吉畑ハウスには、植えて! 植えて! と芽をぐんぐんと伸ばして畑に植わる日を待っている、サツマイモがいます。せいこちゃんやまりのちゃんに、お水もたっぷりともらって、寒さ対策に毛布をかけてもらって、草も取ってもらって、強い日光をさえぎるためにハウスに黒マルチをかけてもらって、愛情一杯こめられたサツマイモは、いじけることなく元気にぐんぐんと成長し、立派な芽を出していました。と、いうことで、遂にサツマイモの芽が畑に旅立つ日がきました。
サツマイモの引っ越しは、二日間に分けて行われました。一日目は、ベッド作り。川向う畑に畝を立てて、かまぼこ型の畝にし、黒マルチをはります。いつもの畝立てならば、幅を測ってラインを米ぬかで引くのですが。今回は幅を測って、ラインは鍬の柄で線を引いていきました。畝間が二十センチと、鍬の刃一個分だけ土を上げるので、米ぬかでわざわざ引く必要がないと判断されたのだと思います。
けれど、いつものように米ぬかラインがないと、私は、とても、とても難しく感じました。まちちゃんや、よしみちゃんたちがラインを引いてくれて、私たちが追いかけるように土を上げていったのですが、ももかテンテコマイ!
左利きで、みんなと進む方向、向く向きが逆なこともあり、前の子の上げた後が、後ろを見なければ分からない。みんなは前の子に合わせて真っすぐ土を上げて行くのですが、私はそれが困難でした。みんなに合わせようと、右手で上げてみると全然力が思うように入らなくて、真っすぐにも上がりません。左で行ったものの、やっぱり思い切り斜めになってしまいました。みんなは比較的真っすぐに土は上げていたものの、米ぬかのときのように完全に真っすぐに上げるというのは、難しさを感じていました。真っすぐにしようとそればかり意識しすぎてはスピードも落ちてしまいます。困った困った……。
ここで作戦変更。今までのようにラインを米ぬかではないのですが、もみ殻で引いて行くことに。有難い!
ラインがはっきりと書かれるだけで、畝の立てやすさが数倍にも上がった気がしました。しかし、ラインは引くものの、いつもより一工夫されています。それは、畝幅六十センチと畝間二十センチを足した八十センチ間隔でラインを引いていき、ラインの内側から、鍬の刃一つ分の幅で土を上げていく、という方法で行いました。なので、ラインを引く本数が半分になるのです。これは、スムーズ。ラインを引くのも速くて、土を上げるみんなも真っすぐスピード感を持ってすることができました。
私は手間を省こうとしすぎると、結局もう一度やり直しということになりかねなくて、一工程しっかりとするかしないかの違いは大きいのだなと感じて、普段の生活でも、めんどくさい、少しでも時短、と思って省いてしまうのではなく、その工程をいかに楽しく効率よくするか、一工夫を加えて、よりよくすることが大切だと思いました。
ラインがどんどん引かれていくところで、再び、私たちも行くぞー!
全員が一畝に入って一列で土を上げて行きました。
■かまぼこ畝づくり
私の前にはりゅうさんが、後ろにはひろこちゃんがいました、そして始まりました。関西弁チャレンジ。最近、各地の方言を知ることにプチハマりしている私、りゅうさんたちに教えてもらって、関西弁で話してみました。「次の畝入ります!」を「次の畝入るでっ!」と言うところから、ちょっとした会話を関西弁で言ってみることに。標準語から関西弁に少し変わるだけで、テンションアップ?
