「桃の本摘果」 りな

5月16日

 今日で、桃の本摘果を終わらせることが出来て、作業終わりにあんなちゃんが、
「硬核期までに余裕を持って終わらせることが出来て、すごく嬉しかったです」
 と笑顔で話してくれて、それが凄く私も嬉しかったです。

 ちょうど1週間と少し、集中的に、あんなちゃんや桃メンバーのみんなと一緒に、摘果を進めてきました。毎日毎日、みんなと朝7時20分に集まって、ボクシーに乗り込みます。雨の日も、カッパを着て、座席に新聞紙を敷いて、桃畑に向かいました。朝食後も、昼食後も、夕方まで、みんなと桃畑にいました。大変なことも、嬉しいことも、楽しいことも、全部メンバーのみんながそばにいて、それがすごく心強かったし、安心できる仲間で、メンバーのみんなが大好きになりました。

 摘果は、ものすごく集中力がいりました。本摘果で、この後は硬核期に入って落とすことが出来ないので、これで、最終的に実を絞る最後のタイミングです。去年は、本摘果が甘くて、硬核期後、もうテニスボールにも大きくなった桃の実を、修正摘果でたくさん落とすことになりました。本摘果が甘かったら、もうその大きさまで、桃を触ることが出来ません。今、残す実は、木が最大限付けられる量よりも、多くても、少なくてもいけません。一つひとつという単位で、ちょうど木に付けられる、ジャストの実を残します。欠けていい実を作らない、付けられる実を落とさない、本当に、曖昧さがあったら出来ない作業でした。

 あんなちゃんが、その都度、気付いたことをみんなに伝えてくれました。それが、すごくありがたかったし、落としすぎなのか、それとも残しすぎなのか、教えてくれました。
 品種によって、元々の実の形が違っていたり、変形果が多い品種、というのもありました。品種によって、気を付けるところが違いました。例えば、白鳳、紅清水、なつごころは、変形果が多くて、その変形の形も品種ごとに微妙に違っていました。また、清水白桃は、生理落下があったり、繊細な品種なので、早生品種の本摘果を終えたら、他の品種よりも真っ先に摘果を終わらせて、残す実も、落果することを見越して最終着果数の1.2倍に残しました。

 白麗は、生理落果が多い品種だとあんなちゃんが教えてくれて、2倍の数を残しました。なつおとめは、枝がよくしなることや、安定して実が付くこともあり、他の品種よりも、5パーセントぐらい多めに実を付けました。池上桃畑の岡山夢白桃は、大玉になりすぎてしまうので、1.1倍の実を残しました。
 また、木によって、勢いがある木とそうでない木があって、それは、葉っぱの茂り具合でよく分かりました。桃一つを養うのに、葉100枚分の養分が必要だという目安があって、あまり葉が茂っていない、勢いの弱い木には、相応の実の数を付けるように気を付けました。

 品種によって、木によって実をどのぐらい残すか、その基準は変わりました。また、1本の木の中でも、枝によって、育てたい枝にはあまり実を付けなかったり、背中側に生えている、弱らせたい枝には気持ち多く実を付けたりなど、樹勢を調整する判断基準がありました。また、日当りの良い場所、悪い場所でも、実が付けられる間隔に少し差をつけました。また、葉が少ない枝には、実もあまり付けませんでした。

 間隔も大切だけれど、一番は、枝の良い位置に、良い実を残すように気をつけました。もう、桃の実は3センチほどに大きくなっていて、下から桃の実を見ると、収穫期の面影が見えていて、これからどう大きくなっていくかがイメージできるぐらいまで大きくなっていました。そのため、出来るだけ形のよくて、大きい実を残します。落としたらもう取り返しがつかないし、残すと決めた実は、収穫まで繋がるので、とても緊張しました。

 綺麗な実を残す時に落とし穴があって、真ん丸で、ひと際大きな実が時々あります。すごく良い実に思えるけれど、それは双胚果の可能性が高いとあんなちゃんが教えてくれました。

 一回り大きな実は少し危なくて、でも綺麗な実を残す、とても難しいけれど、双胚果の見分けが一つありました。桃の実には、縫合線があって、普通の実は、縫合線で、4:6の大きさに分かれているけれど、双胚果は、5:5に分かれているようです。

 双胚果かもしれない、と思って摘果した実をハサミで割ってみると、本当に胚が2つ入っていました。大きくなったら、種われになってしまうので、落として良かったなあとほっとしたのと同時に、知らず知らず、双胚果を残していないだろうか、とすこし心配になりました。

 白皇や、おかやま夢白桃は、実が日焼けしやすい品種で、日当りの良い場所に付いている実は、表面が真っ赤に日焼けして、ほっぺのようになっていました。日焼けは収穫期まで残ってしまうので、出来るだけ日焼けしていない実を残しました。ほんの数センチ違うだけなのに、こんなにも日焼け加減が違うのか、ととても驚きました。どこが日当りが良いか、日当りが悪いか、というのはあまり見えにくくて分からないけれど、実を見ると、色を塗ったように、一目で分かって、こんなにも場所によって、日当りに違いがあるんだなあと、改めて思いました。

 今日は、山桃畑の本摘果を進めました。山桃畑には、これまで育てていなかった勘助白桃と、白露、という新しい品種もあって、どの木なのか、摘果をしながら知ることが出来てとても嬉しかったです。勘助白桃は、老木で2本、白露は、小さい木で2本ありました。白露はまだ木が小さくて実も小さかったです。収穫できる量もそれほど多くないのかなと思うのですが、どんな実が収穫できるのか、楽しみだなあと思いました。

 あんなちゃんが、3日前から、作業の前に、みんなでしこを踏もう、と言ってくれて、実践しています。桃畑で、みんなで「よいしょ!」といって、しこを踏むのが、とても面白いし、ただみんなと円になって、思いっきり足を大きく上げて、しこを踏んでいるだけなのに、足を地面に思いっきり着くと、その反動がびりびりして、それだけでパワーがみなぎってくるように思いました。「よし、やるぞ!」と自然にそう思えて、それは私だけではなく、一緒に作業するみんなもおなじ気持ちで、みんなと気持ちが一つになったような瞬間をいつも、作業始めに感じられることが、すごく嬉しいなあと思いました。

 集中して、あまり言葉はしゃべらないし、ただ桃の木に取り掛かって、脚立に乗ってひたすら夢中になって、桃の実をもいでいるだけなのに、汗をたくさんかきました。休憩の時に、みんなと飲むキンキンに冷えたお茶が、すごくおいしく感じました。

 明日の朝も、いつものように、みんなと摘果に行くように思えるけれど、明日からはないのかと思うと、寂しい気持ちも少しあります。でも、次は、防除をして袋掛けがスタートするかなあと思います。収穫まで、ノンストップの桃作業を、あんなちゃんやみんなと一緒に頑張りたいです。

 読んでくださりありがとうございました。おやすみなさい。