれました。
石生の桃畑の加納岩白桃は、十七アール畑よりも勢いがあるため、通常の密度でかけていきました。
中生品種は変形果が出やすいのですが、変形が多く、それしかないという場所は、全くかけないのではなくて、かける実をつくり、その木に最低限必要な実の数の分、袋をかけていきました。かけ過ぎも、かけなさ過ぎも、その木にとって良くないことです。
その木、その枝、その実、状況に応じて見極めて、全体のバランスも見ながらかけていくのが、農業のアートのようにも感じます。難しいけれど、そこに、インタレスティングな楽しさを感じます。
あんなちゃんに教えてもらって、その木を知り、知識を増やしていけること、それは自分の幅が広がっていくようで、とてもありがたくて嬉しいです。
しかし、受動的ではなく、能動的になって、自分が誰かに教えられる位に、もっと知識を増やし、心を遣って分かるようになっていきたいです。
■初夏の風物詩
はなよめや日川白鳳にかけていた袋は、指の水分をとられ、だんだん袋が開きにくくなってしまって、そこで時間ロスをしてしまうため、あんなちゃんが、指サックをしたらどうか、と用意してくれてつけてやってみると、指サックがキツくて、指が痛くなってしまうという問題が発生。私は途中で外してしまいました。
そしたら、作業の終わりにみんなもそうだったことが分かり、それもおかしかったのですが、午後は、端切れ布を湿らせ、それを腰袋につけて、それで指を湿らせるというのを試してみました。すると、凄くやりやすいのですが、布が乾いてきてしまい、途中でまた布を濡らさなければならないという手間が増えてしまいました。しかし、その時間も惜しいので、みんな自然にそのまま続行していました。
こうして、色々と試したことも面白かったです。
葉が茂る桃の木に、オレンジや黄色の袋がかかると、オーナメントがついたように、桃の木がいちだんと華やかに見えます。その光景は、桃の産地の初夏の風物詩のような、ここだけしか見られない景色だなと思うのと、いよいよだなと言う気持ちにもなりました。
桃の収穫のことを思うと、緊張もするけれど、今できることを精一杯していきたいです。
質の良い桃を収穫するために、繊細な気持ちと共に厳しい気持ちとスピード感を持って、より高いレベルの作業を目差して、桃メンバー一同気持ちを一つに桃に向かっていっています。
毎日同じメンバーで袋がけを進めていって、桃メンバーのチームワークも深まっていっているのを感じます。
硬核期は大事な時期です。ブルーシートも用意し、ブルーシート敷き用のパイプもさくらちゃんたちが加工して用意してくれています。
良い収穫に結びつけられるよう、美しい桃が収穫出来るよう、力を合わせて精一杯頑張ります。