より活気が出てきたように感じました。りゅうさんがペラペラと関西弁で話して、片言関西弁で返す。というやり取りがとても面白くて、それを聞いているみんなも笑いをこらえ切れないかのように、声には出さないけれど笑っていました。これこそ、りゅうさんの力。その場の空気を本当に一気に明るく、より元気にすることができる。ただ話しているだけでなくて、相手を力つけるような言葉をかけてくれたり、作業の質が落ちていないか見て、畝立ての際のポイントをさりげなく教えてくれました。「次いくでー」ということが楽しくて、次の畝に行けることが楽しみになり、身体が自然とペースアップして行きました。
最初は広くて大変だと思っていたけれども、本当に進むのがあっという間に感じて、けれどまったく疲れを感じなくて、笑いが絶えない畝立てが楽しくて仕方がありませんでした。ライン引きを終えたみんなも合流してくれて、最後に行くにつれ、短くなって行く畝。本当にあっという間に、畝立てを終えることができました。
続いては、形作り。かまぼこ型に畝をならしていきました。とっても重要ポイント!
きれいなかまぼこ型にすることによって、この後の工程である黒マルチをかけたときに、ピンと、そしてピッタリと張りやすくなります。一畝に一人ずつ入って、進めていったのですが、人数がいるのでどんどん進む。普段のならしに比べては時間はかかりますが、それでも時間を意識して進めることができました。かまぼこになるだけで、見栄えがグンと上がります!
きれいで、どこか可愛い。丸みを帯びた畝がずらっと並んでいきました。ジャガイモもサツマイモも、太いかまぼこ型にすることで、芋を、よりたっぷりとつけることができるそうです。
そして、ベッド作り最後の工程に入ります。かまぼこ型にした畝の上に黒マルチをかけて行きました。まえちゃんから、「風が吹いたときにはためかないように!」という伝言を受けていたから、その通りにしたい。チームプレーで黒マルチをかけていくのです。
■引っ越しの日
マルチを広げる人、端を止める人、二メートルおきにとんぼを仮止めする人、風で動かないいようにその間にしっかりと止めていく人に分かれて行くことに。そうすることによって、どこかでしわが寄ってしまうことも、足りないということもなく、誰も手が余ることなくスムーズにすることができました。しかし、時間がちょっと怪しい……というところに。桃チームのみんながヘルプに来てくれました。お仕事組さんもたくさんいてくれて、畑の上がにぎわって見えました。一気に人が増えても誰も混乱してしまわないように、まちちゃんや、さきちゃんが的確な指示をその人その人にしてくれたので、最後の追い上げがすさまじいほど……風でなびいている部分がないか最終チェックまでして、みんなで終えることができ、達成感をとても感じることができて、凄く嬉しかったです。サツマイモの引っ越し準備OK!
翌日、いよいよサツマイモの苗が引っ越しの日を迎えました。朝食前の時間でやよいちゃんたちが苗をカットして、必要な道具を全て運んでおいてくれたので、私たちはすぐに作業に取り掛かることが出来ました。
初めに、やよいちゃんが今回の目標時間と一通りの流れも教えてくれました。草木灰の追肥→苗置き→植え付け→水やり→草敷き、という順で行っていきました。一工程ごとに、やよいちゃんがお手本を見せてくれたので、初めての私でもとても分かりやすくて、分からないこと0で作業をすることができました。草木灰は、片手二杯分を穴の両脇にたっぷりと与えます。
サツマイモは他の野菜とは違い、マルチシートの上に蔓が長く伸び葉が茂るので、それからは、追肥ができなくなってしまいます。だから、できる今の内にたっぷりと肥料を与えて上げることが大切。と教えてくれました。
■篠竹で、するすると
草木灰はサラサラで、手に掴んでも指の隙間から流れやすく、初めは高確率でマルチの穴の中に到着するまでの間にこぼしてしまう、ということがありました。けれど、りなちゃんたちの姿を見たり、肥料袋の口の位置をマルチにつけて手の移動時間を少なくしてみたりと、どうしたらそこまでこぼさずにできるか、考えながら実行していくうちに、段々とコツを掴んでいき、あまりこぼさずスムーズに進めることができました。どんどん上達していっているということを感じられて、嬉しい気持ちになりました。
私たちが草木灰を追肥している間に、みつきちゃんが苗を置いていってくれました。バケツ一杯のサツマイモの苗を手に歩くみつきちゃんの姿がとてもかわいらしくて、「サツマイモ売りの少女」のようでした。苗がとても立派で大きくて……。
追肥を終えた私たちは、いよいよ植え付けに入ります。野菜の定植とは違い、苗の先は蔓で細いため篠竹を使います。篠竹でまず、マルチ穴の中心に穴を空けて、抜くと同時に苗の先を穴に入れます。この工程が私はとっても楽しくて大好きになりました。なぜなら、竹を刺したときにズボッ!
