「軽トラとオートモア!」 のん

5月20日

○軽トラとオートモア!
 午後に3種類の自走式草刈り機の説明をお父さんがしてくださいました。メモを取りながら聞きつつ、最初は、壊したら嫌だし、使うの怖いな、と思っていました。ふと、これがなのはなのものとかでなく、自分のものだったらどうだろうか、と思いました。そうだったら、新しいおもちゃみたいで、使うのはものすごくわくわくする、と思いました。
 そのわくわく感を想像したとき、自分だけのものじゃなくても、同じ気持ちで使ったら良いんじゃないのか、と思いました。そう思って説明を聞き終わって、作業発表になって、桃畑の草刈りで呼ばれました。そのあとあんなちゃんが、オートモアで刈って欲しい、と伝えてくれました。目が点になりました。

 しかも、一緒に作業するのは、まみちゃんとひろこちゃん。オートマ車は運転しているけれど、軽トラドライバーではありません。だれがこのオートモアのレッドを運ぶというのでしょうか。

 1年生に飛び込んでいって、あゆちゃんに、
「桃畑の草刈りで軽トラドライバーがいないんですが、私、運転して良いですか!?」
 と勢いで聞くと、あゆちゃんが、
「おじいちゃんのだから大切に乗ってね!!」
 と、9568の鍵を渡してくれました。

 あゆちゃんの言葉で腹をくくりました。そこまで覚悟を決めたらこっちのもので、ひろこちゃんにバックを見てもらい、軽トラに乗り込みました。教習所で呪文のように唱えて覚えた発進の手順を再現し、軽トラは動きました。玄関下に駐め、オートモアのレッドのエンジンをかけ、軽トラに載せ、あゆちゃんにロープで固定するときの結び方を教えてもらいました。

 今まで何度か軽トラドライバーの人が結ぶのを見たことはあっても、速すぎて何が起こっているのかよくわかっていなかったけれど、レッドを何としても無事に運んで帰ってこなければ、と思うと、3回くらいあゆちゃんに、もう1回お願いします! と言ってやってもらって、自分でもやらせてもらって、覚えられました。奇跡です。

 そして、まみちゃん助手で山桃畑に向かいました。発進と駐車がやっぱり苦手だけれど、道を走るのは心配していたよりいけそうだ、と思いました。着いて、レッドを下ろし、実際に使ってみました。畝に沿って真っ直ぐにかけてみると、草刈り機で刈りながら歩くより速いペースで、ゆっくり歩くくらいの速さでどんどん進んでいきました。

 重いのかと思っていたけれど、ギアを前進、後進に入れたら押したりしなくても勝手に進んでくれる感じで、向きを変えるときだけ力を入れたら、真っ直ぐに行くだけなら片手でギアを持って片手でハンドルを持っても平気なくらいでした。

 そして刈り跡が綺麗。草刈り機で刈ると、地際で刈り過ぎて地面が露出してしまうことがあります。桃の木にとっては乾燥を招いて良くないのですが、自走式草刈機は、刈る丈が一定になっているので、その心配がないです。あと、やっぱり疲れが違いました。

 それから、枝にぶつからないところまでなら、思ったより木の近くギリギリまで刈れるなと思いました。枝が高いところから出ていたら、幹から数十センチくらいまで寄って刈れました。

 ちょっと難しかったのは、木と木の間です。真っ直ぐかけていくと、木のしたのかけられない幅だけ、木と木の間の6~8メートルくらい残ってしまって、ここをどうやってかけたら速いか、ということでした。私は今回は車の幅寄せみたいにして、その6メートルくらいの木と木の間を、前進とバックを繰り返して刈る、という風にしたのですが、もっと良いやり方がある気がしました。

 そんな感じで、午後で少し5時を過ぎてしまいましたが、3人で山桃畑を刈り終えることができました。でも帰りも、油断はできません。草刈り機を下ろして軽トラを駐めるまでが勝負です。

 帰りに軽トラを走らせながら、まみちゃんにも話したのですが、自分が車を運転する日が来ると思わなかったです。運転できる日が来ると思わなかった、と言うほうが正確でしょうか。できる気がしない、と思った高校生の自分からしたら、奇跡みたいなものです。自分が軽トラを動かしている、という感覚に、しみじみと感動しました。

 まみちゃんのお陰で無事グラウンドに駐車することができました。どきどきの連続の、でも新鮮ですごく面白い午後が終わりました。夜の集合の話を借りるなら、ゆでたまごの連続でした。せいこちゃんに話したら、タラモサラダ作れるね、と言われました。午後だけで成長した気分になった1日でした。初めて免許を取って自分で運転したこの日を、きっと一生忘れないだろうと思います。