と土の中に入っていく快感……抜くと同時に苗の先を穴の中に入れたときに、スッ!
と吸い込まれるように入っていく快感……気持ちよくてたまりませんでした。
今回は苗を十二センチでカットしてくれていたため、長くも短くもなく本当にちょうどよい長さで、苦戦することなくテンポよく進んで行きました。あまりにもスムーズで、広い畑であっても、「もう終わったの?」と信じられないくらい早く終えることができました。多分、サツマイモの定植の工程の中で一番早かったと思います。
続いては、水やり。ジョーロ一杯で六株ずつ、たっぷりと水をやりました。ジャガイモ同様、お水大好きサツマイモ。大きくなってね!
と思いを込めてトポトポと湿ったことが遠目からも分かるくらいに与えることができました。水やりの時に、マルチにかかった草木灰も洗浄されていて、作業しながら掃除もしている気分で気持ちよくて、スッキリとした気分になりました。
そしていよいよ、最後の工程に入ります。サツマイモの芽がマルチに当たり、マルチ焼けしてしまわないよう、枯草を敷きました。さらに、穴から土が見えている部分に太陽が当たり雑草が生えてしまうのを防ぐために、穴を隠すほどもっさりと敷きました。 事前にあぜの草を刈って集めてくれていて、他の畑からの枯草も集めてきてくれていて、草は十分にあるので、なくなる心配はありません。サツマイモ一株一株に、め一杯使うことができます。 やよいちゃんとの定植作業で恒例、『草敷き選手権』開催!
一人一畝に入って、誰が一番初めに一畝を終えることができるか、真剣勝負。勝負となれば本気のみんな、目と体の動きが一気に変わります。私も負けたかない!
本気スイッチON。「スタートっ」という合図とともに、一斉に草を敷き始めました。お父さんに以前教えて頂いた、ワンアクションを意識して、一回で草掴んで一株に敷く→一回掴んで一株。とぐんぐん進んで行きました。
■一番好きな
やよいちゃんがタイムコールや実況をしてくれて、周りはなかなか見られなくてもどうなっているか把握することができたのですが、まさかの私が一位になっている、という言葉に一瞬、聞き間違いなのではないかと耳を疑ってしまいました。私は草敷きが苦手で、草敷きの時になると毎回みんなの姿が遠くに見えてしまいます。一位であったとしても、すぐ後ろにはまりのちゃんが追いかけて来ていて、二、三株といった僅差……最後までどうなるかはわかりません。最後までスピードを落とさずに、手の動きを止めることなく次へ次へと進んでいきました。
そして、ラスト一株を終え、「終わったー!」まりのちゃんとの接戦の結果、一位になることが出来ました。ワンアクションの力??畑を見渡すと、もう既に三分の二程草敷きが終わっていました。残る畝もスピード感をもって、みんなで終わらせていきました。
そして、午後十二時を少しまわったとき、サツマイモの定植一回目を終えることが出来ました。今回植えた数は、千株!
短時間で小人数、これだけの数を植えたということが信じられないくらい、楽しくて、スピード感をもって行うことができてとても嬉しかったです。
サツマイモは、一回枯れて、その後にまた元気になる。という不思議ちゃん。十日後にまた見に行ってみたいな、と思います。そして、芋がついてお盆あたりには収穫ができるそう。とてもとても楽しみです!
定植の中で私は、一番サツマイモの定植が好き……。